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期末考査終了後にしおりをはさみました!
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期末考査終了後
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期末考査の四日間は終了し、情けないことに俺は机にぐったりとうつ伏せになっていた。
あー、やっと終わった。というか、とうとう終わってしまった。
期末考査が始まってから、篠村とは会話するどころか顔も合わせていない。
HRも他の先生に代わってもらったし・・・。
放課後の方も篠村と会うことは叶わなかった。何故かというと、世界史は初日からあったため、俺は四日間ずっと採点に追われていたからである。
そして今日期末考査が終わり、俺は今、一年一組の教室の前に立ち止まっていた。
あいつ、今どうしてるんだ?
あいつはすぐに顔に出るからな・・・。
悪かったらそれはそれは、すごくがっかりとした表情をしているだろう。
つまり、教室に入った途端にテストがどんなだったかすぐにわかるのだ。
そして、俺がずっとそのまま立っていると後ろから声をかけられた。
「先生?教室、入らないんですか?」
「へっ?」
聞き慣れた声だと思い、振り返ると佐藤が立っていた。
び、びっくりした・・・。
別に悪いことはしてないけど。
「あ、ああ、今入るよ」
「・・・賢なら死んでますよ、ぐったりと」
「え?」
佐藤は俺の心を見透かしたように、俺の知りたいことをピンポイントに教えた。
「そう、か・・・。今回のテストは難しかったみたいだな」
篠村にとっては今回も、か。
あいつ、結構頑張ってたんだけどな。
はあ・・・仕方ない、励ましてやるか。
そして俺は教室に入っ・・・たが、篠村は本当に死んだようにぐったりとしている。
これは・・・相当なダメージくらってるな・・・。
励ますだけ無駄かもしれない。
それどころか逆に傷を抉ってしまうのではないだろうか。
「あー!先生いままで何処行ってたんですか!旅行ですか!」
「こんな時期に旅行なんかするか!」
教室が騒がしくなった。
テストが終わり、みんな安心して気が抜けたのだろうか。
だが、みんなとは反対に篠村のみぐったりとしている。
今回のテストで、クラスの中には手応えを感じた者もいれば、欠点をとってしまっただろうと嘆いている者もいる。
でもみんなはまず、テストが終わったことに安堵しているのだ。
だから篠村も、みんなみたいに笑えばいいのに。
笑って、そしてまた今度頑張ろうって。
そうやって笑っていればいいのに。
そんなにも悔しかったのだろうか。
・・・・・・・・
ーーー放課後
俺は職員室で自分の仕事を終わらして、念のためと思い教室に向かった。
しかし・・・いや案の定、篠村はまだうつ伏せになったままである。
まさかそんなにもダメージをくらっているとは・・・。
「・・・篠村?」
「・・・・・・」
返事がない。
俺は篠村を呼び続けた。
「おい、篠村。篠村」
「・・・・・・・・」
・・・?
なんかおかしい・・・。
俺は篠村を軽く揺すった。
反応はない。
・・・・・・まさか。
俺はうつ伏せになっている篠村の鼻を手探りで探して見つけだし、それを摘まんだ。
それでも篠村に反応はない。
これは・・・やっぱり・・・。
それでも俺は篠村の鼻を摘まんだ状態を続けた。
・・・すると、
「・・・・・・・ぶっっ!」
と篠村は吹き出し、唾がどっ、と飛んだ。
「うお、汚ね!」
あ、つい本音が。
「・・・・・・・・・」
そして篠村は、むくっと酷い顔をして起き上がった。
・・・やっぱり寝とったんかい!
佐藤が言ってた「死んでる」っていうのは「死んだように寝てる」ということだったのか!
そして篠村は不機嫌そうにこちらを睨んだ。
彼の口からは、とてもただ寝ただけで出るような量ではないだろう、というくらいのよだれが流れている。
原因は・・・俺だな、間違いなく。
俺は偶然にも懐にあったティッシュを篠村に差し出した。
「あの、ティッシュどうぞ・・・」
「・・・・・・どうも」
篠村はティッシュを受け取り、よだれで濡れた口元を拭った。
しかし、篠村は睨むことを止めない。
なんだろう、このデジャヴ・・・。
この悪い空気から逃れるため、俺は篠村に質問した。
「寝不足か?」
「まあ、ちょっと・・・」
ちょっと、っていうレベルじゃないだろ。
「・・・理由は?」
「・・・勉強、してたから・・・」
「・・・・・・・・・」
俺の沈黙を疑っていると判断したのか、篠村は少し拗ねた様子だった。
「別に、嘘ついてねぇもん・・・」
「は?わかってるよ、そんなこと」
「・・・ホントに?」
篠村の声がいつもより低い。
あと少し鼻声だった。
「ああ。お前、一ヶ月間頑張ってただろ?だからわかるよ、嘘ついてないことぐらい」
「・・・・・・・・・」
篠村は何故か黙り込んでしまった。
俺、今何か言ったっけ?
そして俺はもう一つ、というより一番聞きたかったことを篠村に聞いた。
「で、テストどうだった?」
「・・・・・・・・・」
・・・・やっぱり触れない方が良かっただろうか。
「それが、さ・・・」
「?」
「異常に、良かった。にやけるくらい」
「・・・なんで片言なんだお前は」
篠村は少し黙った後、すごく嬉しそうに笑った。
さっきまでの不機嫌が嘘のようだ。
「なぁ小林。俺、天才じゃね?」
「調子に乗んな。つかまだ結果返ってきてないだろ」
「いやいや、絶対良いって!カンニング扱いされたらどうしよっかなー」
「はは、そん時は俺がどうにかしてやるよ」
そして篠村はこちらを向いてまた笑う。
「小林はすげえなあ・・・」
「ん?何が」
「小林が予測して出した問題、ほとんどテストに出てた。本当に天才なのはあんただな」
「・・・・・・・・・」
なんだろう、篠村にしては褒め過ぎのような気がする。
「お前・・・疲れてんだろ」
「へえ?なんで」
「・・・・・・・・・」
やっぱり、なんかおかしい。
らしくない、というか・・・。
「お前、さっきからなんでずっと笑ってんの?」
「はは。いやぁ、なんか目蓋が重くってさあ・・・」
「・・・・・・お前もう帰れ。そして寝ろ」
「はぁい」
これは・・・かなり重症だな。
まるで酔っ払いのようだ。
歩いて帰らしたら途中で倒れるんじゃないだろうか?
・・・・・・仕方ないな。
「・・・篠村、早く帰る準備しろ。送ってやる」
「へっ?いや、いい。俺歩いて帰るし」
「そんな状態だったら危ねえだろうが。いいからとっとと準備しろ」
「・・・・・・・・・」
そして篠村を車に乗せたが、篠村は本当に疲れ切っていたようだ。
座ってすぐにぐっすりと寝てしまった。
その寝顔がとても微笑ましく、つい魅入ってしまいその後、俺はあることに気づいた。
こいつの家知らねえ・・・!!
・・・ということに。
だが、ぐっすりと寝ている篠村を起こす勇気は俺にはなかった。
焦った俺は、ファイルから一年一組の電話番号の一覧表を取り出し、おそらく篠村の家を知っているだろうと思われる佐藤に電話した。
そして俺は、佐藤に呆られながらも篠村の家に向かい、なんとか到着。
篠村の家が近かったのは不幸中の幸いだったと言えよう。
しかし、一難去ってまた一難。
俺は篠村を起こすのにかなりの時間を要したのであった。
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