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重圧と愛にしおりをはさみました!
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重圧と愛
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Side.志貴-2
ここに来てから、カレンダー上では2つの月を越していた。
その間に自分を取り巻く環境も、
例えば外を1人で歩いた時に俺がどんな目に合うのかも、
小さな音で情報を発信しているTVを見れば大体予想がつく。
生き辛い世界の中、
生きる術を見つけるには、
αが2人きりで居続けてはいけない。
それはこの病院という檻の中で守られている俺でもわかる事だ。
そして、じゅんが1人で沢山悩んで導き出したであろう答えも
受け入れてあげなくてはいけなかった。
“いけなかった”はずなのにーー。
……あ、れ?
痛くない…。
心は痛み苦しむどころか
むしろ、軽くなったような気がした。
…ああ、そうか。
「…じゅん、さっき一緒に誰かいたよね。」
「…あ、」
「呼んで、貰えるかな。」
やっと、強く在らなくて良い世界に変わってくれたのか。
「………わかった。」
扉の向こうに消えていくじゅんの背中を見て、
”恋人”としてみるじゅんの姿は多分、
これが最後なんだと悟る。
じゅんが俺を幼馴染として見ていた頃から、
俺はずっとずっとじゅんをそう見ていなかった。
じゅんは孤独を嫌う。
じゅんだって十分優れているのに、
それ以上に優れている人間しか認めない。
だから俺は、自ら孤独の道を選び、
俺がほかの誰かの元へは行かないと信じてもらうことで、じゅんが追ってくれるよう仕向けた。
その分誰よりも強くなくてはいけなかった。
誰よりも賢くなくてはいけなかった。
誰にも頼ってはいけなかった。
自分で決めた道筋だというのに、
いつしかそれが重荷となり、
じゅんが自分よりも先を行くことを極端に恐れるようになった。
成長していくじゅんを見るたびに自分の欠陥を必死に隠して、
じゅんの理想として生きてきた。
それがこうも簡単に崩れるなんて。
こうも簡単に、壊してもらえるだなんて。
じゅんの背に隠れて入ってきたΩは、
俺よりもずっと華奢で小柄だ。
柔らかそうな髪の毛が擦れる頬には
恐らく生涯消える事はないであろう傷が見える。
ああ、君はあの時――…
じゅんばかり見ていたのに俺に声をかけてきた、賢い子だね。
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