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初めて愛に触れる時にしおりをはさみました!
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初めて愛に触れる時
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Side.夏咲-2
じゅんさん……いや、正式には志貴さんに呼ばれて、
僕は病室に入った。
いつの間にか染み付いてしまったくせで、
志貴さんの顔色をうかがう。
けれど志貴さんの瞳は、見慣れた嫌悪感や憎悪に塗れたそれではなく、
優しくて……少し、弱そうに見えた。
「志貴。この子だよ……夏咲。覚えてるか?」
「……勿論。俺が初めて、敵わないと思った相手だよ。」
「…え。」
志貴さんの言っていることはよくわからなかった。
それはじゅんさんも同じなようで、
鳩が豆鉄砲でも食らったかのような間抜けな顔。
「…夏咲くん、ありがとね。」
「……なんで、責めるんじゃなくて…?
僕はあなたにこんな……こんな、取り返しのつかない事を…っ。」
「ふふ、そうだね。確かにもう少しやり方はあったのかもしれない。
……だけど、君がここまでしてくれたおかげで俺は救われた。」
やっぱり僕には難しくて
志貴さんの言っていることの意味はわからなかったけれど、
その表情はとても嘘を言っているようには見えなくて。
どこまでも温かくて、
これまでに経験したことのない優しさに包み込まれたようで。
「じゅん、俺たち幼馴染に戻ろう。」
「っ、………そうだな。志貴。」
この部屋の空気はすごく心地が良い。
それでいてなんだか恥ずかしくて、
二人のこれまでに築き上げてきた見えない何かを、確かにこの胸で感じる事が出来た。
これが多分、”愛”というものなんだろう。
色も形もわからない、目で確認する事も出来ないけれど。
この温かさこそ、それなんだろう。
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