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7*予感にしおりをはさみました!
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7*予感
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それから一週間、二週間と経っても、
相変わらず減らないどころか増加し続ける感染者。
テレビをつければ必ずと言っていいほど耳に入ってくるパンデミック関連のニュース。
俺は職業上気にはなるけど、
いってもαなんてこの世の中のほんの1割程度。
残りの大勢は気にも留めないだろうに、
よくもまあ飽きもせずにそんなニュースばかりをやっているもんだ。
大方テレビ会社の役職持ちがαなんだろうな。
能力も権力も何もかも、
βやΩじゃかなわないもん。
仕方のないことだ。
それよりも────。
「お疲れ様っすアリスさん。
さっきのお客さんαですよね？何もされませんでしたか？」
「え～？ナニされて、ナニしたか聞きたいの～？」
「なっ、何もなかったようでなによりっす！」
「え～～聞いてよ～！」
健太君の顔を見てないんだ。
もうずっと。
この子から体調を崩したって聞いたあの日から、ほんの一度も。
こんな事、今まででは考えられなかった。
俺も健太君も出勤率は高い方で、
そもそもこの店自体黒服の数がそこまで多いわけじゃないから、
こうして何度か仕事をこなしていれば
絶対に健太君と当たるはずなんだ。
それなのにこうも会えないって事は――。
「ねえ、健太君何かあった？まだ体調悪いの？」
「………あーそれなんですけどね…。
ちょっと訳あってココ辞めちゃったんですよ～山田！
あはは、突然でしたよね～。」
最近よく話すようになったこの子は、
どうやら健太君とは学生からの付き合いで、プライベートでも親しいらしい。
俺だってΩだと思って見くびられちゃ困る。
こうやって色々聞き出しているうちに、
ポロっと何かこぼさないかと思ったけれど…
それがなくても、
こうやってドストレートに聞いたら表情がわかりやすく固まる程に
この子は嘘が下手だって事くらいは学んだ。
そんな顔して、
それも唇まで噛んで目元潤ませておいて、
何も知らない…は通用しないからね。
「なんで辞めたの…教えてよ。知ってるんだよね。」
黒服君の顔は、より一層暗くなった。
わかりやすすぎんだろ、ばぁーか。
…ごめん、健太君。
この子のこと、少し利用させてもらう。
「………いうなって。」
「誰が？健太君が？」
黒服は手が震えるほど強くハンドルを握りしめて、
こくんと一度だけ小さく頷いた。
健太君が俺に隠し事とか、
どう考えてもおかしいし。
辞めるなら辞めるで、一言くらいキャストの俺に挨拶したって何も変じゃない。
口止めしてるのがまず意味不明なんだよね。
「今日、君これで上がり？」
「…っすけど……。」
「俺も終わりだからさ。ちょっとそこのファミレス寄ってくれない？」
「？！ダメっすよ店長に怒られちゃーー」
「俺が腹壊してトイレ籠ってたとか言えばいいから。
あとは俺がうまくやっとくし。」
今にも泣きだしそうな黒服君を見て、
ものすごく、どうしようもなく、
嫌な予感がした。
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