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顔合わせ 手前にしおりをはさみました!
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顔合わせ 手前
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駅から徒歩一分。
番プロジェクトの顔合わせ会場、鳳ホテルの前⋯の花壇の前で深呼吸を繰り返す。
家からここに来るまでの間、落ち着かねば⋯落ち着かねば⋯と、もはや強迫観念を含む自己暗示を繰り返したけど全く効いてない。
その証拠に、さっきから手先の震えが止まらない。
俺と同じ白い封筒を手にした人に、背後からどんどん抜かされても動けない。
なんか、皆、キラキラしてる。
オシャレな学生が多いなぁ。
オジサンには眩しいよ。
案内を受け取ってから、指折り数えてこの日を待っていた。
いくら相手が見つかっても、次のステップに進むまでに断られることもあるし、人によってはマッチング相手が複数いて顔合わせの場でふるい落とされる。
案内が届いてから一ヶ月ちょい。
番プロジェクトの大先輩、幼馴染のみなみと『どうしたらこの十年に一度かもしれない相手を逃さないか大作戦』を練ってきた。
⋯まぁ、練った案は、その番相手の鷹司 和平に心底バカにされ、尽く放棄することになったけど。
それを考えているときが、一番楽しかったかもなぁ。
だって、とうとう当日で会場も目と鼻の先なのに、今は楽しくない。
胃がもう無理、吐きそう。
思わず俯いた目線の先には、メチャクチャ高い革靴とジャケットにインナーにスラックス。
中小企業の経理担当では、とても手が出せない本日の戦闘服だ。
今から若作りエステにマナー講座に料理教室なんて行ってどうするんだと、鼻で嘲笑った和平から半月前に完成品を一式よこされた。
和平とみなみの結婚式に出席したときも同じように服一式用意されてしまったんだけど、案内が来てすぐくらいに二人の住むタワマンに呼び出され、お祝いでもしてくれるのかと思っていたら採寸に生地やデザインの確認にと話をどんどん進められてしまった。
「服にのまれず、着こなせる練習をしとけ」と余計な一言はあったんだが、クッ、嫌味なのかエールなのか今でもわからない。
鳳ホテルは政府御用達で知られる最高級ホテル。
素泊まりでも5万円以上とか、わけのわからない値段設定だ。
オシャレな若者らしい格好で挑める学生と違って、俺、社会人だし。
ちゃんとした格好で来なかったら、恥をかいていただろうな。
性格は難ありだけど、みなみも良い相手と出会ったんだ。
俺も良い相手にめぐり逢いたいっ
よしっと気合いを込め、洗練された動きと笑顔のドアマンに通されたホテルの中。
しがないサラリーマンの俺は、一歩入っただけで荘厳な場の雰囲気に頭の先から爪先までどっぷりのまれ、クラクラ立ちくらみを起こしたほどに格の違いがわかるホテルだった。
頭上には天使が飛び交う天井画、そこから下がるきらびやかな巨大シャンデリア。
至るところに飾られた大きな壺には、華やかな生花が飾られている。
グランドピアノの生演奏に寛いでいるお客様は明らかにαの皆様方。
思わず、角の柱の影に逃げてしまった。
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