アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
千里眼の老婆6にしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
千里眼の老婆6
-
「何か心当たりでもおありかい?」
「……いや、なに、もしそれが真実ならば、それはとても尊く運命的なことだなと思っただけだ」
どこか優し気な声で言った王に、老婆は奇妙な顔をした。
「……お前さんが運命だなどと抜かすとは、やれやれ、これは世界の破滅も近いかねぇ」
「縁起でもないことを言わんでくれ。ただでさえ、そんなことは有り得ないとは言い切れなくなってきたところなのだ。とは言え、この地が神の選定を受けて誕生した地であることは事実だ。その地の守護を我々が任されている以上、我々が何かに負けるということはないだろう。すなわち、帝国が我々の手に負えないような脅威の召喚に成功する確率は、限りなく低いと考えられる。それこそ、神が読み違えでもしない限りは有りえないのではないだろうか」
万が一を想定して各国の王を筆頭にリアンジュナイル大陸全体の警戒レベルを上げてはいるが、赤の王を含めた諸王たちは、ドラゴンの召喚が現実的だとは思っていなかった。この地が神にとっての要の地である以上、絶対にこの地が滅ぶことは有り得ないのだ。だからこそ、仮に帝国がドラゴン召喚の手筈を整えたとしても、実際に召喚されることは有り得ない。何故ならば、あんなものは一度召喚されてしまえばもう人の手ではどうにもならないからだ。だからこそ、途中経過がどうあれ最終的に召喚は失敗に終わるだろう。それがリアンジュナイルの民の尽力によるものか、はたまた天災によるものかまでは予測できないが、そうでなければこの地が滅んでしまうのだから、そうなる筈なのである。
赤の王を以てしてもそう断ぜざるを得ないほどに、彼らの認識している神という存在は強大な何かであった。
確かな事実に基づいて発言した王に、しかし老婆は難しい表情を浮かべた。
「……ご老人?」
訝し気な顔をした王に、老婆が一度目を閉じて大きく息を吐く。そして彼女は、眉根を寄せたまま王を見た。
「儂はお前さんを気に入っているが、だからと言って儂が知っている僅かなことの全てを教える訳にはいかない。だから、お前さんに渡せる情報はほんの一握りだ。良いかい?」
念を押すような言葉に、王が頷く。それを確認してから、老婆は再び口を開いた。
「ここ暫くの間、南東に良くないものが住み着いている。あれは人の手には負えないよ」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
8 / 216