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蜃気楼の攻防7にしおりをはさみました!
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蜃気楼の攻防7
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「我が王国の民である貴方に負担を強いるなど、国軍としてあってはならない行為でした。勝利を焦るあまり思慮に欠ける発言をしてしまったこと、深くお詫び申し上げます」
「で、でも、僕の目、使わないと、」
「ご心配には及びません。本体が判らないのならば、本体に辿りつくまで倒し続ければ良いだけなのですから。それに、このまま貴方の目を使ってしまうと、私はギルヴィス王陛下から厳しいお叱りを受けることでしょう。いえ、それ以前に、何よりも民を尊んでおられるあのお優しい陛下に合わせる顔がございません。ここはどうか、私を助けると思って堪えて頂きたい」
そんなことを言われてしまうと、折角振り絞った少年のなけなしの勇気はしおしおと萎れてしまう。判っている。これはカリオスの優しさだ。ただの一般人に過ぎない少年に無理はさせないようにという心遣いなのだ。きっと、少年の右目なしだと本当に厳しい戦況なのだ。だが、判っていても、少年には彼の申し出を撥ねのけてまで眼帯を取る勇気などなかった。
(ああ、本当に、僕は役立たずだ)
少年を抱えたまま剣を振るうカリオスは、宣言通り狙いを貝にのみ定め、確実に一体一体仕留めていく。だが、仕留めるそばから新たな貝が生まれる上に、蜘蛛のような化け物まで後から後から湧いてくる始末で、さすがのカリオスも徐々に息が上がってきているようだった。
いよいよ追い詰められたのではないだろうかという状況に、少年が再びカリオスに向かって口を開く。
「あ、あの、やっぱり、僕が、」
情けなく震えてしまった声に、カリオスはやはり柔く微笑んでみせてくれた。明らかにそんな余裕などない筈なのに、それでも少年の不安を拭おうと振舞ってくれる彼に、少年はどうしようもなくつらいような、悲しいような、得体の知れない罪悪感に襲われる。
(僕のことなんか放っておいてくれて良いのに、僕がエインストラだから見捨てることもできないんだ……)
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