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side寿璃にしおりをはさみました!
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side寿璃
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冷たい風を身体に受けながら、おれは久しぶりに外に出ていた。
排水溝に溜まっていく無残に切られた自分の髪を見ていたら、なんだかすっとして、落ち着いた。
と、同時に怖くなった。
切ってしまった。
切るなと言われていたのに。
父さんに怒られる。
そう思ったら怖くて、外に飛び出していた。
ぼんやりと歩いているおれを、街ゆく人は変な目で見る。
それは、ボロボロの服のせいか、それとも不格好な髪型のせいか。
他にも色々、変なところがあるんだろうな。
「ねぇ」
不意に、声が響いた。
気のせいかと思ったけれど、それはおれに向けてかけられた声だった。
「君、随分パンクな格好してるね」
言われて、立ち止まる。
パンク……というか、おれのこの服は単に暴力の余波を受けて破れているだけなんだけれど。
「髪、自分で切ったの?」
「……ぇ、あ、……はい」
ぐいぐいと近づいてくる男に、気圧され気味に返事をしてしまう。
なんだろう。怖い。
離れたくておれはまた歩き出したけど、男はついてきた。
「俺さ、カットモデル探してるんだけど。店近いし、安いから、来ない?」
「いや、あの、お金、なくて」
ボソボソと答えるが、なおも
「じゃあタダでもいいよ、」
と食いついて来るので、
行きませんとはっきり断ろうとして、おれは彼に向き直った。
「ね、おいでよ」
そう言って、笑う顔が。
おれを動けなくした。
「来て。大丈夫だから」
だって、なんだか、
今にも泣き出しそうに見えたから。
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