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⑥にしおりをはさみました!
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⑥
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いつも祈りを捧げる教会から連なる渡り廊下を進み、暗い色をした壁の別棟へと入る。ひとつの重い扉を抜け地下へと降りる階段の進む。尚もついてくる二人の信者は気になったが、まだまだ新人信者であるトクトは何も言う事はできなかった。
少しひらけた地下室へたどり着くとそこには槍を構えた信者が二人並び、その間にはまた重そうな扉があった。
教主は槍の信者の一人と話をしてから、こちらに戻ってきた。
「今は大事な儀式の真っ最中だそうだ。」
「儀式? 」
シガーの大変な仕事とは儀式の事らしい、教主の側近とも言える彼ならさぞ大がかりな儀式をやっていても不思議ではない。
「世の中には恵まれない人は沢山いるんだ。水や食糧、家族や人間関係、生きる上で必要なものに恵まれない者は多い。」
語り始めた教主の顔をトクトはじっとみつめた。
「そう、ですね。」
「中でも人間の三大欲求である性欲を満たすのは難しい事だとは思わないかね? 食事や睡眠を提供するのは金さえあれば容易いことだ、だが性欲には相手が必要だろう。」
「…まあ」
「シガーはよく頑張ってくれているよ。良かったら彼の働きをその小窓から見てあげてくれ。そっとだよ…」
教主の言うままにトクトは槍の信者の間の扉へと近づいた。その扉についた小窓からなかを覗く。
そこには裸の男たちが数名いた。
腹の出た一人の男が懸命に揺れるように体を動かしている。男は前ある細身の人の腰をしっかりと掴み、その尻に腰を激しく打ち付けている。違う男はその細身の人の髪を掴み顔を上げさせ、その口に性器をねじ込みゆっくりと動かしている。また違う男は細身の人の背に性器を擦り付け、違う男はそれを見て自らの性器をさすっている。
その行為が儀式とはなばかりの乱交であるとすぐに分かり、トクトは絶句していた。
そしてまた沢山の男たちに囲まれ、全ての肉棒を相手にし、弄ばれている細身の体がシガーの物であることもすぐに分かった。
男たちにまるで玩具のように遊ばれるシガーの姿に心が崩壊しそうだった。教主との時だって身が擦りつぶれるほどに苦しかったというのに、その記録をこんな短期間で更新するとは思ってもみなかった。
ただ、その衝撃はすぐに怒りへとも転換されて行く。さも当たり前のようにこの行為を許すこの男は何を考えているのだろう。相手は大切な恋人ではないのか。
トクトは教主の方を向くと怒りを露にし怒鳴り付けた。
「なんでこんな事させるんだよ! お前、シガーの恋人なんだろ? 誰に抱かせても良いなんて狂ってる! 」
怒りの熱をぶつけるも、教主は何故か鼻息で熱を吹き消すように笑った。
「シガーは天使の写し身だ。罪を包み込んで許す大天使の模造品だ。彼により信者の信仰心はより現実味を増し奥行きを作るのだよ。君には理解できまい。」
教主は淡々と説明する。その通りトクトはまったくもってその考えに理解ができなかった。これは権力を使った暴行でしかない。
咄嗟にドアをこじ開け助けに入ろうとするも、門番をしている二人の信者に鋭い槍を向けられる。こんな事があるなんて予想もしていなかった丸腰のトクトは一歩下がることしかできなかった。
「君が彼の代わりをするかな? いいや、無理か。シガーは容姿に恵まれている。あの細い髪と白い肌、美しい瞳は母親によく似ている。」
何故か教主はいつもの優しそうな顔とは違い眉間に皺を寄せていた。そして小さく「あの、憎たらしい母親に…」と呟いた。
「シガーの母親を知ってるのか。」
「ああ…知っているとも。あの女、私がいくら誘っても一度も部屋には来なかった。金も地位も権力もちらつかせてもなびかない頭のおかしい女だ。私に恥をかかせた、だからあの女の子供なんてこのくらいの役を果たさなければいけないんだよ。」
その言葉には明らかな憎しみが込められていた。そして身勝手な恨みの念。それは教団の主としての顔というよりは高いプライドを傷つけられたという個人的な感情。
「シガーの母親は何故死んだんだ。」
「どうしようもない女だった。最期まで私に反抗し抵抗した。ああ、だが身体は良かった。とても子どもを産んだ身体とは思えなかったよ。芸術品に近い、が、それ故に私の思想が理解できない幼稚な脳が残念に思えたよ。」
トクトは全てを察した。
「お前が、シガーの母親を殺したんだな…」
教主は喉を鳴らしてゆっくりと笑った。
「だったら、なんだって言うんだ。お前に何ができる? 」
トクトが教主に掴み掛かろうとした瞬間、門番が二人の間に立ちはだかりトクトに槍を向ける。数歩後退り振り替えると後ろに付いていた大柄な信者が大きな拳をトクトの腹深くに埋め混む。息と唾を強制的に吐き出しながら跳ねとんでからトクトは冷たい床に倒れこんだ。
すぐに近くにいたもう一人の信者が駆け寄ると身動きがとれないように、トクトの両腕を縄で縛る。
「お前一人に何ができる? 小僧。」
朦朧とする意識のなか、叩きつけるように教主の言葉が脳に響いた。その通りだった。俺には戦う力も、人を従える権力も財力もない。大切な人すら守れずにただ横たわることしかできないのだ。潰されて行くひとつのゴミと何が違うというのだろう。
シガーの母を殺し、その身勝手な因縁をシガーにまで及ばせひどい扱いを受けさせる。シガーは恐らくその事実を知らないまま教主に感謝の念を抱きながら働き続けている。そんな可哀想なシガーを前にしながら俺は何一つできなかった。
呼吸が苦しくなり意識が薄れるのを感じた。
ああ、これほどまでに神に救いを求めたくなる日が来るだなんて俺は思ってもみなかった。
END
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