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クウガ ~side~にしおりをはさみました!
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クウガ ~side~
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センを送り出してから何時間が経っただろうか…
楽しめているだろうか…何だかんだアイツ、街を物色した事無さそうだし。
[ま、参ります!]
『おー。』
駆け出して来た兵を躱し、空きだらけの横腹に木刀の柄をぶつける。
[ゔっ……]
『ガラ空きだ、もう少し腕を締めろ。』
[はい…]
『はい、次〜。』
{もう疲れましたよぉ…ヘトヘトです〜…}
『まだ5時間しかやってねぇだろ。』
{いやいや、5時間もですよ〜…}
泣き喚く兵士達を跨ぎながら進み、階段の所へ腰を下ろす。
空を仰ぎ見て、一息吐く。
昨日の寝顔は脳裏に焼き付けたし、暫くは満足だなぁ…とか思ったり。
〖何ニヤニヤしてんだ。〗
『これはこれは、唐国森の部族…ジフ将軍じゃないですかぁー。』
〖………。〗
『如何されましたぁー?こんな所に。』
〖明日部族会議があるからな…〗
『あぁ…ありましたねーそんなの。』
〖お前…相変わらずだな。〗
そう笑うこのオッサ…男は、以前長老に連れられてここに来たばかりの時…
祭りと称し、実力を試すという武力祭で当たったことがある。
あの時から敵視が凄ぇんだよなー…
『…あ、そういえばジフ将ぐ』
〔クウガ様!!〕
『?』
遠くから血相を変えて走ってくるのは…ユリ…
アイツも一緒にいる筈…なのに何故居ない?
嫌な予感がする…っ
『どうした!』
ユリの元へ走って行くと、籠を放り出し俺の胸に飛び込んで来た。
両肩を掴み、落ち着かせようと覗き込む…その顔は涙で濡れていた。
こんなに動揺するなんて…珍しい。
〔クウガ様…私っ…気付くのが遅くてっあのっ…セン様がっ…〕
『セン…?センに何かあったのか!?』
〔痺れ薬が…っ…〕
慌てながらも伝えようとするユリを見つめながら、沸々と己の中で怒りが湧いた。
余分な事をした…
昨日今日で一人にするのは間違っていた…
どう考えても危険だった。
《何事じゃ。》
〔ガウル様……〕
《……ユリ、センは如何した。》
〔っ……それが…〕
《ゆっくり話してくれ。》
〔はい…〕
ユリはポツリポツリと話し始めた。
自分がセンから離れてしまい、その間に武器屋の商人から貰ったオマケを嬉しそうに食していたセン。
そして…
その飴が痺れ薬であり、賊の様な変な格好をした男と乱闘になったセンは、ユリを逃した。
去り際に見たのは、背後から殴られ気を失いグッタリとしたセンを連れ去っていく姿だった…
『…っ…』
〔本当に…すみません…〕
《ユリのせいでは無い、よくここまで無事に帰って来てくれた。》
『最後にアイツを見た場所は何処だ…』
《クウガ…》
『答えろ!ユリ!!』
《落ち着けバカもん!》
長老の拳が頭に直撃した。
『何すんだクソジジイ!!』
《ユリが怖がっているだろう、お前がそんなんでどうする。》
『…っ…』
長老の言葉を聞き、ユリを見ると…完全に怯えていた。
アイツが無事かどうか…それだけしか頭に無かった。
頭を乱雑に掻き毟り、ユリに一言謝罪を述べ部屋から出る。
『クソッ…』
出た瞬間、いろんな傭兵達に囲まれた。
みんな口々にセンの安否の確認をしてくる…
{セン副将軍は大丈夫なんですか!?}
[一体どこへ!?]
『うるせぇ!!』
ハッ、と周りを見渡すと…皆が萎縮し黙り込んでいた。
コイツらに八つ当たりをしたところで無駄なのに…
『すまん…ちょっと一人にさせてくれ…』
{将軍……}
一人、部屋に戻る…
脳裏に浮かぶセンの寝顔。
溜息を吐き、ベッドに身を投げた…
『………。』
どうしたら良い…
嗚呼、俺も着いて行けばよかった。
後悔しかない…けれど、最悪の結果の事は何故か頭には無かった。
アイツは強い、だから…
《おい、小僧。》
『うぉっ!?……長老、ノックくらいして下さいよ。』
《生娘じゃないんだからええじゃろ。》
『………。』
《センと別れた場所が分かったぞ。》
『本当か…っ!』
勢い良く起き上がり、大刀を手にする。
《街の中央だ……行くのか?》
『当たり前だ、長老…明日の部族会議の事だが』
《あぁ、分かっておる。》
『…悪ぃな。』
最低限の荷物を手に、俺は城から出た。
もう夕刻か…どこに居る、セン…
気がつけば駆け出していた。
〔クウガ様!!〕
『…ユリ…』
大きな声が後ろから聴こえ、振り返るとユリが居た。
息を切らしながら俺の元へやって来ると、真剣な表情をした。
〔私もお供いたします。〕
『駄目だ、お前は戻って』
〔私の責任でもあるのです。〕
『…!』
〔街迄でも構いません、共に探す事をどうか…〕
『……分かった。ただし、俺が危険だと判断したら直ぐに逃げろ。良いな?』
〔はい!〕
街に降り、センと別れた場所へ来た…
そこは既に傭兵達によって囲まれており、関係者以外立ち入ることを許さない。
俺とユリの姿を見た兵が、道を開けてくれた。
そこにはセンの荷物らしき物と、大刀…?
『こ、れは…?』
〔それは…セン様が、クウガ様へとお買いになられた大刀です。〕
『俺に…アイツが…』
〔そのオマケ食玩が…痺れ薬だったのです…〕
『………。』
落ちている大刀はとても鋭く黒光りしており、柄の部分には龍が施されていた…
とても良い大刀だ。
持ち上げると手にズッシリとした感覚。
これを…お前は…
持てたんだな。
脳内でセンの怒鳴り声が再生され、思わず吹き出した。
『ブククッ…クッ…』
〔ク、クウガ…様…?〕
『いや、すまない。』
〔は、はぁ…〕
『…血痕だ。』
すぐ近くに小さくはあるが、何粒もの赤い点々が地面に付着している。
怪我をしている…
『早く見つけてやらねぇと…』
〔わ、私!他の方々に聞いてまいります!〕
『あぁ、頼む。』
{クウガ様!}
走って来る傭兵が何かを抱えている。
息を切らしながら、その包を取った。
『これは…アイツの双刀…』
{はい、不審な男達が麻袋を抱えながら走り去っていくのを見たとの情報が…その近くに副将軍の双刀がありました。}
『そうか…』
{方向的に…森の部族のある所かと。}
『森の部族………分かった、お前は一度戻ってジフ将軍に話を付けてくれ。』
{はっ!}
『………。』
森の部族達が関与しているとは思えない、もし国境近くを目指しているとしたなら…
ジフ将軍に頼んで、その辺りを捜索してもらおう。
『チッ…』
長くなりそうだ…
直ぐに助ける、だからセン…如何か無事でいてくれ…っ…
アイツが残した大刀を握り締め、立ち上がる。
何処のどいつか知らねぇが、センを狙った事…後悔させてやる。
〔クウガ様!〕
『どうした、何か情報があったか?』
〔はい、男達はここらへんを彷徨いている山賊らしく…金品を盗んだり女人を攫ったり等、悪い噂が沢山…〕
『山賊…ねぇ…』
〔この大刀を狙ったのか…あるいは…〕
『セン自体を狙ったんだろ、大刀も双刀もここに置き去りになっていた。金品目的じゃねぇのは確かだな…』
〔…っ…セン様…〕
『ま、顔だけは良いからなアイツ。』
〔…え?〕
『性格は…もう少し大人しくなってくれると良いんだがなぁ〜…』
〔…ふふっ、それはクウガ様に心をお開きになってるからじゃ?〕
『如何だかねぇ…』
やっとユリは笑顔を見せた。
元気の無い女なんざ、見たくねぇ…
それに、アイツはユリを逃した…自分を犠牲にしてまで。
ユリを信頼し、必ず他の者に知らせてくれると確信があった…
『さーてと、どうすっか…森の中を片っ端からってのも中々……ん?』
〔如何なさいました?〕
血痕が…続いている…?
微量ではあるが、点々と茂みの方へ繋がって……まさか、アイツ…
〔クウガ様!?〕
『悪ぃ!案外早く見つかるかも知れねぇ!』
〔ちょっ…ちょっと!〕
走り出した俺に、制止の言葉を投げかけるユリ。
聞こえていたが俺の身体は止まらない…
これを辿ればアイツが居るかもしれねぇんだ。
そう思ったら…止まるなんて無理だろ。
この足が折れようが、息が止まろうが…俺は止まる気は無い。
俺にはアイツが必要なんだ、俺には…っ
『はぁっ…っは……はぁっ…』
気が付けば周りは暗くなっていた、血痕も丁度途切れてしまった。
息を整え、辺りを見渡す…
それらしい人の気配も無い。
『チッ…』
ここまでか…
半ば諦めかけていると、人の気配がした。
大刀を握り締め、構える…
相手は走って此方に向かっているのか、ものすごいスピードで近付いて来る。
ガサガサと茂みが揺れ、相手の顔が出てきた。
『…………は?』
「あ。」
そこに居たのは、木々や葉っぱを頭に沢山乗せたセンだった。
ものすごく間抜けな顔をしている。
勢い余ったセンが、そのまま河に落ちた。
「…ップハァ!!…お前!なんで避けるんだよ!受け止めろよ!!」
『………。』
呆けている俺に、会って早々怒鳴り散らすセン。
嗚呼…センだ…センが今、目の前に居る…
「いっ…つっ……やっぱ水は染みる…」
『……っ…』
「…え。」
思わず抱き締めてしまった。
俺の腕の中で固まるセン、服も顔も…足も…見える全てに傷や汚れがある。
「ちょっ…何す」
『お前が無事で良かった…っ…』
「………これが無事だと思うならお前の目は節穴だな。」
『〜〜っお前なぁ!』
〈居たか!?〉
[そっ、それが…まだ…]
〈あぁ!?探せ!!見つかるまで探しやがれ!!あんな上玉中々居ねぇんだぞ!?〉
[はっはいぃ!!]
〈クソッ……まだ近くに居る筈だ、あの怪我じゃァ遠くまで行けねぇ…"李国の風神"と言われるあの男の右腕だぞ…良い値で売れるに決まってる。死ぬ気で探せェ!!〉
ほぉ…成る程なぁ…
馬鹿の考えることなんざ、分かりたくもねぇけど。
さて、どうすっかねぇ。
『セン、そういやお前…痺れ薬食ったって聞いたが?』
「………。」
『おい。』
「………。」
『無視かよ、おーーーーーい。』
「………。」
『……オマケの飴に釣られた愚かな副将軍殿〜。』
「違うわ!!」
ひらりとセンの拳を避ける。
『違くねぇだろうが!!余所者から貰った飴でもホイホイ食いやがって!赤ん坊かテメェは!!』
「しょうがないだろ!食べた事あんまり無いんだから!!」
『だったら俺が幾らでもやる!』
「…へ?」
『だから他の奴等から貰うんじゃねぇ!!』
「………。」
『分かったか!!』
「え、あ…うん。」
久し振りに声を荒げた…と、言うかコイツと怒鳴り合うのすら随分と懐かしい気がする。
余韻に浸りながらもセンの拳は鳴り止まない。
剣を渡す前で良かったな、俺。
もし渡していたら今頃死んでるだろう…
〈誰か居るのか!?〉
『あ?』
茂みから例の男が飛び出して来た。
それを聞きつけた他の奴等も、ゾロゾロと集まり…気が付けば俺らは囲まれてしまった。
〈お、お前は……っ!〉
『………。』
〈風神……クソッ嗅ぎ付けやがったか!〉
『嗅ぎ付けたも何も、コイツが残してったモンに気付かねぇアンタらが悪ぃんだろ。』
〈な、何だと!?〉
「指先をちょっと切って、血痕を残してった…ずっと。」
〈な…っ!?〉
『アホだよなぁ…まぁ、コイツがこんな事しなくてもアンタらが怪我させてんだから意味ねぇよな。』
〈…っ…〉
『それとも何か?そこまで頭が回らない程やっぱりアホなのか?』
〈この…っ…さっきからゴチャゴチャとうるせぇんだよ!!〉
飛び掛かって来る男の脇腹に一発拳を入れる。
小さく唸ったソイツは、地面に転がりながら他の者に声を荒げた。
〈クソッ…テメェら!!ボサッとしてねぇでやれ!!じゃねぇとお頭にぶっ殺されんぞ!!〉
『……。』
頭…?
成る程、そいつを炙り出さねぇと…いや待てよ?
一人残して帰らせれば、必然的に出てくるんじゃねぇか?
でもなぁ…センをこんな目に合わせたんだ、怪我だけじゃ足りな…殺してぇ。
「おい、何呆けている。」
『いや、別にぃ…』
「怖気づいているのか?それなら早く帰れ、俺一人で充分だ。」
『は?そんな丸腰で何ができるのかなぁ〜?また捕まるんじゃねぇの?』
「あれは痺れ薬のせいで、決して俺が弱いからじゃない!!」
『如何だかねぇ?』
「お前…こいつらの前に殺す…っ…」
『ほぉ…?やれるもんならやってみろよ、ほれほれ。』
「この…っ…」
センが拳を構え、震えだす。
その目の前に、やつの愛刀を差し出すと停止した。
「これ…」
『落ちてたから拾っといた。』
「………。」
愛おしそうにそれを受け取ったセンは、それを此方に構えた。
あ、俺死ぬかも…
「ボサッとしてると斬りますよ、将軍。」
その一言を発し、俺の後ろに来ていた男を斬りつけた。
『……俺が斬られるのかと思ってたわ。』
「斬られたいなら斬りますが。」
『嘘でーす、やめてくださーい。』
背中を合わせ、囲まれている男達にようやく向き合った。
というかコイツら、律儀に待ってたんだな…やっぱり阿呆か。
『背中、任せたぞ…セン副将軍。』
「勿論です…クウガ将軍。」
大刀を握り締め、ひと振りして気が付く。
見た目よりもこの大刀は使いやすい、良い物を貰えたな…
思わず口角が上がった。
『何人やったか後で競おうぜ。』
「嫌ですよ、俺が勝つの目に見えてるんで。」
『お前なぁ…やる前に言うなよそれ〜。』
〈何ゴチャゴチャ言ってやがる!!〉
『何か律儀に待ってくれてたんで、折角だしって。』
〈〜〜〜っ!〉
『あれ?違ってたか?』
〈お前らァ!やれェ!!生死は問わねぇ!!〉
男の怒鳴りによって、一気に飛び掛ってくる。
『あーあー、そんなガラ空きじゃ…簡単にやられちまうぜっ!』
勢い良く来た男の脇腹に、大刀を振り下ろす。
思いの外力が入っていたのか…男は2、3m飛んで行った。
巻き込まれた者達は気を失っている。
ま、一石二鳥か。
「どうしました?動きが遅いですよ。」
『うるせぇ黙ってろよ!お前こそ止まってんぞ?疲れてんのか?』
「いえいえ、全然余裕ですよ。」
と、言いつつも…怪我をしている分辛いのだろう…
微笑む余裕も無いのか、ずっと真顔で瞳をギラつかせている。
あまり時間は掛けさせらんねぇな…
『チョロチョロうぜぇな…纏めて来い!!』
声を荒げ、大刀を振り回す。
風を取り巻き、軌道に乗せた勢いで薙ぎ倒していく。
本当に使いやすい…手に馴染んでいたあの大刀よりも遥かに良い。
コレのお礼もゆっくりと伝えたい…だから早くこれを片付けないと…
そんなことを思いながら、次から次へと出てくる男達に舌打ちをした。
『チッ……何人居るんだ…っ…はぁ…っ…』
「キリが無いですね…ゔ…っ…」
『お前…あんまり無理するな。』
「いえ…そんな事言ってる暇など…っ…」
〈ふふ…ふふふ…アッハハハハハ!!!残念だったなぁ!!ここまで来ちまえば、もう俺らの領域だ!!〉
『………。』
〈どんなに足掻こうが、加勢は途絶えねぇ…!お前らの負けなんだよォ!!!〉
確かに加勢は増えている…だがしかし、負ける訳が無い。
負け犬の遠吠えはとても見苦しいな…そう思っているのがセンにも伝わったのが、呆れ顔をしている。
〈先ずは副将軍…アンタからだ!!〉
「…………。」
だがしかし、誰も飛び掛かって来ない。
意表を突いて来るのかもと思い、警戒をしながら周囲を見渡す。
すると、茂みの奥がキラリと光った。
弓兵か…!!
『セン!!』
「…っ!!」
気が付くのが遅かった…大刀を投げ出し走り出したと同時に、弓は放たれた。
センの腕を引き寄せ、胸に抱き留める。
その瞬間背中が熱くなり、俺はセンを抱き締めながらその場に崩れるようにしゃがみ込んだ。
『ぐっ……ぅ……っ…』
「ク、クウガ…お前、何して…」
『うるせぇ……』
背中に刺さった矢を引き抜くと、少量の血が吹き出した。
鋭い痛みと脈打つ感覚が全身に響く。
だが、その痛みがなんだ…
そう思いながら直ぐに立ち上がり、センの前に立ち塞がる。
茂みの奥に居る弓兵を睨み付け、走りながら殴り飛ばした。
『卑怯な事してんじゃねぇよ…真正面から来い…』
「………。」
気を失った弓兵、それを確認して俺はセンの所へ戻った。
周りの男達は皆青冷めている…
背中から血が出ていく感覚がする…立つのもやっとだ。
「クウガ、お前…何で…」
『うるせぇ、身体が勝手に動いたんだ。』
「……将軍の癖に副将軍護って怪我とか笑えないんですけど。」
『お前なぁ、たまには優しい言葉とか』
「座ってて下さい、立つのもやっとなんでしょう。」
『………。』
ギロリと睨まれ、俺は押し黙る。
昔からそうだ…俺が怪我をすると直ぐに怒る…
副将軍が〜…とか、将軍護衛なのに〜…とか、そんなの如何だっていいのに。
俺はお前と対等で居たいし、可能であればお前をこの手と目の届く範囲に置いて、護ってやりたい。
けれどお前は役職に拘り、何処かへ行こうとしてしまう…
『………。』
「我が李国の将軍に、怪我を負わせたこと…決して許す事は出来ませんね。その命をもって償え。」
ビリビリと伝わるセンの殺気…
双剣を構え、動くものから殺す勢いだ。
『セン、俺は大丈夫だ。落ち着け…』
「俺はいつも落ち着いてます。」
『…セン。』
「………。」
『お前も李国の副将軍だ、自分の身体を大事にしろ。』
「お前に言われたくない…」
今度は泣きそうな顔をしている。
思わず俺は笑いながらセンの頭を撫でた。
『さっさと片付けて帰るぞ、ユリも皆も心配してる。それに…』
「……?」
『多分もう直ぐ森の部族達の援護が来る…それまで耐えれるか?』
センの耳元でそう呟くと、ニコリと微笑んだ。
「当たり前でしょう、寧ろ援護なんて要らないくらいですよ。」
『ハッ…それは頼もしいな。』
「無理のない範囲で、頼みます。」
『あぁ。』
大刀を杖にしながら立ち上がる。
またより一層、血が出ていく…
センは取り戻した、あとは帰るだけだ。
根性見せろよ俺…っ!!
そう思いながら男達に向かって走り出した。
俺は如何なっても良い、センだけでも生きて帰す。
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