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傷 2にしおりをはさみました!
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傷 2
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腕の中で、細くて小さな体がカタカタと震えている
この震えは間違いなくたった今俺が作ってしまったものだ
自分で自分が抑えられない
大切な人を守る力すら自分にはないのかと絶望の中に陥る
美郷は大丈夫、というように寄り添ってくれたけど、震えながら俺に抱きしめられているのが全ての結果だろう
大丈夫、と言いながらも結局は怖いのだ。当たり前だろう、抵抗すらできずにずっと俺に殴られたのだから
美郷の震えが止まったかと思うと、腕に一気に重さがのしかかる
驚いて美郷を見れば、静かに涙を流しながら気絶していた
俺は慣れた手つきで彼をもう一度ベッドへ寝かせる
静かに眠る横顔を見つめたまま、なにもできずに何時間も隣に居た
力が入らないのだ
自分が情けなくて、怖くて
守りたいと思う相手を傷つける恐怖が俺を包み込む
自分の歪んだ性癖が許せなくて、いっそのこと美郷を捨ててしまおうかと考えるけど、彼が1番恐れていることがそれだということにはとっくに気がついている
だから、捨てることは出来ない
どうしようもない葛藤が頭の中で渦巻いて俺を縛り付けた
いつの間にか美郷が目覚めていることにも気づかず、美郷を見ているはずなのに目の前は真っ暗だった
温かいものが俺の手に触れ、漸く正気にもどる
手を見れば、美郷が俺の手の上に自分の手を重ね、不安げにこちらを見つめていた
『鷹さん、震えてますよ。』
言われて初めて気づいた
「自分が、情けなくて。」
自分を嘲笑うように口角をあげる
『貴方が正気じゃないことは、途中から気づいていました。』
思わぬ告白に俺は笑みを失う
『だから、なにを言っても無駄だと思ったし、貴方には罪悪感を感じて欲しくなくて、途中から抵抗を辞めました。』
なんて、健気な子なんだろうか
どうしてこんなに綺麗な子を俺は毎度汚してしまうんだろうか
俺は項垂れた
なにも、言えなかった
美郷が苦しそうに胸を上下させながらベッドに横たわる
おでこに触れてみれば酷い熱で
それでも
心配しなくて大丈夫
そういって美郷は優しく俺に笑いかけるのだ
意味が分からなかった
俺はこいつに酷いことしかしてないのに、どうしてこんなに優しくしてくれるのだろうか
本当に捨てられたくないだけ?
他人が分からなくてこんなに怖いのは初めてだった
そもそも、今まで他人に興味など持ったことがなかったのだ
『ん・・・んぅ・・・。』
いつの間にか美郷は夢の中に行ってしまったようだ
しかし、いい夢は見れていないようで、昔から綺麗ではあったが、最近さらに綺麗になってきた顔をしかめる
が、しかめたかと思えば、苦しそうに笑うのだ
夢の中でさえも
本来なら、俺に拾われなければ、もっと綺麗に笑えたはずなのにな
正直、苦しい
ようやく、気づけたのだ
人を傷つけるという行為は、同時に自分も傷つけているということに
こんなことに気づかずに、ずっと何も考えずに善人になれたなら・・・
どれだけ祈ったことだろうか
最近布団に入ると何度もフラッシュバックする自分がしてきた酷いことの数々
あの時止まれたなら、あの時謝れたなら、こんな取り返しのつかないことになっていなかったのに
何度も何度も考えた、悩んだ
結局眠れずに朝を迎え、自制心が効かず、この有様だ
俺は一体どれだけ彼を傷つけたら気が済むんだろう
あぁ、でも、駄目なんだ
俺が暗い顔をしているとまたきっと美郷は大丈夫だから、といって笑うのだ
そんな無理はさせてはいけない
俺は気合いを入れ直すように深呼吸をして、しっかりと前を見据える
俺に、今、できること
過去は変えられない
だから、今から出来ることを探さなくては
またいつの間にか美郷が起きてこっちを見ていた
そして、小さくわらった
『鷹さん、すごくスッキリした顔してますね』
今までの無理した笑顔じゃない、穏やかな微笑みを向けられ、俺は一瞬戸惑った
でも、全身に嬉しさが駆け巡った
美郷をこんなに綺麗に笑わせられた
それが、とても嬉しかった
「あぁ、お前のおかげでスッキリしたよ。やるべき事も、なんとなく分かった。」
だから、俺もお返しするように強く笑いかけた
美郷は微笑みながらゆっくりと瞬きをして俺を肯定してくれた
そしてまた短い夢の中へ潜って行った
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