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03 にしおりをはさみました!
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03
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高尾くんの家にお邪魔させてもらうと、妹さんだけがいた。
「お邪魔します」
リビングの奥に真新しい仏壇があった。
なんていうのかは知らないけれど、お椀みたいのを軽く鳴らす。
高くて澄んだ音が響く。
でも、その音はあからさまに彼の死を意識させた。
「……高尾くん、キミにはもう、会えないんですね」
涙が出るのかと思ったけど、出なかった。
キミの前では泣けません。それがキミを悲しませそうだと思ったから。
「お兄ちゃんの友達なんだよね?」
おずおずと話しかけてきた妹さん。高尾くんに似て、ネコみたいな少し吊りあがったアーモンド型の目をしていて、ショートカットの活発そうな女の子だった。
「ええ、そうですよ」
「もしかして、黒子くん?」
「はい。どうして、ボクのことを?」
「お兄ちゃん、まれに日記を書いてたんだよね。部屋片付けてた時に見ちゃって」
えへへ、と笑う彼女の目も薄く腫れていた。
「へぇ、彼が日記を」
まっすぐボクを見据えた彼女。高尾くんと同じ瞳。
「お兄ちゃんと仲良くしてくれてありがとう」
高尾くん、今、キミ、すごく情けないお兄ちゃんですよ。妹さんに代わりにありがとうって言われちゃってますよ?ありがとうって言いたいのはボクの方だ。ボクも彼に感謝の気持ちをきちんと伝えられてない。
「これね、あげる。たぶん、あたしよりも黒子くんが持ってた方がお兄ちゃんは喜ぶ」
そう言って、手渡されたのは水色のリストバンド。オレンジのラインが入っていて、まだ新品。そして、袋の端にリボンまでついていて、多分、プレゼント。
「ボクは受け取れません。他にこれを受け取るべき人がいるでしょう?」
「ううん、これは黒子くんにあげるつもりだったんだよ」
「え、ボクですか?」
「黒子くん、もう少しでお誕生日なんでしょ?」
もう少し、というにはまだ一カ月以上あるが、日記を読んだというのだから間違いはないのだろう。
「受け取ってやれ。それが高尾の意思なのだよ」
緑間くんまでそんなことを言ってくる。
「……じゃあ、頂きます」
最後まで笑って対応してくれた妹さん。強い子なんだろう。
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