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25
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「あ…っ」
久米が声をあげるとほぼ同時に、茶封筒の中にあっただろう書類がバッと畳の上に広がった。久米は慌てて畳に座り込んで、書類を集めようとバラバラになった紙に手を伸ばす。
…その一枚に、信じられない名前を見つけ、久米は書類を眼前に掲げたまま、硬直する。
「依頼者、“箱根烈”…。」
書類は、探偵による身元調査の依頼だった。調べられているのは、“永嶋(久米)征久”だ。
日付は、半月ほど前。書類を持つ手が、久米の全身ががたがたと震えだし、顔から血の気が失せていく。足が動いて、空の湯飲みを蹴った。丸い湯飲みはころころと、畳の上を転がっていく。が、久米はそちらには見向きもしない。
客室の襖が開く音が、やけに大きく聞こえた。強張りきった表情の久米は、機敏にそちらを振り返る。…そこには、大井香と名乗った男が腕組みして襖にもたれかかるように、佇んでいた。
「大井香だと、名乗ったじゃないか…!!あ、あれは、嘘だったのか??」
目を大きくカッ開いた久米の顔に、最早先刻までの落ち着きやゆとりは綺麗に削ぎ落されていた。
「偽名だよ。」
スーッと双眸を眇め、大井…否、箱根烈は語りだす。
「十年前、オレはわけあってサングラスとマスクで、“顔を覆い”、隠していたからな。『かおをおおい』を並べ替えて、“を”の文字を消して“る”を付け足して、『大井香』という名前を作り出したんだ。…オレの本名は、箱根烈だ。」
「う、うそだ。離れに来る途中で、仲居さんにも聞いたんだ。大井さんが泊っているところはどこかって…。べ、別に変な顔しなかった…!!」
「偽名で泊っているんだからな。…当然だろう。」
箱根が一歩踏み出す度に、へっぴり腰の年下の男は近くの書類を派手にぶちまけながら後退っていく。久米は後退しながらも器用に右の人差し指で相手を糾弾し、憤怒の形相で口角から唾を飛ばす。
「ぎッ、偽名だと!?…馬鹿な!!箱根烈が今ここにいるはずがない!!箱根烈は十年前に、僕がこの手で殺したんだ!!お前、最初っから仕組んでいやがったな!!こッ、答えろ!!お前は箱根烈の何なんだ!?」
喚き散らす久米は近寄るなとでも言いたげに手あたり次第掴んだ物を対面している相手に投げだす。紙束が更に宙を舞った。
「…何だって言われてもなぁ~??」
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