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15にしおりをはさみました!
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15
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買った物を裏に置いて、馬に干し草を食わせる。
別にコソコソしてねーし、物音だって立ってると思うのに、ミーハもハマーも話に熱中してんのか出て来ねぇ。
でも、こんな気分で家ん中入っちまったら、マジ『転送』で帰れ、とか口走ってしまいそうで、イヤだった。
嫉妬して仕方ねーけど、それをハマーに見抜かれたくねぇ。
モヤモヤを抱えたままぶらついてると、「よお、暗ぇなー!」といきなり背中をド突かれた。
振り向くまでもねぇ、こんなコトする知り合いは1人しかいねぇ。タオだ。
「アルが1人なの、珍しーじゃん。ミーハは?」
無邪気に大声で訊かれて、ムカッとする。
「客。昨日の依頼主、なんか幼馴染だったらしくてな」
地を這うような低い声で答えてやったのに、オレの不機嫌はモノともしねーでタオは「へーっ」と明るく言った。
「じゃあ、昔の記憶が戻って、話し込んでんの? で、あぶれたお前はふて腐れて、シケたツラしてうろついてんだ?」
って。
図星刺されて、余計ムカつく。
「良かったじゃん、ミーハ。そんな幼馴染が見付かってさー」
他人事みてーに、正論吐かれんのも、余計ムカつく。分かってるっつの、そんなこと。
返事をしねーで「ふん」と鼻を鳴らしたら、タオがさらに言った。
「だって、辛いばっかの過去じゃなかったってコトだろー?」
辛いばかりの過去。それを聞いて、ドキッとした。
タオを振り切るように足早に歩いてると、いつの間にか家の前に戻っちまってた。
舌打ちしてー気分で、もういいやと思ってドアを開ける。けど――ハマーの姿はとうになかった。
部屋の一角を占領してた、朽ちた宝箱もなくなってる。ただ、食卓の上には金貨がじゃらっと置かれてて、ミーハが「お帰りー」とオレを出迎えた。
「……ハマーは?」
静かに訊くと、「帰っ、たよっ」って言われた。
「『転送』、で、村まで送ってくれ、って。アル君によろしく、って」
にこにこ笑いながらのセリフに、また心臓がドキンとする。
『転送』で、って。そりゃオレも、同じこと考えてたけど……。
「……随分急だな?」
動揺を隠して尋ねると、ミーハは無邪気にうなずいた。
「うん、でも、オレ、思い出せたから、平気」
嬉しそうに言われて、モヤッとする。
「思い出せた、から、いつでも会える、よっ」
大事な宝物をそっと抱えるようにして、ミーハは胸に手を当てた。
『良かったじゃん、ミーハ……』
タオに言われたセリフが、グサッと胸に突き刺さる。
分かってる、大事な優しい幼馴染だって。空気読めねーし、馴れ馴れしーし、抜けてるとこあるけど、いいヤツだって。
ミーハに呪文書を、オレに馬を、ぽんと買ってくれて、その上金貨まで置き土産に残して――欲のねぇ、気前のいい、いいヤツだって分かってる。
こんなに急に帰ったんだって、多分、オレの機嫌ワリーの気にしたんだ。
オレの方が、イヤなヤツなの分かってる。
けど、分かってても、気に食わねーんだから仕方ねーだろ!?
「来い!」
オレは感情に任せ、ミーハの腕を乱暴に引いた。
「ふえっ?」
ミーハは驚いて立ち竦んだけど、構わず引きずるようにして、ベッドの上に放り投げる。
ひっ、と小さく息を呑むミーハ。
その怯えたような仕草に余計に腹が立って、オレは、無理矢理恋人の服を剥ぎ取った。
押し倒して、組み伏せて、キスもしねぇで強引に貫く。
おしおきでも慰めでもねぇ、愛情表現でもねぇ、ただオレがスッキリしてぇだけのセックス。
「やああああっ」
貫いた瞬間、ミーハがのけ反って高く悲鳴を上げたけど、もう止まらなかった。
つーか、余計にムカついて、イライラをぶつけるように、無茶苦茶激しく揺さぶった。
「や、やあ、いた、ぁ」
ミーハが泣きながら首を振る。
ズル、ギチュッ、と慣らしてもねーのに濡れた感触があって、切れて血が出てんだろうと悟る。
オレの腕にしがみ付くミーハの顔は、快楽どころか苦痛に歪んでて――でも、抵抗はされなかった。ただ、泣かれた。
揺さぶるたびに、「うっ、うっ」と泣き声が漏れた。
「捨てない、で」
「嫌いになら、ないで」
そう言われてから、ハッとした。
オレは――何やってんだ?
一方的にくだんねー嫉妬して、痛くして泣かせて。大事にしようと思ってたハズだろ?
「……ワリー。ごめんな」
動きを止めて、口接ける。キスは涙の味がした。
そっと抜こうとしたら、けど、逆に縋られた。
「やめ、ない、で」
「でも痛ぇーだろ? ごめんな……」
そう言うと、ミーハはぶんぶん首を振った。
「痛く、して」
って。涙ボロボロ流しながらそんなこと言われて、痛くなんかできる訳ねーだろうに。
「痛くして、ひ、ヒドく、してっ。捨てないで、オレ、だけにしてっ!」
うわぁ、と子供みてーに泣かれて、オレは打って変わって優しくミーハを抱きながら、「お前だけだ」「愛してる」って何度も何度も言い聞かせた。
そうだ、さっきコイツは『転送』を使った。置き去りにされた事を思い出す、イヤな魔法を。
その上で笑ってたのに――。
「ごめんな、ミーハ」
自分のガキっぽさにうんざりする。もっと器をデカくしねーと、丸ごと包んで守れねぇ。
素直に言えりゃ良かったかな。お前の過去に嫉妬したって。
ホントは、過去を思い出して欲しくねーんだって。
過去の記憶があっても、無くても。お前は多分「お前」のままで、オレは「お前」を愛してるって。
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