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19 高地編にしおりをはさみました!
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19 高地編
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自分の装備らしい装備を新調すんのは、そういえばミーハを拾って以来初めてかも知んねぇ。
ミーハに呪文書を買ってやんのを、ずっと優先にしてきたんだな、と改めて思う。
オレの新しい剣を見て、そのミーハも自分のコトみてーに喜んでた。
「き、キレイだね。ピカピカ、だ」
って。
そんで、キレイだからもっと飾ればイイ、とか言い出した。
「こ、この間のサファイア、とか、付けて欲しい」
自分で錬成して自分で研磨したヤツだから、なんか思い入れでもあんのかな?
まあ、柄や鞘に宝石を飾んのは、守護力アップの意味でもよくあるから、別にいーんだけど。
じゃあオレも代わりに、ルビーをミーハに贈ろうか?
アイツを拾ったのと同じ日に、同じ河原で拾ったルビー。オレが拾って、ミーハが研磨した赤い宝石。
火系魔法が得意なミーハにピッタリかも知んねぇ。
あの古い杖にはめ込むのも悪くねーけど、オレはそれより、ミーハ自身に着けて貰いてぇかもな。
ペンダントか……ブレスレット。アイツのあの白い肌に、赤い石はよく似合うだろう。
だったら……。
「……銀のチェーンがいるな」
武器屋の前で、そんなことを呟いていたら、後ろからガシッと肩を組まれた。
「なになに、銀鉱石採りに行くって?」
勿論、そんなことすんのはタオだ。
「剣も新調したし、腕前も上がったしな! そろそろいーだろ、高地行こうぜ!」
またいきなりか、と思ったけど、剣の稽古に付き合って貰ってる身としては、今んとこ強く出られそうになかった。
まあでも、いい機会かも知んねぇ。
オレとミーハだけじゃ、初めての高地行きってのはハードル高ぇけど、天才剣士が一緒なら安心だ。
それに……銀鉱石。
そりゃ、滅多に手に入んねーのは分かってるけど、うまく採取できれば、金を貯めなくてもミーハにプレゼントができる。
『アル君、ありが、とうっ!』
満面の笑顔で礼を言う、ミーハの姿を想像したら、ゲンキンだけどソワソワして来た。
タオと連れ立ってオレらの家に向かってる途中、仲介屋の前を通った。
依頼書の貼ってある掲示板の前は、いつも人が集まってるもんだけど……なんか今日は、スゲー人だかりだ。
「何かあったんか?」
タオに訊くと、「あった、あった」と陽気な声で教えられた。
「自分の目で見てみろよ」
「……はあ?」
メンドクセー、と思ったけど、今んとこタオには頭が上がんねぇ。
特に興味はなかったけど、渋々人混みを掻き分けて、掲示板の前に出る。
「あー、これか」
混雑の原因は一目で分かった。
白地に赤枠の特別な依頼書が、掲示板の真ん中にでかでかと貼られてた。
懸賞討伐。
でもまあ、天才剣士って言われてるタオならともかく、オレみてーな一般剣士には、まず関係ねぇ。
こういうのは大人の仕事だ。
デザートライオン10頭、と書いてる文面をちらっと見て、オレはまた人混みを掻き分け、タオの元に戻った。
火系の魔法が効かねぇ、砂漠の猛獣が10頭。賞金が幾らだったかまで見てねーけど、そりゃ大変そうだ。
もっとも、火系がダメっつー時点で、今のオレ達には無関係も同然だけどな。
「10頭は多いな」
そう言うと、タオも同意見みてーだ。
「んー、さすがにちょっとな」
ちょっとかよ、と思ったけど、この自信過剰な男がそういうからには、ちょっとどころじゃねーんだろう。
「オレが2人いても無理かなー」
って。そりゃ、かなり無理だ。
他人事みてーに言ってるってことは、参加するつもりもねーんだろうか?
タオがいねーんなら……何人ぐらいで出向くことになるんかな?
まあ、関係ねーけど。
「ミーハが『凍土』くらい使えたらなぁ」
タオがそう言って、ニヤッと笑った。
『凍土』って。『雷雨』と同じぐらいの、最上級の魔法じゃねーか。
「……そりゃ、かなり先の話だな」
使えるかどうかって事より、呪文書買うまでが大変だっつの。『氷山』だって、そうとう高かったのに。
ははは、と笑うとタオは「だよなぁ」つって、両手を頭の後ろに組んだ。
砂漠なんかより、オレらがまず向かうべきは、高地だった。
タオに口止めしとかなかったのも悪かったんだろうか。
家に着くなり、銀鉱石の話をミーハにぺろっと話されちまった。
「高地に銀鉱石採りに行こうぜー!」
って。
有り得ねぇ。やっぱバカだ。
「うえ、銀……? なんで?」
こてんと首をかしげて尋ねるミーハに、タオは「さーな、アルに訊け」つって去ってった。
分かってたけどな、そういうヤツだって。
古くからのトモダチだけど、ホント、マイペース。
天才だからフリーダムなのか、フリーダムだから天才になれたのか……いや、「赤い閃光」とは呼ばれてるものの、本性はすばしっこいバカだけど。
この分じゃ、もう1人の天才剣士――首都にいるっつー「黒い烈風」も、意外にフリーダムなバカだったりするかもな。
まあ首都までは馬でも3日くらいかかるし、まずそんなとこ、オレらが行きそうにもなかったけど。
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