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61
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山に入った他の連中も、やっぱウッディコングの群れに遭遇したらしい。
「これ、相当繁殖してんな」
「ボスの2、3頭くらいいるんじゃないか?」
剣士や冒険者らがあつまるメシ屋でも、そんな噂話で持ち切りで、やっぱコングのあの多さは異常だったみてーだ。
街の掲示板にも、自治体の方から調査依頼が貼られてた。
――依頼:調査
内容:ウッディコングの繁殖状況の調査、繁殖場所の特定、間引き
懸賞討伐って訳じゃねーけど、繁殖場所に近付くのが危険だからか、報酬は金貨100枚。思ったより多い。
ついでにウッディコングを間引きすんのも大歓迎らしくて、尻尾を持ってけば、1匹につき金貨1枚くれるらしい。毛皮の値段もまあまあだし、それを入れりゃかなりの実入りだ。
「うわ、尻尾取っときゃよかったな」
タオのケチ臭ぇ発言に、ふっと笑える。
ここ数日、さんざんコングばっか狩ってたから、オレもいい加減飽きたとこだ。
「じゃあ、オレらももっかい行くか?」
「いや、行かねー」
あっさり断られて、「だろうな」ってうなずく。
肉も食えねーし、ちょこまか飛び回ってうぜーし、ちょっとは他のモンスターも狩りてぇ。
ここ数日、合計100匹近く狩ったお陰で、オレの方も大分動きについて行けるようになったし。気配もかなり分かるようになって、楽だった。
「ボス狩りなら行くんだけどなー」
掲示板を見ながら、タオが呑気な声で呟く。
「ボスなら、やっぱ賞金討伐モンだろ」
頭ん中に、赤枠付きの張り紙を想像して、ニヤッと笑う。
ボスモンスターに対峙したことはねーから、どんだけ手強いかワカンネー。ボスは体も2倍くらいにデカいっつーし、ってことは、攻撃力もかなりなことになるんだろう。
けど、ウッディコングのボスなら――。そんな欲と希望が、じりじりと胸を焦がす。
ここ数日さんざん相手して、動きと気配を見切り、攻撃パターンに慣れた今なら、手強いボスモンスターでも、イイトコ行くんじゃねーかと思えた。
タオがドラゴン討伐にしつこく行きたがってた気持ちが、ようやく分かってきた気分。
まだまだタオに比べりゃ力量は下だけど、どんだけ通用するかやってみてぇ。
「防具ができてからだな……」
ぼそっと呟いたのを、どうやら聞かれてたみてーだ。
「それを言うなら、張り紙貼られてからだぜ」
タオにぼそっと呟き返され、わき腹をヒジで小突き合う。友達同士、笑い合えんのが楽しい。
けど、ミーハがいりゃもっと楽しいのに、って、どうしても思う。
「ボス討伐とかになったらさ、またミーハに会えんじゃねぇ?」
タオに言われて、ドキッとした。
その可能性を考えてなかったっつったらウソになる。
ミーハに会いてぇ。
言葉を交わしてぇ。
また一緒に肩を並べて、モンスターと戦いたかった。
そうこうしてる内に、ピンキードラゴンの討伐から1週間が過ぎた。
待望の防具が出来上がったっつー知らせを受けて、例の武器屋にタオと向かう。
小型のドラゴンで、竜種としては下位だっつーけど、やっぱその素材をたっぷり使った防具はスゲェ。剣もすごかったけど、アーマーはパッと見ただけでもスゴかった。
以前、タオに貰った革のアーマーとは全く違う。全体的に水色で、ところどころがキラキラ光ってた。
「これ、派手じゃねーっスか?」
恐る恐る触れると、ひんやり冷たくて固かった。
持ってみると、思ったより軽い。タオに手伝って貰って身に着けても、ほとんど重さを感じねぇ。風の加護ってのは、相当強いらしいって、実感したのは初めてだった。
「似合ってんじゃん。すげー、格好えーっ」
弾んだ声で、声高に囃すタオ。そんな風にテンション高く「すげー」って言われると、逆に不安になんのはなんでだろう?
「いやぁ、アンタなんか地味だし、そんくらい存在感のある方が丁度いいぜ」
「地味!?」
武器屋の親父にからかわれ、さすがに頬がひくっと引きつる。
オレが地味に見えんのは単に、一緒にいる「赤い閃光」がド派手だからなんじゃねーの?
行動も喋りもどっちも騒がしい旧友を、じとっと睨む。
けど、タオはそんなことに全く頓着してねーようだ。ガシッと肩を組まれ、さっそく狩りに誘われる。
「それ着て、調査向かおーぜ」
「調査かよ」
そう聞いて頭に浮かぶのは、当然ウッディコングの生態調査だ。
高くデカい山の中、一体どこでアイツらが繁殖してんのか、まだ特定できてねーらしい。
成功報酬の金貨100枚も美味い仕事だけど、それより間引き討伐で1匹に金貨1枚くれるっつーから、そっちをメインにするヤツが多いんだろう。
ちょっと山に入っただけで、10匹くらいは軽く出るし。オレだって狩りに慣れる前なら、多分そっちを選んだだろう。
けど、今は――。
薄青にうっすら輝くアーマーを見下ろし、剣の柄を握り締める。
ボスの存在と巣の位置を特定すりゃ、きっとボスの討伐依頼が出るだろう。そしたら、またミーハと一緒に……。
わずかな希望を感じて、胸の奥がじりっと焦げる。
愛おしいオレの魔法使い。
200の魔法を駆使するっつーアイツが、ドラゴン討伐でもねーのに出て来るとは限らねぇ。けど、希望を持つのは自由だし、それしか近付ける当てがねーんだから、仕方ねぇ。
「よし、またコング狩りすっか」
タオにぐっと拳を突き出して、互いにゴチンと打ち合わせる。
不安は少しも感じなかった。
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