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新調したアーマーを着けて1日中訓練しても、特に重くて疲れるとかはなかった。それどころか、高くジャンプできたり速攻できたりもして、付与効果にちょっとビビった。
「すげーな、双剣にしたらもっと速くなんじゃねぇ?」
訓練に付き合ってくれたタオにも関心されたけど、いきなり武器替えんのも怖いし、そもそもタオみてーにビュンビュン剣を振れる気がしねぇ。
「いや、無理だろ」
すっぱりと断り、薄青に光るアーマーを見下ろす。
ウロコの効果とか、金属部分とかに光が反射してそう見えるだけで、実際に暗いとこでぼんやり光ったりはしねーけど、目立つような気がして落ち着かねぇ。
岩陰に隠れるとか、草むらに身をひそめて進むとか、これ、難しーんじゃねーのかな?
「隠密行動できそうにねーな」
ぼそっと呟くと、タオは陽気にニシッと笑って、アーマー越しに背中を叩いた。
「強くなったんだし、堂々と立ち向かえよ」
って。そういう意味じゃねーだろと思ったけど、分かって言ってんのか天然なのか、相変わらずよく分かんねぇ。まあ、黒マントでも羽織れば済む話か?
「それ着て明日は狩り行こーぜ」
楽しげに誘われて、「おー」とうなずく。
剣士2人での狩りは、魔法使いと一緒の狩りとは随分違う。それにも大分慣れたことが、少し寂しいけど仕方ねぇ。
ミーハ以外の魔法使いと組みてぇとは思わなかったし、ソロでもやれるタオと以外、他の剣士とだって一緒に行動すんのはイヤだった。
数日ぶりに仲介所の前の掲示板に行くと、相変わらず調査依頼の張り紙が貼られてた。懸賞討伐っぽい依頼はねぇ。残念ながら、まだウッディコングのボスは見付かってねぇようだ。
他に変わったトコっつったら、掲示板の横に山の地図が貼られてたことくらいだろうか。
何かと思ったら、一通り調査し終えたっつー場所が緑に塗られてる。どうやら、それ以外のとこを今後は調査して欲しいらしい。
当たり前だけど首都から行きやすい場所ばっかが集中して塗られてて、山頂部分から向こう側半分がほとんど真っ白な状態だ。
「こりゃ、野営覚悟で行くしかねーかもな」
「コングだらけの山で野営か?」
周りの大人たちがざわざわ話してんのを、何となく聞きながら地図を見る。
「魔法使いが必要だな」
「大規模調査隊の募集が出るなら、参加してもいーけどな」
そんな話を聞いて、オレもそうだよなと思った。
野営って聞いて一瞬、ミーハとルナの野営の話を思い出し、モヤッとする。けど、嫉妬に駆られんのは後だ。
「オレらももうちょっと先に行ってみるか」
「おー、行こうぜ!」
元気よく応じてくれるタオは、相変わらずノリがいい。
万が一を考え、毛布とか弁当とかの準備だけして、さっそく狩りに向かうことにした。
馬で向かったのは、いつもとは違う道だ。
「山越えするより、平地を遠回りして山に入った方が早くねぇ?」
タオの提案に、「はあー?」と顔をしかめながら、仕方なく付き合う。
いくら首都の近くだっつったって、街道を逸れたら荒野になるし、荒野にはそれなりにモンスターもいるだろう。近道になるとは思えねぇ。
「ワイルダーベアとかで、時間取られる方が面倒だぞ」
一応忠告してみたけど、「大丈夫大丈夫」つって軽く言われたら仕方ねぇ。元々この旅自体、オレのワガママに付き合って貰ってる状態だし。そんくらいは譲ってもいいかと思った。
実際に行ってみると、タオの言う通り大丈夫だったから意外だった。
荒野を早駆けしてもあんまモンスターとは遭遇しなくて、昼になる前に山の向こう側に到着する。
この辺の勘の良さ、さすが天才だと思ったけど、敢えて誉めてやることでもねぇ。
「さっそく行くか」
ハマー(馬)から降り、手綱を引きながら初めての道を慎重に歩く。
首都を基盤とする賞金稼ぎの連中は、こっちにはやっぱあんま来てねぇようだ。一応道はあるものの、向こう側に比べたら狭いし荒い。
ウッディコングもかなりいて、ホントに繁殖してそうだなと思った。
ザザザザザ、と木々を伝う音と共に気配と敵意をビンビンに感じる。
「来るぞ!」
タオはとうに双剣を構えてて、コングの姿が見えるより早く、地面を蹴って攻撃してる。
向こう側ん時はあれでも手加減してたんだなって、じっくり見なくても気配で分かった。けどオレだって、他人の戦いを観察してるシュミはねぇ。
「はっ!」
気合を入れて剣を抜き、飛び掛かってくる猿を斬り付ける。
剣も軽い。アーマーも軽い。
びゅっと唸る自分の剣に、自分でもちょっとビックリした。
けど、感動してる間もねぇ。毛皮を剥ぐ余裕もねぇくらい、次から次へと時間差で襲い掛かられて、その内数も数えらんなくなった。
「尻尾だけ取ってくか」
群れを1つ倒した後、汗をぬぐいながらナイフを取り出す。警戒をタオに任せ、金貨と交換できる尻尾だけを切り取ってくと、全部で15匹も倒してた。
いつもの道だと、1回の襲撃に5匹程度だっつーのに、これはヒデェ。
ウッディコングが繁殖して、単純に餌が増えたせいか、ウッディベアもこっちでは見かけた。
ただ、ホントならもっと山の上の方にいると思うのに、見かけたのはかなりふもとに近ぇ。
「あのまま荒野に降りて来たら、それはそれで問題だぜ」
珍しく深刻そうに話すタオに、「そーだよな」とうなずく。
この近くの荒野は、オレらの地元の近くの荒野とはまた違う。けど、多分初心者の狩場には違いねーから、そこにウッディベアがって考えたら、すげー危険だ。
「早く解決しねーとな」
タオとうなずき合い、馬の手綱を引いて、再び荒れた道を登る。
慣れねぇ山道。
そこかしこにウッディコングが潜んでそうで、気が抜けねぇ。タオも同じみてーで、左右を慎重に眺めてた。
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