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オレらが崖から落ちた後、すぐにロックドラゴンは討伐できたらしい。
王都で赤枠の貼り紙が貼られた直後の討伐は、結構珍しいパターンみてーだ。金貨1000枚って、見せられただけの王都の連中には悪いけど、討伐に参加した全員で山分けしても結構な額だよな。
ロックドラゴンは、ミーハと一緒に来た魔法使い連中が、「転送」で王都に持ってっちまったらしい。
討伐参加者でドラゴンの素材も勿論山分けになるけど、受け取るには王都に行かなきゃなんねーって、ルナから聞いた。
メシ食いに行こうと町に出ると、討伐の知らせを受けてお祭り騒ぎになってた。
あっちこっちで乾杯の音頭が聞こえ、オッサン剣士らが「今日は奢りだー」なんて気前よく騒いでる。
まあ、この辺じゃドラゴン自体珍しーし、懸賞金も今までになくデケーよな。
これからの生活とか考えると、そんなパァッと使っちまおうなんて気にはなんなかったけど、それはオレらが王都でそこそこ稼いだからそう思うのかも知んねぇ。
「おー、オレらも奢ってよ」
声を掛けて店に入ると、「ざけんな」なんて小突かれたけど、酔ってゲラゲラ笑ってて、いつもより格段に雰囲気がいい。
「お、オアシスでの、お祭りみたい、だね」
ミーハにこそりと言われて、「そーだな」って肩を抱き寄せる。
デザートワームの肉でもドラゴンの肉でもねぇ、ただのその辺の肉だけど、みんなでわいわい騒いで食うと、なんでも美味く感じるから不思議だ。
オレのこと探してくれたのはタオやルナだけじゃねぇようで、色んな顔見知りの剣士たちに、「心配したぞ」って声を掛けられた。
みんながオレらを探し回ってくれてた間、ミーハと家で愛を確かめ合ってたとか、さすがにちょっと口には出せねぇ。
タオにはバレてっかも知んねーけど、その辺は長い付き合いだし、ちょっとくらい大目に見て欲しい。
町の住人の中には、ミーハを覚えてる人も多いみてーだ。
「あら、ミーハちゃん。戻って来たの?」
食堂のオバサンとかに笑顔で声を掛けられて、ミーハも嬉しそうだった。
王都へ行くかどうかは、正直ちょっと迷った。
タオなんかは「いーじゃん、もっかい行こーぜ」って気安く笑ってたけど、ミーハを取り戻した今、ドラゴンの素材関連以外に王都に行く意味がねぇ。
ガツガツとモンスターを討伐してくより、できればミーハとしばらくゆっくり、2人の時間を楽しみてぇ。
けど、ミーハの身柄をどうするかってのも、避けては通れねぇ問題だ。
「またチビのじーさんが連れ戻しに来ると思うぞ」
ルナに忠告されりゃ、「だよな」と現実を見るしかねぇ。
ただオレだって、今まで遊んで暮らしてた訳じゃねーし。今度こそ「ミーハにふさわしい」ってじーさんに認めさせてやりてぇと思う。
「よし、じゃあ、王都行って来るか」
フードを外したミーハの頭を、わしゃわしゃとかき混ぜて抱き寄せる。
「オレ、も、じーちゃんに挨拶、する」
気合を入れて宣言するミーハは、相変わらず健気で可愛くて、やっぱ手放せねぇなと思った。
オレとのことも思い出し、苦手ではあるものの、ミーハは一応「転移」も使えるようになったらしい。けどここで問題なのは、「転移」できる距離には限りがあるってことだ。
そういや「転移」に比べて「帰宅」の方が、場所が限定される分、距離制限がないんだって前に誰かから聞いたっけ。
ただまあ「転送」なら王都までは移動できるっつーことで、王都から来た剣士たちは、「転送」で先に王都に送ることになった。
出発は翌日の昼だ。「転送」希望者を町の広場に集めて、「行きます、よー」ってミーハが杖を振り上げる。
ちゃっかりハマー(人間)も、そん中に混じってて、「いいよ~」なんてのんびりミーハに返事してる。
「トランスファー!」
ミーハが呪文を唱えると共に、パアッと広場を覆い尽くす白光。眩しさに閉じた目を開けると、そこには誰もいなくなってて、「転送」が無事成功したのが分かった。
オレとタオとルナとミーハ、それからオレらの馬は、これから一緒に「転移」を繰り返して王都に向かう。
ミーハが言うには、数人で一斉に呪文を唱えることで、足りねぇ距離を補えるんだとか。
魔法使いがいつも複数人で来てたのは、主にこれが原因らしい。
オレはそれよりじーさんによる監視の役目の方がデカいんじゃねーかと思ったけど、今んトコ真相は謎だ。
取り敢えず、砂漠の街を目指して円陣を組み、転移する。
いっそ「帰宅」で王都のシーン本家に戻ればいーんじゃねーかと思ったけど、何度やってもオレんちの前に出ちまうんで、「帰宅」で行くことは諦めた。
シーン本家を「家」だと未だに思えねぇっつーのは、かなり根深い問題だと思うけど、まあオレとしてはあんま悪い気はしねぇ。
「じ、じーちゃんは、優しいんだ、よ?」
フォローするようにミーハが言ってたけど、そりゃあ1度失踪したからであって、厳しかった過去がなくなる訳じゃねーと思う。
でも、「小っちゃい頃、は、添い寝した」とか「この杖、じーちゃん、の」とか、ミーハがじーさんを庇ってたから、それ以上言うのはやめといた。
人を嫌うことがねぇ、素直で純粋なミーハが好きだ。
家に閉じ込められて厳しく英才教育されたこと、ちっとも恨んでねーのがスゲェ。
トラウマに負けずに、魔法をバンバン使える心の強さが眩しくて愛おしい。
「テレポート!」
ミーハの呪文で、4人と3頭が一気に砂漠へと移動する。
「ミーハァ、サソリ食おーぜっ」
陽気に誘うタオに「後にしろ」って言い聞かせんのに苦労した。
っつーか、タオやルナも「転送」でいーだろと思ったけど、「ダメだ一緒だ」つって引き下がってくんなくて、邪魔で仕方ねぇ。
またそれを、ミーハが「一緒、だね」って喜んでんのが、可愛いけど面白くなかった。
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