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18歳以上ですか?
33にしおりをはさみました!
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馬は、泊まった宿で預かって貰うことにした。
「ふえ? なんで?」
ミーハはキョトンとしてたが、デザートライオンに襲われねー為だつったら納得してた。
「そ、そうか、マーちゃん(馬)には危険だもん、ね」
って。
以前なら、オレは馬の安全なんか、そんな気にしなかったんだけどな。でもやっぱ自分の馬だし、ハマーだし、ケガなんかさせたくねーなと思っちまう。
タオやルナの馬も同じく預け、オレ達は夜明けとともに、砂漠の街道にゆっくりと出た。
蛇やサソリじゃねーんだし、デザートライオンは砂の中に潜ったりはしねぇハズだ。周りを見回し、遠くの砂煙に注意してりゃそれでいい。
けど、そうは思ってもやっぱ怖くて、オレはスゲー緊張した。
「おい、力抜けよ。そんなんじゃ剣も抜けねーぞ?」
タオにニヤニヤ笑われながらからかわれたけど、深呼吸したって緊張はそう解けねぇ。
一方のルナやミーハは、全く緊張してねーみてーだった。慣れてんのか?
まあ、そりゃレッドドラゴン相手にするくらいだし、かなりの場数は踏んでんだろうけどさ。
「砂漠も久々だなぁ」
そんな風に余裕の顔で歩いてるルナは、デザートライオンなんか全く怖がってなさそうだ。
ミーハも。
「砂漠と言やぁサボテンステーキだな。あと、サソリの唐揚げ、チビ好きだったろ? 覚えてねーか?」
「うお、唐揚げっ! あ、甘酸っぱいやつ?」
「そうそう、覚えてんじゃねーか」
そんな感じでルナに食いモンの話題振られては、よだれ垂らしそうな顔で笑ってる。
街道を逸れても、2人の会話はそんな調子だった。ルナはのんびりとミーハを構い、ミーハも笑顔で会話してた。
周りに広がんのは、見渡す限りの砂地。
風であおられた砂煙のせいで、視界はクリアって訳じゃねぇ。けど、隠れるところも何もなさそうだから……いきなりモンスターが出たって、すぐに見付けられそうだ。
と、砂煙がヒドくなって来て、ルナがふと立ち止まって言った。
「チビ、『雨』だ。この砂煙、何とかしろ」
その突然の要望に、ミーハはスゲーうろたえた。
「う、え!? む、む、無理です」
要望っつーより無茶振りだ。だって「今」は、『雨』を覚えてねーもんな。
それどころか、水系の魔法で使えんのは、『水球』と『氷弾』と、この間覚えた『氷山』だけだ。火系の魔法を特に気に入ってたミーハは、逆に水系の呪文書を、あんま欲しがんなかった。
「なあなあ、どうせなら『雷雨』でいーじゃん」
タオが能天気に言ったが、ルナに「バカか!」と一蹴される。
「んな魔法使ったら、デザートライオンなんか1ヶ月は近寄んねーぞ。討伐目的なのに追い払ってどうすんだ」
ルナは大声で容赦なく喚き、それからミーハに向き直った。
「ほら、チビ、『雨』」
って。エラそうに促されても、覚えてねー呪文は使えねーっつの。
「無理、です」
ぶんぶんと首を振るミーハに、ルナが言った。
「思い出せよ。虹作ったろ?」
「に、じ……?」
何か特別な思い出でもあるんかな? ミーハがハッと空を見た。
夜明けの空に、虹なんか勿論見えねぇ。空気だって乾いてる。けどそれにも構わず、ミーハは虹を探すように、視線をぐるっと巡らせた。
ハルナが更に言った。
「サソリの唐揚げ食わして貰った店だよ。覚えてねーか? 体が悪くてよ、店の2階で寝たり起きたりの生活送ってたガキに、お前、虹作ってやったじゃねぇか。あれ『雨』だろ?」
なあ? と言われて――。
「虹……唐揚げ……店から木の階段、上った部屋、の……」
ミーハは、遠い遠い目で過去を見て、それからルナを見た。
思い出した、とは口にしなかったけど……代わりに、古い杖を振った。
「スモールレイン」
砂漠の上空には、雲一つねぇ。夜明けの薄明るい空の下、乾いた風の中、さっと霧みてーな雨が降った。
粒の小せぇ、優しい雨。
たちまち、砂煙が治まっていく
『呪文書』なしで、魔法を思い出すなんてこと、あるんだな。
「ふお……」
自分でも信じらんねーって顔で、ミーハがデカい目を見開いた。
ドキンとする。
スゲェ。喜ばしい。幸先いーじゃねーか。この調子でどんどん思い出してくれりゃ、呪文書のせいで破産することもねーし。
ミーハも喜んでるし。
オレだって――。
と、ぼうっと考えた時。
「足元気ィつけろ!」
ルナが鋭く言って、剣を砂に突き刺した。見たこともねぇデカいサソリが、ルナの剣の切っ先に貫かれて、キィキィともがいてる。
なんだそれ、サソリ!?
慌てて足元を見ると、砂を掻き分けるようにして、無数のサソリが見え隠れしてた。
「危ねぇっ!」
剣を抜いて一匹仕留める。でもキリがねーぞ。
これじゃ、毒蛇と一緒だ――そう思った時、ミーハが叫んだ。
「グランドファイヤー!」
ゴウッ。
一瞬にして広がり、サソリごと砂漠を焼き払う炎。
相変わらずスゲー威力だ、けど、ここは山じゃねぇ。火の気の満ちた砂漠、で。
その炎の名残の消えねぇ内に、砂色のモンスターが、のっそりと姿を現した。
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