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「来たぞ」
ルナが、楽しそうに言った。
「チビ、『砂斬刃』だ。ためらうなよっ?」
『砂斬刃』――それもまた、ミーハの知らねぇ魔法だ。
さすがのミーハも「さ……?」と戸惑ってる。そんな状態で、呪文なんか唱えようがねーし。
するとルナが、「はぁっ!?」と驚きの声を上げた。
「え、なに? できねーの!? ……なら、代わりに使える呪文、考えとけよ!?」
言いながらスラッと長剣を抜いたルナは、もう走り出している。
けど、デザートライオンも動きが速ぇ。
一瞬の砂煙。
「うりゃぁーっ!」
ルナの怒声。
ぶんっと長剣が空振んのが見えた。すぐに剣を構え直すルナ。けどモンスターはひらっと身を躱して、一旦ルナの間合いから逃げた。
「ミーハ、『水球』でいい。モンスターの注意を引け」
ルナの方から目を離さず、オレは横に立つミーハの肩を抱いた。
ルナとモンスターがじりじりと動きながら睨み合う。
「ウォーターボール!」
ミーハが水球を放った。
けど、それとほぼ同時に。
「アル、来たぞ!」
タオの鋭い声が聞こえた。
目を凝らすまでもなかった。砂漠には隠れる場所もねぇ。
火の気をカゲロウみてーに揺らめかせ、砂漠の王者が悠々と砂の上を歩いて来る。
元々、群れねぇモンスターだ。おかしいと思った。群れてんじゃねぇ、自然と集まるんだ。――獲物の気配を感じとって。
シャン、と涼やかな音を立てて、「赤い閃光」が双剣を抜く。
オレも続いて剣を抜いた。
ぽつりぽつりと現れてくる、砂色のモンスターは新たに3頭。ルナと戦ってんのを合わせて4頭になんのか。
アレはどうなった? ちらっと視線を向けた途端、視界の端でモンスターが動いた!
振り向きざま剣を構える。速い。デザートライオンがジグザグに飛び跳ねて、アッと思う間もなくジャンプする。
咄嗟に前に飛び、数回前転して振り向くと――今オレの立ってた場所に、ちょうど着地したモンスターが、同じくこっちを振り向いていた。
ルナは、タオは、なんて気にしてる余裕もねぇ。視線も逸らせねぇ。
タオの助言を受けて、長めに変えた剣の剣先が震える。
デザートライオンの開いた口から、ぼわっと火気が立ち上る。
そのすぐ後ろには、ミーハがいて。泣きそうに顔を歪めながら、愛用の古い杖を構えていた。
ミーハ……。
オレを助けようとしてんのか?
でもその距離はヤベェ。ヤツがオレに気ィ取られてっからいーけど、振り向かれたらおしまいだぞ?
はあ、と息を吐く。目の前のモンスターも、ぐっと前足に力を入れた。
――来る。
と、そう思った時!
「グレイトフリーズ!」
ピシッ!
ミーハの声と共に高い音がして――目の前のデザートライオンが、巨大な氷の中に封じ込まれた。
やった、と思った。
ワイルダーベアで何回練習してもできなかった、『氷山』の実戦使用。それが、ここへ来てできたんだ、って。
成功だな、って。
「はっ……」
強張ってたのが破顔する。唇が笑みに歪む。
ミーハはっつーと、成功が自分でも意外だったんか、口をぽかんと開けてぼうっとしてた。
「おし、この調子で残りも……」
片付けるぞ、と、でもその続きは言えなかった。
ビキッ! モンスターを封じた氷に亀裂が入る。しまった、と思う間もなく、氷が粉々に砕け散る。
パン、て音と共に、キラキラと氷粒が舞って。その光景を目に焼き付ける余裕もねぇまま、オレは剣を構えて駆け出した。
「やああああっ!」
気合と共に、踏み込んで突く! 躱される。突く! 腕を振り上げる! 視界が砂色の毛皮に覆われる。
恐怖か闘志か、もう分かんねぇ。同じモンかも知んねぇ。ただ、夢中で。
「はああーっ!」
オレは叫びながら、目を見開いて、剣を振るう事に集中した。
狙うのは、急所。腹、胸、できればノド。
モンスターの太い前足、鋭い爪、狂暴な大あごを躱しまくりながら、急所が見えるまでひたすら耐える。
空が明るくなってくる。
そろそろタイムリミットか?
オレから目線を逸らさねーまま、焦れたように、モンスターが首を振った。その一瞬、ノドが見えて――今だ!
「くらえ!」
オレはモンスターの大あごの前、鋭い牙の間近へと踏み込んで、剣を全力で突き出した。
痛みのせいか、デザートライオンが目の前で吠えた。
グオァッ! 容赦ねぇ勢いで、ぶわっと火気が吐かれる。熱ぃ! けど、剣を離す訳にいかねぇ。
「ああああああっ!」
叫びながらもう1歩踏み込み、力任せに剣を捻じり込む。と――。
グオオォァ……ン。
耳元に、モンスターの断末魔の声が届いた。同時に、力を失った巨体が、オレの上にのしかかって来る。
うわ、つぶされる!? とんでもねぇ予感に一瞬、身を縮めた直後。
「クソガキ、大丈夫か?」
そんなバカデカイ大声と共に、モンスターの巨体が蹴り飛ばされた。
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