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まともに剣が振れるようになるまで、1ヶ月以上かかっちまった。
さすがにスゲー気がはやったけど、でも焦っても仕方ねーし、我慢するしかなかった。
薬草採ったり、河原に石拾いに行ったり、とにかく簡単でも仕事しながら体を動かし、じりじりと回復を待つ。
左肩の痛みが無くなった後は、タオに連れられて荒れ野や高地まで足を運んだ。
デザートライオンを見た後だと、ワイルダーベアもハイランダーウルフも、なんか動きがノロく感じる。我ながらゲンキンだよな。
からかわれんの承知でタオに言うと、意外にも「当たり前じゃん?」って言われた。
「経験値増えてるってコトだろ。レベルも上がるって」
剣士としてのレベルが上がったとか――天才剣士に言われてもイヤミにしか聞こえねーけど、ここは素直に「そういうもんか」って納得したフリでうなずいとく。
少なくともタオは、下手なお世辞でヨイショするようなヤツじゃねーし、無意味なウソをつき通せるほど器用でもねぇ。
まあ、要はバカだってことだけど……バカなだけに信用できた。
防具を買ってくれたんだって、純粋にオレを心配してのことだって分かってる。
なのに。
「ごめん、オレがおせっかいで、余計なモン買って来ちまったから」
タオはそう言って、オレにアーマーのことを謝った。
ずっと防具なしでやって来たんだから、あん時もそうするべきだったんだ、って。
「んなことねーよ、お前のせいじゃねーだろ」
オレは勿論反論したけど、タオは神妙な顔で首を振った。
「んなことあるんだよ。自分じゃ気付いてねーだけだ。お前、あん時多分『アーマーがあるから』って、つい過信しちまったんだ。いつもなら咄嗟にかわすハズの攻撃を、アーマー頼りにして受けちまった。だろ?」
だろ? と言われても、よく分かんねぇ。
確かにこんなケガすんのは初めてだから、無意識に頼っちまったってのも、理由の1つではあるんだろう。
けど、断じてそれだけが原因じゃねーし。
つーか、オレが未熟だからってのが1番の理由だし。タオが謝る必要なんて、やっぱどこにもねぇと思った。
肝心のアーマーは、っつったら、勿論修理不可能でスクラップ行きだった。
無茶苦茶に壊れたモンを直すより、新品作らせた方がはるかに安上がりなんだそうで、当分は防具なしで過ごすしかなさそうだ。
武器や防具を新調するより、今は金を貯めときてぇ。――首都の宿屋で、1日でも長く滞在できるようにするために。
タオも、「それがいーんじゃねぇ?」つってた。
ルナんちに泊まれりゃ助かるけど、そう何日もは迷惑だろうし。やっぱ、金はあった方がいーよな。
デザートライオンの討伐報酬は、歩合制で分けたみてーだ。内訳は知らねーけど、金貨30枚を貰った。
それは使わず、一応大事にとってある。
ミーハのじーさんからっつー金も、退院して以降は使ってねぇ。
「口止め料みてーなもんだ」ってルナは言ってたけど、オレが直接聞いた訳じゃねーし、こればっかりは信じきれねぇ。
いつか全額突っ返してやるためにも、入院費以上は使いたくなかった。
出立は早朝にした。
いつ帰れっか分かんねーから、戸締りは厳重にして、火の始末もきちんとつけた。
今度帰る時は、ミーハも一緒だ。
そしたら……「ただいま」と「お帰り」を同時に言おう。
ひと気のねぇ薄暗い部屋に、「行って来る」と告げて戸を閉める。
流行病で両親を一度に亡くした時だって、こんな淋しくはならなかったのに。ミーハがいねぇと生きて行けねぇ。
二度とひとりには戻りたくなかった。
ハマー(馬)の背に乗り、タオと連れ立って、まず向かうのは高地だ。
「ハイランダーウルフは砂漠の町まで持ってった方が高く売れる」
居酒屋でこの話を聞いた時、ふと思い出したのは初めて会った時のルナのことだ。アイツ、ハイランダーウルフを倒した後、肩に担いでどっかに持ってっちまったよな。
どこに持ってたんだと思ってたけど……馬で砂漠まで売り飛ばしに行ったんだと思うと、なんか信ぴょう性があった。
仮にデマでも、高く売れる事には変わりねーし。
「よーし、いっぱい仕留めよーぜ」
陽気に言い放つタオは、相変わらずやる気満々だ。
「いや、いっぱい仕留めても運べねーっつの。1頭ずつな」
「そーか、ミーハがいねーもんな」
あっけらかんと返され、一瞬黙る、けど。
「ああ、今はな」
そう言い返すと、その返事を待ってたみて―で、ニヤッと笑われた。
今はいねーだけだ、またすぐ一緒に狩りに行ける。タオもそう信じてくれてるみてーで、今のオレには何より心強かった。
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