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砂漠の街まで行けば、ハイランダーウルフは確かに高値で売れたけど、そこまで運ぶのが簡単じゃなかった。
ルナが軽々と担いでたから、つい簡単に思っちまったんだよな、タオもオレも。
「怪力バカにできるからって、オレらにできるとは限んねーんだな。力仕事限定だけど」
げっそりとした様子で憎々しげに言ったのは、タオだ。
けど、主に運んだのはオレだっつの。そんで更にぐったりなのは、オレとモンスターを運ばされたハマー(馬)だ。
ホントなら、砂漠の街には1泊だけして朝出発する予定だったけど、仕方ねーんでもう1泊して、丸1日休ませてやることにした。
砂漠の街は、やっぱどうしてもミーハのコト思い出しちまうから、あんま長居はしたくなかったんだけど仕方ねぇ。割り切って翌日、逆に思い出のある場所を巡って見た。
まず出向いたのは、世話になった診療所だ。
手ぶらも何だからと思って、市場で果物を買ってった。
「先月はお世話になりました」
礼を言うと、治療師のオバサンはよく覚えてくれてて、気さくに回復具合を聞いてくれた。
「わざわざ礼をしに来たの?」
驚いたように言われて、照れ隠しに「いや、実は……」とハマー(馬)の話をすると、果物の礼だっつって、回復薬をくれた。
目からウロコだった。そうか、動物にもこういうアイテムってあるんだな。
ハマー(人間)に貰うまで、馬なんか飼ったことなかったし。借りて乗ることはあっても世話した覚えはなかったから、知らなかった。
さっそく宿に戻って、エサに回復薬を混ぜてやった。タオの馬にも。2頭とも元気なさそうだったけど、これで明日には回復してくれんだろ。
……そう思うと、ちょっと気が楽になった。
それからサソリの唐揚げも食いに行った。
あん時は、なんでわざわざサソリなんかと思ったけど、やっぱここに来たら、肉よりサソリだな、と思う。
肉料理は自分とこの町でもどこでも食えるけど、サソリの唐揚げもサボテンステーキも、ここでしか食えねーもんな。
今度は、タオも一緒だ。
「なんだよ、オレは肉の方が……」
つってたけど、前にルナにされたみてーに、「いーから」つって連れてった。
そんで、やっぱ同じようにしてあの店を探した。
1ヶ月前に行ったばかりだったから、まだ道順を覚えてて迷うことは無かった。
店の看板が見えて来ると、あの甘酸っぱいいい匂いが漂って来て……ミーハの声も、ふと脳裏によみがえった。
『から、あげっ』
そう言って、顔を輝かせたミーハ。
店の場所は曖昧だったくせに、ニオイはしっかり覚えてたよな。
「サソリの唐揚げ、2人前」
注文して、そういや素揚げも食ったよな、と思い出す。いや別に、食いてーって訳じゃなかったけど。
前に来た時と時間帯は違うけど、やっぱそこそこ繁盛してるみてーで、店内はざわざわと賑やかだった。
探すまでもなく、2階への階段も目に入った。
そこへ上がってくミーハの残像を見た気がして、ぶんっと首を振る。
ミーハはここにはいねぇ。首都だ。
迎えに行って、じーさん説得して、必ず一緒に連れて帰る。
「今度はミーハも一緒に来ようぜ!」
タオが、見透かしたようにニカッと笑った。
「おお、絶対な」
誓うように言い切って、思い出のサソリをジャクッと食う。相変わらず甘酸っぱくて、肉にも合いそうな味だった。
メシ食った後は、それぞれ別行動することにした。
まあ、異論はねぇ。タオは古くからのダチだけど、恋人じゃねーんだし。ミーハみてーにずっと一緒に歩きてぇとは思わねぇ。
「夕メシは肉にしようぜ」
そう言って、タオは軽快に走ってった。
夕メシの時間まではまだまだあるから、ぶらぶらと市場や露店を覗いて回る。
特に目的があった訳じゃねーけど、何か便利な道具でもあれば買おうかくらいには思ってた。
ミーハがいねーから、火を起こすんだって道具使わなきゃなんねーし。薬草だって用意しとかなきゃヤベェ。
首都まで同行してくれそうなフリーの魔法使いも、探せばいたかも知んねーけど、オレはミーハ以外と組む気にはなれなかった。
タオも多分、その辺は分かってくれてんだろうと思う。別の魔法使いを……って話は、一度も出たことはねぇ。
この先、魔法がねーと色々不便かも知んねーけど、去年まではそんな感じだったんだし。なんとか魔法なしでもやれるだろう。
火起こし用の火縄を入れる容器とか、保存のきく乾燥薬、携帯食なんかの店を冷やかしつつ歩いてる内に、のどが渇いてきた。
目についた食堂にふらっと入り、軽く食えるパンとサボテンジュースを頼んで一息つく。
「いらっしゃいませ、ごゆっくりどうぞー」
赤っぽい長い髪を後ろで束ねた店員の女が、そう言ってテーブルにジュースの入ったジョッキをゴトンと置いた。
ふと赤いモノが目の前をよぎって、えっ、と思う。
店員の右手には、ミーハにやったのとそっくりの、ルビーのブレスレットが光ってた。
一瞬、ちっと舌打ちしそうになったのは、単純に不愉快だったからだ。
ミーハにやった恋人の証の、銀とルビーのブレスレット。あれはオレが特注した、オレだけのデザインのハズだ。
世界に1個しかねぇ、オレとミーハだけの特別なアクセサリーのつもりだった。
なのに、似たようなモノを他人が身に着けてるとか……気に食わねぇ。
……まさか、量産品とかじゃねーよな?
つーか、同じ店で買ったとかじゃねーよな?
気になったけど、後からパンを持って来た店員は違う女だった。わざわざ呼んで貰ってまで確かめる気にもならなくて、ちょっとモヤッとはしたけど、頭を振って忘れてしまうことにする。
世界に1つだけのデザインじゃなくても――オレの拾ったルビーをミーハが研磨したってことには変わりねーし。
ミーハだって喜んでたんだから、それでいいか、と今は納得するしかなかった。
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