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「3ヶ月お疲れ~。どう?これからも働かない?」
「いえ。今回も琳くんに言われたから来ただけなので。」
「残念だね。ま、気が変わったらいつでも働きに来てよ。じゃあありがとう、また会えることを期待してるよ」
「きっともう会わないでしょうさようなら。」
やっと。
やっとだ。
俺の人生の中で最もクソみたいな生活がやっと終わった。
明日には琳くんに会える。1ヶ月が過ぎた頃に連絡してこなくていいと拒否されてから声すら聞けなかった。
夜が空けるまでの時間が酷くもどかしくて中々寝付けなかった。
それでもやっと身体を売る生活が終わったことへの安堵と疲れが溜まっていたことからいつの間にか俺は眠りについていた。
朝起きた時からなんだか世界が変わったように感じた。
やっと今日琳くんに会えるのだ。彼に会いに行ける。声を聞ける。それだけの為に今まで頑張って来たのだ。
上機嫌なのが隠しきれないまま家を飛び出し、途中で琳くんの好きなお菓子や飲み物を手当り次第買い揃えた。
アジトが近づくにつれ足が早くなる。
目に見えた時には知らず走り出していた。自分の荒い息遣いが路地に木霊する。
バタバタと足音を立てながら必死に走る。
火照った頬が彼に会える喜びを表している。
勢いよく開いたその先に愛しい彼がいる。そう思うだけで頬が緩んだ。
「琳くん!」
走ってきた勢いのまま開いた扉の先にはいつものようにメンバーが居た。けれど彼らはいつものようにニヤニヤと俺を嘲笑うような笑みを浮かべてはいなかった。
それどころか俺の姿を認識すると驚いたように目を見開き可哀想なものを見るような目を向けてきた。
「……おいクソ優杏。ちょっとこっちこい。」
「は?俺は琳くんに会いに、」
「いいから!!」
「……なんだよ」
珍しく真剣な表情の矢巾──側近の1人──に何故だか分からないが嫌な予感がした。
「……お前もうここに来ない方がいい」
「……………………はぁ!?何言ってんの!?意味わかんねー」
「俺はお前のために言ってやってんだよ!!」
「は?俺のため?お前が?なんの冗談だよ。」
熱でもあんのか?と心配してやっても矢巾はもどかしそうな顔をするだけで何かに悩んでいるようだった。
そして俺が手に持ってる大きな袋をようやく認識したのか中身を問うてきた。
だから正直に琳くんの好きな物を買ってきた、と答えるとまたしても哀れんだ目で見てきた。なんだと言うのだろうか。
「てか、俺は琳くんに会いにきたんだ。お前と話したいわけじゃない。」
「あ、おい!!」
まだ何か悩んでいるふうだった矢巾の横を通り抜け愛しい彼の部屋へと向かう。
「琳くん!!ひさし、ぶ……り…………え?」
自分の緩みきった頬が一瞬で固まったのが分かった。
愛しい彼の隣に見たことの無い人がいたのだ。それだけならまだ俺がいない間にお気に入りが出来たのだろうと思うだけだろう。
だがそいつは琳くんと同じ髪色の男だった。
琳くんは誰にも同じ髪色にすることを許さなかった。琳くんが気まぐれに髪色を変える度メンバーも同時に髪を変えさせられた。それほど髪色に拘っていた。
それなのに。
彼の隣にいるそいつは琳くんと同じ髪色をしていたのだ。
「おー、ゆず久しぶりだな。」
「えっと、初めましてだな。……なんかお前は荒っぽくなさそうだな。珍しく。」
「おいなんだよ珍しくって。」
「だって琳の周りの奴ら全員怖そうじゃん」
なんだこれは。
なんなんだこれは。
琳くんの特別を多く持ちながら何故琳くんにそのような口を聞ける?もっと琳くんは敬うべき人間だろう?
「あ、てかこいつが変わってくれたんだよ。風俗。」
「え、まじ!?それ早く言えよ!!ほんとごめんな……?慣れてるとは聞いたけどやっぱ嫌だっただろ?ほんとごめん……そしてありがとう」
「は……?ぇ、……なんの、こと……てか誰……?」
風俗?代わり?慣れてる?
無駄に出来の良い頭はそれが何を意味するかなんとなく分かっていた。ただどうしても認めたくなかった。それを理解してしまったら何かが壊れる気がした。
「こいつは龍太。俺の彼氏」
絶望とはこういうことを言うのかと頭のどこかで思った。
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