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千里が…、…好きやねんにしおりをはさみました!
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千里が…、…好きやねん
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埃っぽい室内。
離れた校舎の一角にあるその教室は、今は使われてないらしくカーテンも日に焼けたまんま黄ばんでた。
廊下の突き当たり、階段は入って来るとこに一個しかないから、そこの教室には用がない限り誰かが近付くゆう事もなくて。
つまり、邪魔が入る可能性がゼロに近い場所。
そこに入ってから、多分五分くらい経ったと思う。
千里は促す事も催促する事もなく、ドアにもたれたまま足先に視線を落としてる。
俺は何から話そうって、ぐちゃぐちゃの頭ん中を必死で整理中やった。
締め切られたカーテンの隙間から差し込む光。
俺と千里が侵入した事で舞い始めた埃。
さっきからひっきりなしに震えてる携帯。
どれもが鬱陶しくて俺をイラつかせる。
落ち着かんの。
何回深呼吸してもおっつかへん。
顔は見れんし、目のやり場もまだ定まってへん。
話ししたいゆうたはえぇけど、何の準備もできてへんねん。
腹はくくったけど、最初の言葉がなかなか出てこんかった。
だんまりな状況の中、先にしびれを切らしたんは千里。
名前を呼ばれて、肩が波打った。
「話って、なん?」
「あ、うん、えっとな…、えっと、俺…、」
「何でそんなビクついてんの?普通に話したらえぇやん」
柔らかいその声に、俺はやっと千里の方へ目を向けた。
ちょっとだけ笑て真っ直ぐ俺を見るその姿に、くくったはずの腹が迷いを見せる。
もしちごてたら、その顔は一気に険しなるん。
何ゆうてんのって、軽蔑されるかもしれん。
どうしよう。
気持ちは隠したまま、まずは誤解だけ解いてまおか。
キモイゆうたんは嘘やでって、ほんまはそんなん全然思てないんやでって。
けど切り出し方は?
あん時聞いてなかったとしたら、何の事ゆうてん、でしまいや。
あかん。
どうしよう。
何ゆうたらえぇの…。
「サスケ?」
「ごめん…、話しとか、ほんまは何ゆうか決まってないん…」
「なんそれ」
「なぁ、ほんまにもう俺らとは一緒におれんの?」
何でとか、理由はとかは聞けん。
病んでる時の発作やったら、答えてくれるはずがないから。
待つしかないん。
けど原因が俺やったら、俺がなんとかせなあかん。
もうえぇ。
ちごてもえぇ。
千里が戻ってこれる状況をちょっとでも作りたい。
戻ってこれん原因をちょっとでも取り除きたい。
もうゆうてまう。
不愉快にさしてもうたら堪忍やで。
そん時は俺が輪から抜けるから。
手で握り拳を作る。
離れた距離をゆっくり縮めて、潤みそうになる目に力を入れた。
「千里」
「ん?」
「あんな、俺…、もうゆうてまうけど、」
「泣きそう」
「は?」
「泣きそうな顔。何で?」
「別にっ…、泣きそうちゃうし、そんなんどうでもえぇやん」
「ごめん。で?何やった」
腹立つわ。
何で話の腰折るような真似しよるん。
あほ。
そら泣きそうにもなるやろ。
こっちは拒絶覚悟やねん。
けどほんまはそうなったら辛いん。
もういやや。
タイミングなくしてもうた。
「サスケ?」
「あほっ!黙っとけや、人が大事な事ゆおうとしてんのに、千里のあほっ!」
「なに怒ってん?大事な事てなに?」
「もうえぇっ!またにする!」
またとかないかも知れんのに、緊張しすぎておかしなった俺は、怒るゆう手段で逃げに走ってもうた。
またもやチャンスを逃す。
悔しくて背中を向けた。
泣いてるとこ見られたなかったから。
勝手な理由で勝手にキレてもうた事を段々後悔し始めた時、身体が懐かしい体温を拾った。
あまりの出来事に、一瞬意識が飛ぶ。
「なに泣いてんの?俺のせい?」
「…ちゃう、千里は何も…っ、」
息が詰まる。
うまく声が出ん。
前みたいにやめぇって拒否る事なんか、今の俺には絶対できんくて。
回されたその腕を、遠慮がちに小さく掴んだ。
「千里…」
「ん」
「好きや…」
ムリやった。
もう抑えがきかんかった。
一杯になった想いが、溢れて勝手に口から零れてくる。
とまらん。
もうとまらんよ。
「好きなん、千里が…、…好きやねん」
ほうっと力が抜けた。
ガチガチに固めてしまい込んであった気持ちがやっと解放される。
けど楽になったんは一瞬だけで、ゆうてもうてすぐ、イヤな汗が背中に滲み出た。
黙り込む千里に恐怖心とか焦燥心とか色んなもんが芽生える。
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