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「…家のために、自分を捨てると??」
紅貴の切り返しに、遠瀬院は顎に人差し指を添え、小首を傾げた。
「う~んと、少し違います。私が紅貴様と幸せになるだけで、今までお世話になった遠瀬院家のみんなも笑顔になる。…とてもよい話だと思いましたの。」
それから遠瀬院は、紅貴に意見を問う。
「…紅貴様は??今回の婚約の話をどう思ってらっしゃるの??」
自分に返ってくるとは思ってもいなかったのか。紅貴が料理をさばく手がぎこちなくなる。
「…その、すまないが私は君のようにたくさんは考えてこなかった。実感がないんだ。会社だってまだ継いでいなくて父のものだし、結婚生活という言葉も…私には遠すぎる。」
わかりますわ、と遠瀬院は紅貴に賛同を示した。
「なかなか実感がわかないものですわよね、こういうものって。私達はまだ十七で、義務教育すら終えていないのですもの。」
ただ、と一端握っていた道具を置いて、紅貴は真摯な面持ちで遠瀬院に向き直る。
「君の姿勢が素晴らしいのはわかる。君は、家も自分も大事にしたいと望んでいる。しっかりと前を向いて、ブレない。君の考えに私も感化されそうだ。」
「あら、いい刺激になると嬉しいですね。」
時折横道にそれて喋りつつ、絶品の料理を二人で堪能する。主人の背後で、漆はゆるりと双眸を眇めた。
紅貴は遠瀬院と片腕を絡め、レストランの入り口まで導く。自動ドアを一歩潜ったとところで、谷ヶ崎家次期当主は閃いた。
「…そうだ、紗千香様。どうです、次は私と外にお出かけしてみませんか??例えば…。」
屋敷の近くを散歩でも、と言いたかったが、遠瀬院がぽんと手を打って紅潮した頬で遮る。
「素敵!!次回は紅貴様とデートだなんて!!」
予期せぬ先手を打たれ、紅貴は面食らう。
「…で、デートですか??」
思い込んだら真っ直ぐタイプらしい遠瀬院は片頬に手を添えて、恍惚と呟く。
「ふふっ。殿方にエスコートしてもらってデートだなんて、初めてだわ。」
「…。」
楽しげな遠瀬院を前に、いや自分が提案したかったのはデートではなくただの散歩です、と言い出しづらくなり、紅貴は虚しくも押し黙る。
「期待しておりますわ、紅貴様。」
それでも花が咲くような可憐な遠瀬院の笑顔に、漢・紅貴はぎこちない愛想笑いを顔に張りつけて、大きく頷いた。
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