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脅迫状パニック!④-1にしおりをはさみました!
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脅迫状パニック!④-1
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「凛さん、お疲れ様です!演技、すっごく良かったですよ!」
本日の撮影が終わり、楽屋に現れた敦士が興奮して言い募る。
「そう?良かった」
とりあえず、共演者やスタッフさん達にど下手くそ演技を見せるという醜態は見せずに済んだらしい。
メンバー皆に感謝だな!
「喉乾きましたよね?……あれ?いつものお茶が切れてますね。おれ、ちょっと買ってきます!」
おれはルイボスティーが好きでよく飲んでるんだけど、今日に限って楽屋にそれが置いていない。
……あ、ドラマのスタッフさんだからいつもと違うんだな。
こんな所でも、いつものと勝手の違いを感じるなー。
おれは「別に他のお茶でいいよ」と言おうとしたけど、既に敦士は外に走り出て行ってしまった。
まあ、ここは素直に厚意を受けとこう。
ふとテーブルを見ると、『AshurA LIN様へ』という手紙が置いてある。
ーーファンレターかな?
それとも監督からのメッセージ?
おれは、なんの気無しにその封筒を開けようとした。
……瞬間、指先にピリッとした痛みが走る。
ーー?
おれは驚いて指先を見ると、ジワリと指から鮮血が出ているのが分かる。
その鮮血はぷくりと膨れると、やがてあふれるようにぽたりぽたりと指先を流れて落ちた。
「え?」
おれは、訳がわからずに指から流れ落ちる血をボーッと眺めていると、自販機から戻った敦士が声をかける。
「凛さん~遅くなりました!ルイボスティーありました……って!手!どうしたんですか?!」
敦士はルイボスティーを乱暴に置くと、おれの方へ走り寄る。
「あ、いや……おれもわかんなくて……」
敦士はおれの手を取ると、ティッシュで指を包んで止血をする。
「とりあえず止血をしてください!」
言われるがままに指を押さえると、真剣な目の敦士と視線がぶつかる。
「……何があったんです?」
「えと……手紙が…置いてあったから、それを開いたら……突然こうなってた」
敦士はおれの言葉に、反対の手に持っていた手紙をそっと受け取ると、ゆっくりと封筒を開ける。
と、封筒の口の部分にキラリと光る何かが貼り付けてあった。
「……カッターの刃……」
何も知らずに手で封筒の口を開けようとすると、必然的に指を傷つける角度で、それは貼られていた。
おれは、サァと血の気が引くのを感じる。
「敦士、大丈夫か?!」
「おれは、大丈夫です……」
敦士はその瞳を少しだけ細めると、慎重にその手紙を置いた。
「凛さん。この手紙、どうしたんです?」
「おれがセットから帰ってきて…楽屋に戻ったら置いてあった、多分」
「そうですか……」
「中には?何か入ってたのか?」
「……凛さんは見ない方が良いです」
「なんでだよ」
「良い内容なわけがないからですよ」
「……ここまでされたんだ、見たい!」
おれはそう言うと、敦士が置いた手紙を手に取る。
「あ!凛さん!」
おれは敦士に手紙を取り返されないように素早く、しかし慎重に手紙を開くと、中身を取り出した。
『LIN どラまノ 出演ヲ やメろ さモなけレバ 殺ス』
「ーー?!」
中に入っていたのは、新聞や雑誌を切り抜いて紙に貼り付けた、典型的な脅迫状だ。
おれは、ぞくりと背中に冷たい電流が流れるのを感じる。
「凛さん!」
敦士に名前を呼ばれ、おれはハッと我に返った。
「あ……ごめ…ちょっと驚いて……」
「……そりゃ、そうですよ。大丈夫なわけないです」
敦士はそう言うと、おれの手から手紙を取る。
「……ちょっと、監督さんたちとお話ししてきます。凛さん、一人で大丈夫ですか?」
「うん…大丈夫」
おれはカラカラになった喉を潤そうとルイボスティーのペットボトルを手に取る。
しかし、手が震えて蓋が開かない。
敦士は無言でおれからペットボトルを受け取り、その蓋を開けると優しく手渡した。
「……まず、先に手当てしましょう。血は止まりましたか?」
「あ、多分……」
渡されたティッシュはかなり血が出たらしく真っ赤く染まっていたが、なんとか血は止まったらしい。
敦士は楽屋の奥から救急箱を取り出すと、手早く消毒をし、滅菌ガーゼを巻き、テープで止めた。
そのまま丁寧に包帯を巻く。
「痛みますか?」
「いや、大丈夫」
敦士はそう言うとおれの指を撫ぜる。
「すみません……おれがちゃんとチェックしてれば……」
「いや、おれが勝手に見たのが悪い。……いつも、敦士達はこんな手紙の処理してくれてたんだな……」
おれ、何も知らなかった。
おれたちの代わりに、誰かが怪我してたりしたかもしれないんだな…。
落ち込むおれに、敦士がおれの手を握る。
「凛さんは何も悪くありません!そもそも、AshurAの皆さんにはこういう類の手紙はほとんど来ないんです」
そう言うと、敦士はおれの治療の済んだ指に軽く口付けた。
ーーえ?!
なにしてんの敦士?!
おれの焦りをよそに、敦士は颯爽と立ち上がると楽屋を出ていく。
「凛さん。おれが帰ってくるまで、楽屋の鍵開けないで待っててくださいね」
「あ、ああ……」
そう言うと、敦士は楽屋を出ていく。
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