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脅迫状パニック!⑤-1にしおりをはさみました!
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脅迫状パニック!⑤-1
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「急に押しかけて悪いな」
おれは優の部屋のシャワーから出てきて、改めてそう言う。
「いや、いいよ。凛ならいつ来ても大歓迎だから」
優の使ってるシャンプー、いい匂いがするな。
ていうか、匂いがお揃いだ。
「……」
「なに?どうしたの?」
優の言葉に、おれは何の気無しに思った事を言う。
「優とおれ、今同じ匂いだなーって思って」
「……っ!おまえは、本当に……」
優は「はぁ」と額を押さえると、じっとりとした目でおれを見る。
え、なんかダメなこと言った?
「凛は、自覚なさすぎ」
そう言うと、優はおれの頭にかかったバスタオルでゴシゴシとおれの髪を拭く。
おれはなすがままにされていると、しばらくして優がバスタオルを取り上げだ。
おお、ほとんど乾いてる!
優はバスタオルを洗濯籠に放り込むと、おれの横のソファに座る。
「で、撮影はどうだった?」
「皆のおかげで順調だった!……けど」
「うん。その指の怪我の理由は?」
うっ……やっぱり優は目敏い……。
優はすでに用意してあった救急箱から消毒薬と軟膏を出し、風呂場で濡れてしまったガーゼと包帯を外し、消毒を施す。
うっ……ちょっと染みる。
消毒後は抗生剤の軟膏を少しだけ塗ると、ガーゼを当てて、同じように包帯を巻いていった。
「はい、終わり」
「さんきゅ」
「……で?」
「うん、実はさ……」
おれは、今日楽屋であった出来事を話す。
「ーーは?剃刀レター?」
「うん」
おれは優の言葉に頷くと溜息をついた。
見れば、優はおれ以上にその瞳に怒りを乗せている。
「なにそれ。しかも脅迫状?」
おれは、優に言われてあの時のぞくりとする恐怖を思い出していた。
「ーーうん」
おれは頭をかくと優に苦笑いをしてみせる。
「ちょっと流石に今日は一人でいる気分じゃ無くて、押しかけた。ごめんな」
「当たり前だよ!……むしろ、おれを頼ってくれて嬉しい」
優はそう言うと、その長い指でおれの頬を撫ぜる。
「なんなら、しばらくうちに泊まって行きなよ。凛のマンションのセキュリティが悪いとは思ってないけど、局の楽屋まで入ってくるヤツだし…万が一の事があるといけないから、一人でいない方がいいと思う」
優の言葉に、おれは少し考える。
確かに一人でいるのは少しだけ怖いと思ってたから、ありがたい。
「うん、ありがと。優が邪魔じゃなければお邪魔しちゃおうかな…」
「よし、決まりだな」
優はにっと笑うとグラスに飲み物を用意する。
「シャワー浴びて喉乾いたろ」
「うん。緊張もしたしなー」
「演技は上手くいったんでしょ?」
優はグラスにペリエを注ぎながらおれに視線をやる。
「うん。敦士を待ってる間に拓海さんに本読みまで付き合って貰っちゃってさ。俳優って凄いなぁ。第二回のラストシーンでキスシーンがあるんだけどさ、そのシーンなんて本気でキスされるかと思っ……」
「は?!キスシーン?」
ドン、と持っていたグラスをテーブルに置くと、優はおれを見据える。
「うん。キスシーン……っておれ、恥ずかしながら何気にファーストキスなんだよなぁ」
「はぁ?!」
ちょっと、そんな目をしないでくれ!
おれは芸能人だから、フライデーとか気にして彼女とか作らなかったんだよ!
言っておくけど、別にモテないとかじゃないよ?多分……。
この歳でキス未経験とか可哀想な子みたいな視線はやめてくれ、悲しくなる……。
優はそんなおれの思考をよそに、何かを思案していた。
「おーい、優……そんな呆れないでよ」
「ねえ、凛」
「え、何?」
「撮影がファーストキスとか悲しくない?」
あー、まあ、それはそうね。
ネタにはなるかもしれないけど、思い出?にはならんな……。
「確かに」
おれの言葉を待たずに、優は突然おれの頬に指をかける。
「?」
おれが優の目を見ると、その強い視線とぶつかる。
「優ーー」
おれの言葉を塞ぐように、不意に優の唇がおれの唇を塞いだ。
「ーー?!」
おれのパニックをよそに、優はおれの唇を啄むようにキスを続ける。
唇の角度を変え揺さぶられると、その隙間から舌を侵入させ、歯列を這わせる。
「……っは」
ぞくりと背中に甘い電流が流れ、おれは思わず声を漏らした。
「……っ優」
優はそれには答えず、さらに深くキスを続ける。
舌を吸い上げ、絡めて甘噛みした。
なんなの、イケメンなんでキスまで上手いの?!
反則じゃない?!
おれは、あまりの気持ちよさに頭の中が蕩けそうになりながら、隙間隙間に必死で息をする。
いつのまにか、ソファーに覆い被さるような体勢でキスをされているおれは優のシャツをギュッと掴んだ。
ギ、ギブ……!
これ以上されたら腰が抜ける……!!
おれはトントンと優の胸を叩くとぐいと押し返した。
優は、それを見て最後にチュッとリップ音をさせて唇を離す。
「……っは。なんてエロい顔してるの、凛」
「なっ……おまえがエロいキスするからでしょ?!」
おれは余裕の優が悔しくて、頬を膨らませる。
「……どうだった?ファーストキス」
どうだったって?
「悔しいけど、すげー気持ちよかったわ!」
ていうか、なんでおれのファーストキス優に奪われてんだよ!
「ふうん。じゃ、もう一回する?」
「は?!なんでそうなるんだよ」
「だって気持ちよかったんでしょ?」
「それとこれとは話が違うだろ!」
「なんだ、残念」
くそう、おまえにとってはお遊びかもしれないけど、おれにとっては心臓バクバクなんだぞ!
まったく、イケメンは心臓に悪い……!
「ああもう、早くイベントクリアしに行くぞ!」
「はいはい、怒らないでよー」
優はそう言うと、笑ってスマホを取り出す。
「ところで凛、その指でゲーム出来るの?」
「……あ」
結局、その日はイベントをする事もなく、そのまま眠ったのであった……。
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