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脅迫状パニック!⑫-1にしおりをはさみました!
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脅迫状パニック!⑫-1
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長い眠りから目が覚めると、そこは見慣れない真っ白な天井だった。
おれは視線を彷徨わせると、まだ動き辛い首を回して周りを見渡す。
ーーここは?
「あっ!凛!気がついた?!」
おれの動きに気が付いた翔太がおれに駆け寄ってきた。
「ーーここ、は」
「ここは病院だよ。凛は急性アルコール中毒になって、入院になった」
おれは言われて、なるほどと合点した。
よく見ればおれの腕にも点滴がつながれている。
「よかった、意識を取り戻して……」
「凛、とりあえず無理しないで今は休むんだ」
「……あいつは……」
おれは、思い出すだけで吐きそうになりながらも、そう聞く。
「大丈夫です。捕まりました。警察に引き渡してあります。あの男の部屋のパソコンから、うちに送られたものと思われる脅迫状のデータが出てきましたし、先日スタジオに荷物を持って現れた時の防犯カメラの人物像とも一致しました。あの男はこのスタジオに出入りしているロケ弁の業者だったようで、スタジオに出入りする顔もきいたようです」
敦士はそう言うと、おれのベッドに近づき、深々と頭を下げた。
「凛さん……すみません……おれが守るとか言いながら……結局凛さんを危険に晒してしまった……」
その顔は後悔と自分への怒りに溢れている。
おれは首を振ると、点滴の繋がれていない方の手で敦士の手を握った。
「……敦士の所為じゃない」
敦士はそれでもその唇を噛みしめて、自分自身を許せずにいる様だった。
おれは言葉を続ける。
「それに、ちゃんと助けに来てくれたじゃないか。……あの背負い投げ、格好良かったぞ」
「凛さん……」
敦士はその目に涙を溜めて、おれを見つめる。
「だから、そんな顔すんな。な?」
おれは敦士の手の甲をポンポンと叩くと、強張った顔を精一杯動員して笑顔を見せる。
「けど……なんであの場所がわかったんだ?」
おれは素朴な疑問を口にすると、敦士は涙を拭ってポケットから機械を取り出す。
「コレです。万が一のことを考えて、撮影中も凛さんに持っていてもらったGPSですよ」
そういえば、渡されてたな。
撮影に夢中で忘れてたけど、ポケットに入れてた。
……連れ去られる時落とさなくて良かった……。
「玄関のドアは、あのクソストーカー野郎が興奮して鍵を閉め忘れててくれたから良かったよな」
一哉の言葉に、おれはあのシーンを思い出して大きく深呼吸をした。
「き……気持ち悪かった」
おれの台詞に、そばにいた優がおれの頭を優しく撫ぜる。
「そりゃ、そうでしょ……。でも、凛が無事で本当に良かった」
「うん……でも、おれ……恥ずかしながら、しばらく一人で眠れる気がしない」
一人で夜目覚めて、あのシーンを思い出したら……パニックにならない自信がない。
おれの言葉に、メンバーは顔を見合わせる。
「そんなことなら、今までみたいにみんなの家に来ればいいよ」
「賛成!」
「大歓迎だ」
「っていうか、まだおれの家に来てねえだろ」
「皆……」
皆の優しさに涙が出る。
おれはその言葉に甘えて世話になることにした。
「今日のところは入院ですし、おれが付き添います。皆さんは一度ご自宅に戻ってください」
あれ、そういえば今日って…。
「はい、あの日から一日が経っています」
え、おれ丸一日以上寝てたってこと?
ていうか、皆仕事……。
「大丈夫、多少押したって敏腕マネがスケジュール組んでくれるさ」
「皆、敦士……ごめん」
「はいはい、もうお互い皆『ごめん』は無しにしよう、ね」
優の言葉に、おれは頷いた。
「……だな。この借りは高速レコーディングで返す!」
「その意気だ!それでこそ凛!」
「凛さん以外の方は、明日から通常通りお仕事ですよ!お休みは凛さんの意識が戻るまでのお約束ですからね」
既にいつも通りになった敦士に、皆は苦笑いをする。
「翔太さんはウェブラジオ、一哉さんはグラビア、優さんは雑誌のインタビュー、清十郎さんはスポーツバラエティーの収録です」
「「「「はーい」」」」
「おれは?」
「凛さんはまずは体調を戻してください。体調が戻ったらドラマの収録が待ってますよ!」
そんなこんなで、その日は皆解散となった。
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