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side ケイ サザンカの希望 1にしおりをはさみました!
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side ケイ サザンカの希望 1
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「ごめん!!今戻った。状況は?!」
処置室に入るやいなや、日奈瀬さんが叫ぶように問いかける。中には看護師が数名、医師はマコトにツバメさん、社さん、そして、、、
「!?丹兎先輩!!どうしてここに!!」
そこには何故か丹兎先輩の姿があった。
「話はあと!今はこっちに集中!!」
先輩はそういうと奥の部屋に入っていった。
恐らく薬を取りに入ったのだろう。
「コノハ!戻ったんだね。交通事故で一家三人と対向車に乗っていた方が二名。
先に三人家族がきて、父親と息子は意識がない。母親は少しだけど反応を示した。」
搬送口から最後の一人を運んできたであろう社さんがいう。本当に人手が足りなかったのだろう、俺の姿を見て少し驚いた後安心したように顔を緩める。
「これで家族は全員?対向車の方は?」
「一旦他の病院を探してもらってます。こちらもかなり厳しいので、、でも見つからなかったらすぐに搬送するように言ってあります。」
父親のルートを取りながらマコトが口にする。
ツバメさんはその傍で気管挿管を行っていた。
「そう、、わかった。じゃあマコとツバメはそのままお父さんの治療を続けて。チハと柚木でお母さんを診よう。
子供はおれとシュンで診るから。」
日奈瀬さんがササッと指示をした時、救急の電話が鳴る。
咄嗟により近かった俺が受話器をとった。
「はい、翔欧病院救命センターです。」
すると電話口から焦ったような声で告げられる。
「こちら欧香消防本部です。先程の事故での対向車の二名、一名は搬送先が見つかりましたがもう一名の受け入れ先が見つかりません!受け入れをお願いします。」
それを聞き、日奈瀬さんが辺りを素早く見渡す。
そうして俺に向き直りうなづいて合図を送ってくる。
「分かりました。受け入れしますので搬送をお願いします。」
了解しました、という隊員の声を聞き終わる前にすぐに受話器を置き処置へと移る。
既に処置室のベットへ横たわっている女性の側へ駆け寄ると社さんが、
「花房(はなぶさ)マリコさん、頭部に外傷が有り。
そして腹部に痛みがあるそうです。」
軽く患者情報を告げられる。
この人には俺と社さん、そして一名の看護師がついている。
「ルート取ります。」
花房さんの腕を擦り血管を探す。
そうして太い血管を見つけて軽く撫で付け、ルートをとる。
「入りました。すみません、投薬お願いします。」
そばで手袋をはめていた看護師に種類を伝え薬を頼むと
はい、と返事をしてすぐに用意をしてくれた。
「柚木くんありがとうございます。そうしたらとりあえず頭部を見ていただけますか?俺は腹部の方を見ます。」
そう言いながら社さんは俺に手袋を渡し、腹部の方に移動をし診察を開始する。
俺は任された頭部を確認していく。
出血量は少なくあまり深くはないが範囲が広い。
急いで消毒をしてガーゼを貼り、止血を試みる。
(、、うん、とりあえずは大丈夫だ)
呼吸も脈も安定をしているためひとまず息を着く。
しかしまだ子供の方は予断を許させないようだ。
「シュン、気道確保して。、、まだちょっと血圧低いか、、神乃(かんの)さん一応輸血パック用意してもらえる?」
子供に投薬をしながら日奈瀬さんが指示を出している。
あちらはなかなか出血が多いようで急いで輸血を準備している。
「柚木くん、こちらに集中してください。
この処置が終わったら急いでこちらの患者さんをICUへ引渡します。」
触診を続けて社さんが厳しい声を発する。
そうだ、今は目の前の患者をしっかりと診ないと。
「すみません、頭部に目立つ異常はありませんでした。
腹部の方はどうですか。」
「こちらも中度の打撲のようです。ではあとはICUに任せましょう。父親は処置がすんで一足先にはこんで、、、」
社さんがそういった途端、母親に取り付けられたモニターから異常を知らせるアラームがけたたましく鳴り響く。
(、、、?!なんだ?)
次の瞬間体が大きく痙攣を始める。
モニターは血圧が大幅に下がり始めているのを示し始めた。
「、、?!なにが起きたんだ?」
急いで母親の体を押さえつけて社さんが呟く。
「、、っ、とりあえず血圧をあげよう!昇上剤投与します!」
それを聞くとすぐに看護師が薬の準備をして社さんに渡す。
そして投薬を行うかたわらで指示を出す。
「柚木くん、すぐにCTの確保をお願いします。
落ち着いたら運びます。」
「っ、分かりました!」
携帯を取りだしCTへ連絡をとる。
そこにマコトとツバメさんが父親を引き渡して帰ってきた。
「?!急変ですか?」
「っあ、マコちょうどいい。母親、多分脳出血してる。
この後CTとるから同伴していってくれ。」
了解です、といいマコトが俺と交代をする。
どうやら専門は脳外科らしい。
「じゃあケイちゃんは僕ともう一人の患者を担当しよっか。もうすぐ来るから表に向かうよ。」
ツバメさんは俺を部屋の隅に招くとすぐに搬送口へと向かわせる。
そこには既に救急車が到着していた。
「症状は?」
「はい、そこまで大きなものはありません。
意識もはっきりしています。恐らく右大腿部の骨折かと、、」
ツバメさんが尋ねると救急隊員がすぐに答える
「柴原(しばはら)さん、病院着きましたからね。もう大丈夫ですよ。痛いところを教えて頂けますか?」
担架に乗せられて降りてきた柴原さんにツバメさんが問いかける。
(花房さん、、どうしてあんなことに、、俺が見落としをしたせいで、、、)
そんな自己嫌悪に陥っていると、、
「ケイ、今はこっち。さっきの人のことは後で反省だよ」
肩をつかまれツバメさんに告げられる。
(そうだ、、今は、)
さっきから意識があっちに行ったりこっちにいったりしてしまう。ただ目の前の患者に集中しなければいけないのに、、
「、、すみません。それでは運びます!」
意識を切り替えゆっくりと担架を押し始める。
そのうえで柴原さんはどこか遠い目をして足を押さえていた。
「柴原ヨウダイさん、右大腿部骨折の可能性有り。
すぐにレントゲン行くな。」
ツバメさんは、処置室に着くと素早く日奈瀬さんへそのことを告げる。
「おれも行くよ。ちょっとまってて。」
日奈瀬さんはそう残し裏へと回って行った。
そして柴原さんの処置をしながらツバメさんがいう。
「ケイちゃんはここに残ってていいよ。隣の部屋で休んでな。」
「ごめん、待たせた。レントゲン室3Aになったから行こっか。柴原さん、今からレントゲン室行って骨の状態確認しましょうね。」
柴原さんに微笑みかけながら日奈瀬さんはゆっくり担架を押していく。
処置室は俺一人になりガラン、として耳に残る空調の音だけが低く鳴り響いていた。
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