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[ハロウィン編]side ケイ マネッチアの辛抱 1にしおりをはさみました!
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[ハロウィン編]side ケイ マネッチアの辛抱 1
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「、、ハロウィン、か、、」
(そっか、もうそんな時期になるのか、、)
怒涛の初日からはや三日、とうとう俺の退院日がやってきた。朝から仕事をしてこの後丹兎先輩と待ち合わせて先輩の家へ行く予定だ。
「ああ、わかっているとは思うが産婦人科も例年通り仮装をすることになった。」
宮月部長がカンファレンスで産婦人科全体に告知をする。
この病院は面白いところがいくつもありそのひとつがこの充実した各行事である。クリスマスやハロウィンはもちろん、ハーベストやイースターなど様々な和洋中全ての行事をやれる範囲で開催している。
少しでも病院生活を楽しめるようにという病院長の計らいらしい。
「というわけで、全員なんの仮装をしたいか意思表示をするように。急にはなるが三日後までに産婦人のネットワークに提出をしておいてくれ。」
そこまで言うとパンパン、と手を叩きカンファレンスの閉会を宣言した。
そうして俺は夜勤の人に引き継ぎを行い局を後にする。
「そうだ、柚木!もしやりたい仮装がなければ、、」
以前白衣を貸そうとしてくれた矢上(やかみ)先輩に話しかけられる。どうやら先輩はやりたい仮装があるらしい。
こちょこちょと耳元で告げられる。
「、、というわけなんだ!!頼む!」
「まぁ、、大丈夫ですよ。それで提出しておきますね」
先輩はそれを聞いてありがとう、と大袈裟に手を振る。
俺自身そこまでやりたいと思う仮装はなかったので逆にそうやって提示してもらえてありがたい。
「それじゃあ、お疲れ様です。」
おん、お疲れ様と先輩に見送られ今度こそ産婦人科を出て外で待つ丹兎先輩の所へ急ぐ。
(やっば、、ちょっと待たせちゃってるかもな、、)
そうは思うがいつものことを考えると少しくらい待たせてもバチは当たらないだろう。
(そうだ、ちょっとだけ救命に顔を出してこよう。)
実は初日、産婦人科に戻ってから部長に救命との掛け持ちは出来ないかと打診をしてみたのだ。
すると部長は案外反対はせずむしろ、多くのことが学べるだろうと賛成をしてくれた。
しかし、
『さすがに明日からはい、いいですとは言えないな。
お前の体調面もあるしな。だから行くとしたら十一月に入ってからにしなさい。』
と、言われてしまった。
反論の余地もないほどしっかりとした回答だったので俺はそれに従い、十一月に入ってからにすることを決めた。
それでも少しでもあの雰囲気に慣れておきたいと思い、少し顔を出すことにした。
それと花房さんの容態も気になる。
そうして救命に着き、その扉をちょっと開いてみる。
やっぱり閑散としており仲はガランともの寂しげだ。
ほんとに人手が足りないのだろう。
「、、なぁにしてんの、、柚木?」
「!?、、あっ、日奈瀬さん、、」
後ろには白衣を着た日奈瀬さんが立っていた。
手にはバインダーが握られている。
いつも通り少し気だるげな表情をしている。
「えっと、、花房さんの容態が気になって、、」
すると日奈瀬さんは目をぱちくりとさせる。
そうしてはにかんで俺に告げる。
「今から行こうと思ってたんだよ。ちょうど二人とも昨日意識が戻ったって連絡入ったからな。もし、気になんなら柚木も行く?」
そんな提案に乗らないわけが無い。
俺は一も二もなくうなづき丹兎先輩に遅れることを連絡して急いで救命の常備してあった白衣を有難く羽織る。
「ん、準備できたっぽいな。そんじゃあ行こっか。」
そうして二人でICUへと向かった。
うちはICUが三つに別れており、二人がいるのは比較的軽度な患者や回復傾向にある患者が滞在するところだった。
「失礼しまーす。救命の日奈瀬と産婦人科の柚木です。
花房さんに面会に来たのですが、、」
日奈瀬さんがそう言い中へはいると一人の医師が駆け寄ってきた。
恐らくここで花房さんの担当をしているのだろう。
「日奈瀬先生、お待ちしてました。二人とも隣の談話室にいらっしゃいます。こちらへ」
そう言って日奈瀬さんを案内し始める。
しかし腰を引き寄せているのがどうも気になる。
(、、それ必要か?)
「、、?柚木、なにやってんの?行くぞ」
立ち止まる俺に疑問を覚えたのか日奈瀬さんがその医師の腕からするりと抜け出して俺の手をとる。
腕から日奈瀬さんが居なくなっなその医師はこちらをちらりと見流しこっちです、と先を歩いていってしまう。
日奈瀬さんは一瞬キョトンとした後小声で、
「ほら柚木が遅いからぁ、、はやく行くぞ」
(いや、、多分違うと思うんだが、、)
袖を引っ張られ急かされる。
まあ、急ぐに越したことはないのですぐに足を出す。
「こちらにおふたりともいらっしゃいますので、、」
それではといい案内をしてくれた人はここを後にして行く。帰り際にちらりと見えた目は、少し冷たく俺の瞳に移った。
「、、あの人、、」
「?柚木??どうかしたか、もう入るぞ!」
(この人気づいてないのか、、、タチが悪い、、)
さっきの視線で確信に変わった。
あの人は日奈瀬さんに好意を抱いているのだろう。
だから日奈瀬さんが俺の方を優先したことに嫉妬をしていた。
そんな時縁の言葉が蘇る。
あいつとはあれ以来勤務時間が合わなく、会っていない
『救命で男を喰いまくってんだって、、
そういう方面に緩いって噂だよ』
その言葉に頭を振ってかき消す。
そんなわけが無い、この人はそんなことをする人じゃない
「お待たせしてしまいましたし早く入りましょう。」
「そうだな。」
そう言って日奈瀬さんが扉に手をかける。
ここはドアノブがある。うちにしては珍しい。
「花房さん、失礼致します。」
すると中から少し重い声が聞こえる。
恐らく父親の方の声だろう。
「失礼します。救命の日奈瀬と申します。
こちらは柚木です。三日前に処置を担当させて頂きました。」
日奈瀬さんに倣い後ろで軽く礼をする。
「初めまして、ただいま紹介にあずかりました柚木です。僕も処置に携わらせていただきました。」
「、、はぁ、、そうですか、、」
頭に包帯を巻いた女性がどこか心ここに在らずと言ったようにつぶやく。
まだぼうっとしているのだろうか。
「それでは本日は三日前のことを、、」
花房さん夫婦の目の前に座り日奈瀬さんが三日前のことを説明しようとしているのを男性が遮る。
「、、そんなことはいいです。息子は、、、トオルはどうなったんですか!!」
「ハジメさん、、、」
「トオルはどこにいるんですか!?、、あの子は今どんな状態なんですか!!」
父親が突然大声をあげる。
まだ二人は何も聞いていないのか、、、
日奈瀬さんは一瞬顔を強ばらせる。
そうしてゆっくりとその口を開いた。
「息子さんは、、お亡くなりになりました、、」
「っ、、ぇ、、、?」
「、、はぁ、、?!」
目の前の二人が息を飲む。
そんな二人を見つめて日奈瀬さんが続ける。
「三日前、ここに運ばれてきた時点で息子さんは手の施しようがない状態でした。脳内で出血を起こしていた上に内臓が酷く損害を受けていました。」
そこまで言うと日奈瀬さんは立ち上がり二人の横まで移動する。
そうしてそこで深く頭を下げる。
「私たちの力が及ばず息子さんをお助けできず、本当に申し訳ございませんでした。」
二人は何も言えないといったようにしばらく呆然としていた。
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