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未だ会った事もない相手とやりとりを始めてから、もうすぐ2年になる。
高卒でクルマ関係の工場に就職し、予想通りの出会いの無さに焦って始めたマッチングアプリで最初に声を掛けてくれた人。
電話では何度も話した事があるが、風邪を引いているようなハスキーボイスが印象的だ。本人は自分の声が好きではないと言っているが、どちらかと言うと俺は低めの掠れ声が好みなので何ら問題はない。むしろ仕事で疲れた夜に聞く彼女の声色は、俺にとってとびきりの癒しASMRなのだ。
俺が恋を自覚したのは中1の頃の1回きりで、しかも相手は男。小規模な文化祭で彼とその友人が披露した演奏に目を奪われるという、所謂一目惚れだった。 3年生の先輩が寄せ集めで組んだ即席バンドだったらしい。名前も知らない男女混合の4人組。
テンポが定まらないドラム、不安定なベース、隣の鍵盤まで叩くキーボードが奏でるド下手演奏の中、フロントマンの彼だけが輝いていた。
スタンドマイクに腕が触れてグラつく瞬間も、高音を張り上げた時の歯並びすら鮮明に覚えている。正面を向きながらギターを掻き鳴らす小慣れた感じも、ベースに目配せして微笑む所も、隅から隅までタイプだった。
その日ばかりは、いつもは説教マシンの女子も体操着を脱がせ合って馬鹿騒ぎする男子も、もれなく全員が彼に見惚れていただろう。
あれから7年。20歳になっても俺はあの日の光景を忘れられないままだ。
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