アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
rev .25にしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
rev .25
-
大悟は使用したコーヒーカップを洗うべくバスルームに向かった。室内清掃時に新しいものと交換になるため、そのままでも問題はないが、K達と岡崎を離すきっかけが欲しかったから。
「師匠が無事でホンマよかったですな、ハニーさん」
大悟から声をかけなくとも、岡崎はついてきてくれた。彼から話を振ってくれたこともあり、洗面所でコーヒーカップをさっと洗ってから、大悟は話を切り出した。
「岡崎さん、Kを心配してくれてありがとう。それでね、ちょっと聞いておきたいことがあるんだけど」
「ほう。レイさんに何か言われましたか?」
警察官だけあって察するのが早い。
こうなると、俺が話すよりレイと直接話した方がいいかも。
『カナリア、岡崎に予備の通信機を渡してくれ。おまえに任せるつもりだったが、そうもいかなくなった』
大悟はレイとの通信を繋いだままにしていた。彼も自分と同じ考えだった。
「岡崎さん、これ、右耳に装着して。レイと話せるよ」
「すんません、ハニーさん、気遣うてもろて」
「気にしないで。俺はレイに頼まれただけだから」
大悟は安堵していた。今の自分では荷が重すぎると思っていたから。
『単刀直入に言うぞ。おまえが府警から何を言われているかは知らん。だが、今ここで俺達との繋がりを切れば、普通の警察官でいられる』
レイの言葉に思うところがあったのか、岡崎の表情が引き締まる。その後、こんな言葉を口にした。
「ホテルの乱射事件は、ハナムラ絡みやったんですか?」
勘のいい岡崎は察したようである。
『現時点で言えることは、ハナムラ絡みの方がマシだということぐらいだ』
岡崎はエーデルシュタインのことを知らないし、大阪府警にもその名を告げてはいないとレイは言っていた。
『上の命令で引けないのなら、俺がなんとかしてやる。今のキャリアを守りたいのなら、ここで手を引くのが一番だからな』
犯人はエーデルシュタインの名を口にした。彼らが組織と関わりがあるのか、本当のところはわからないけれど、少なくとも、組織の名前は公共の場で口に出すものではない。
Cの言ってたことが事実だとしても、彼の知らない誰かがやってる可能性もあるよね。
コードネームAが引き起こした病院占拠事件のことを考えると、組織が一枚岩でないことは大悟にもわかる。
「キャリアなんて、くそ食らえですわ」
岡崎の言葉には鬼気迫るものがあった。
「レイさん、ハニーさん、わしはマキマキの存在を認めてますねん。その時点で警察官失格ですわ」
マキが殺し屋だと知っても、岡崎は動じなかった。それどころかKを師匠といって慕ってくれている。それが嘘偽りない気持ちだということは、見ていればわかる。
「師匠とマキマキの本気を間近で見たあの日から、わしはなんてちっぽけな人間やろうと思いました。命を懸けるゆうことがどういうことか、圧倒的な力の差ゆうか、とにかく凄いとしか思えませんでした」
岡崎がKやマキに憧れる気持ちは理解出来る。病院占拠事件の際、Kは府警から渡されたサブマシンガンと一発の銃弾だけでコードネームAを倒した。マキはKのサポートをすべく行動した。彼らの活躍があったからこそ、最小限の被害で切り抜けることが出来たから。
『勘違いするな。俺達は正義の味方じゃないぞ』
レイは岡崎の言葉をきっぱり否定した。ハナムラは悪を滅ぼす正義ではなく、悪そのものだと言わんばかりに。
「勿論わかってます、それはちゃんとわかってますさかいに──」
『正義とやらがどれだけ薄っぺらくとも、警察という組織がどれほど腐っていようとも、おまえ達は表舞台に立つべきなんだ。どんな理由があろうとも、人が人を殺めることを許す社会になってはいけないからな』
今この瞬間も、世界のどこかで誰かが苦しんでいる。レイが放った最後の言葉がまかり通ってしまっているから。
「レイさんの言いたいことはようわかります。その上でお訊ねします、どうすれば、わしの覚悟を理解してもらえますか?」
それでも岡崎は引かなかった。大悟はハラハラしながらふたりを見守ることしか出来ない。
『おまえが握ってる情報は全て晒してもらうことになる。府警を裏切ることになるんだぞ』
「覚悟の上です。どうかわしに、師匠とマキマキの手伝いをさせてください!」
通信機を通して話しているというのに、岡崎はその場で頭を下げた。
『カナリア、岡崎を連れてシラサカの元へ行け』
レイの言葉を受け、岡崎は顔を上げて大悟をまっすぐ見つめてきた。迷いのない澄んだ目をしていた。
『シラサカにも同じようなことを聞かれるだろう。あいつの判断次第だな』
岡崎は覚悟を決めている。こうなれば、Kも止めることはないだろう。
Kが岡崎さんに冷たく当たっていたのは、こちら側に来させないためだったのかな。
仲間が増えて嬉しいような、切ないような、なんともいえない気持ちになる大悟だった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
33 / 70