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休憩時間を全て使って、俺達は豊の恋人を騙すための作戦を練った。
無理がありそうな豊の案も敢えて頷くことで、いっそ全部バレてしまって豊がどん底に堕ちてしまえばいいと。
「お疲れ様〜!カレから返信来てたよ。明日の夜ならいいって」
「わかった。楽しみにしておく」
「うん…あはは、なんか緊張して来ちゃったな〜」
αの名前は千鶴というらしい。
大手企業を退社後、経営コンサルの会社を立ち上げたエリートだ。
経歴を聞いただけでも凡人βの俺には遠く及ばない人間だという事は理解出来た。
「絶対大丈夫だって。俺がちゃんと見て来てやる」
「さすが隼人…頼りにしてるんだぞ〜!」
その日は適当な返事をして豊に手を振った。
普段は通らない道を選び、いくつか寄り道をして手に入れたのはΩ専用のチョーカーと香水。
多くのΩは普段からフェロモンを紛らわすために強めに香水を振るそうで、それに倣えばフェロモンを感じなくてもΩと信じてもらえるのではないか、という豊による安直すぎる提案だ。
どこまで上手くいくのか知らないが、これくらいで騙せるαなら俺らとそう大差はないのだろう。
所詮αなんてその程度か、と納得できるのならそれも良い。
俺達の作戦はこうだ。
まず豊が『会社にΩの友人がいる』と彼氏に伝え、紹介も兼ねて3人で食事でもどうかと誘う。
ここまでは既に実行済みで、仕事が終わる頃には『金曜の夜なら問題ない』と返信が来ていた。
店は豊の名前で予約をとるらしいので、後ほど連絡が来るだろう。
しかし、時間になっても豊は来ない。ここからが本番だ。
2人で暫く飲み食いした後、急用が出来たと豊から連絡があったら彼氏はどうするか。
万が一の策として、ホテルに連れ込まれて襲われそうにでもなれば全てを話して逃げても良いと言っていた。
まあ、嘘でも有り得ないといった冗談めいた声色ではあったが。
俺はそれを本当にしてやりたいとすら思っている。
特別を許された奴らに一矢報いたいがために、この馬鹿げた茶番に付き合っているのだから。
学生時代、男性αと男性Ωが付き合っている光景をたまに目にすることがあった。
高校生にもなれば、先輩と番ったなんて同級生も現れるほどで。
その全てが俺達には遠い世界の話だったんだ。
彼らは特別、俺らは普通。
男性βにとっては女性βを愛する事こそが普通で、本来のβのあるべき姿だ。
昔、男性Ωを好きになってしまった俺はそれを痛感した。
「は?冗談やめてくれないかな…僕らはαに番われなきゃ幸せになれないんだよ」
「でも俺…君の事がどうしても…」
「そもそもさぁ、男のβが男を好きになるとか気持ち悪いんだけど。じゃあ聞くけど、隼人君は僕をヒートの苦しさから解放してくれるの?」
「それ、は……」
「だったらβはβらしくわきまえて貰わないと。αとΩの世界に入ってこないで欲しいんだよね」
「………ごめん…」
αが羨ましかった。
頭が良くて、周りにいつも人がいて。
俺の初めての恋に希望すら持たせてくれなかったαが、大嫌いになった。
勿論それはΩも同じだ。
αがそんなに偉いかよ。無くす事は出来なくても支える事は出来るって、それくらいは言わせて欲しかった。
性別じゃなく、俺を見て欲しかった。
特別を許されるお前らが、憎くて憎くてたまらなくなった。
就職先に、男性Ωがいた。
頸に噛まれた痕はまだ無い。数少ないながらもαが存在するこの社内で、コイツの信用を得るには──。
遠慮なく話しかけ、入社2日目には下の名を呼び、昼飯に誘う。
初めは警戒していたΩも、徐々に心を開き、自ら声をかけてくるようになった。
狙い通りだ。
そうして今、豊と俺の関係が成り立っている。
悪いが俺は豊が嫌いだ。
人の性別しか見ないΩを、俺だって人として見てやる筈がない。
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