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優しい君にしおりをはさみました!
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優しい君
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「いらっしゃいませ~」
店内に入るとレジ付近で作業している店員がだるそうな声色でいってくる。
よく利用するコンビニだがこの店員は初めてみた、きっと夜勤のシフトの人なのだろう。
店内に入っても気温は変わらずやはり少し寒く感じる。
とりあえず温かい物を体内に取り入れなくては。
レジ横にあるBOXの中には、温かい飲み物ばかりが並べられていて、コーヒー、カフェオレ、ほっとレモン…
一つ一つ目でおいながら目当ての物を探す。
あった、ココア。
温かい飲み物を買う時はいつもココアを選んでしまう。
自分では、ココアとかよりコーヒーなんかをブラックで飲めたらかっこいいのにな…と思うが、飲めない物は仕方ないと思う、あんな苦くて不味い物は人間の飲み物じゃない。あれはきっと悪魔の飲み物だ。
自分が飲めないからと言って酷いいいようだ。
お目当てのココアを取ろうと、蓋をあけ手を伸ばそうとした時、横からもう一本の手がニョキっと現れた。
「え」
自分が取ろうと思って蓋を開けた、というのに横から突然割り込まれたのでつい声が出てしまった。
にしても何て非常識なんだ。俺はあんたのために開けたわけじゃないぞ。と、心の中で悪態をつく。
「あ?」
その非常識な奴は、俺の声を聞いても手を止めることはなく、俺の反応が気に入らなかったのか低い声色で返事をし、綺麗に並べられた飲み物の中からブラックコーヒーを選び取った。
そして俺はそのブラックコーヒーを持つ手の主を見て唖然とした。
こいつは……知ってる。
そう、この非常識な奴を俺は知っている、
高橋斗真。
こいつは、俺と同じ高校で同じ学年で同じクラスでしかも席が斜め前だ。
といっても俺は高橋のことをクラスで見たことは殆どない、高橋は世に言う不良とゆう奴で、よく学校をサボる。
学校に登校しているのか、ただ授業に出てないだけかはよくわからないが、俺が高橋のことを見かけたことがあるのは数える程だ。
だから高橋が一体どんな奴かと聞かれたら何も答えられない。
ただ、クラスの奴らが高橋のことを話しているのはよく耳にする。
クラスの奴らいわくこいつは、先輩の喧嘩を買って返討にしたらしい、教師に頭髪の注意を受け半殺しにしたらしい、中学の時に担任の女教師と淫行していたらしい、などなど思い出せないが他にも色々あったはずだ。
まぁ、さすがに全部が全部本当の話ということはないだろう、だが火の無い所に煙は立たぬ。
こいつが本当はどんな奴であれ、あれだけ授業をサボって、制服も着くづし、頭髪に至っては金髪だ、校則なんてあったもんじゃない、これだけ好き勝手してれば変な噂もされるだろう。
そんな高橋にこんな所で出会ってしまった。
最悪だ……正直関わりたくない。
まぁ、でも向こうは俺のことは覚えていないだろう、なんたって向こうは殆どクラスに顔を出さないし俺は目立たタイプではないのできっと認識されてないはずだ。
という事は、俺が知らないふりをしていればいいわけだ。
「あぁ、ごめん何も見てなかったわ。」
そうこう考えてるうちに向こうが謝ってきた。え、もしかして俺より先にコーヒーを取った事に謝っているのか?
意外だ、むしろ俺が「え?」とか言ったからがん飛ばされるかと思った。
「いや…いいですよ」
動揺を隠しきれた自信はないが、とりあえず他人行儀な返答をする。
このまま何処かに去ってくれるはず、がんも飛ばされなかったし内心凄く安心している。
立ち去ってくれるのを待っていると、高橋がこちらを見て口を開いた。
「あ、お前」
「へ?」
まさか、気づかれたのか、とゆうか俺のこと覚えてた?予想外すぎる展開に顔が青くなる。
「お前、拓馬だろ!久しぶりだなぁ!」
高橋は俺とは逆に、顔をパァと輝かして名前を言う。俺の名前……とは似ても似つかない名前を。
拓馬って誰だ…まさか、人違いをしているのか?一体誰と間違っているのかは知らないが。
これは早く勘違いに気づいて貰わないとめんどくさいことになる。
「いやっおれは」
誤解を解こうとする俺の言葉を遮り、高橋は縋るような声を挙げた。
「お前いいところに来たな!ちょっと助けてくんね!?外でさ~野良なのか、迷子なのか分かんねぇんだけど犬がうろついててさ。取敢えずこのエサで釣って捕まえようと思うんだよね。」
こいつ人の話聞けよ。
犬?迷子?捕まえる?いきなり過ぎて話がつかめない、とりあえず俺の誤解は全く解けていないとゆうことだけはわかる。
「これパッと買ってくるからさ、そのへんで待てて」
「は?え、ちょと!」
こっちの話は聞かないのか。
高橋は、犬のエサであろう物とコーヒーと……ココアを持ってレジへと向かった。
ココア…買ってくれるのか。
いや、ココア買ってくれる気遣いができるなら、人の話をさえぎらないという気遣いもしろよ!
俺、何か手伝わなきゃいけないのか?
あいつは俺の事をまだ拓馬って人と勘違いしてるみたいだし、このままこっそり行方をくらませれば……でも、もし俺がここで消えたらあいつが買ってくれたココアはどうなんのかな。
高橋は俺が飲むと思って買ってくれてるわけだし。何か、消えずらいな。
どうするべきか考えているうちに高橋が帰ってきた。
「おまたせ」
そう言いながら高橋はココアをポンっと渡してくれた、温かい少し熱いくらいだ。
「ありがとう……ございます」
一応、お礼は言っておく。そして早く誤解を。
「買っといて何だけど、それ飲んでる暇ないから」
「は?」
口を開きかけた俺に、高橋がビシッとココアを指さして言う。そのことに俺は「は?」としか言えなかった。
「早くあいつ捕まえないと、どっか行っちまうからさ。まぁカイロ位にはなんだろ、それ」
そう言いながら高橋は体の向きを変え目的の方向へ歩きだす。
「まじで?」
人違いの誤解も解けてないうえに、本当に犬の捕獲を手伝わないといけないらしい。
俺は少し考えたが、手に熱いココアを持ったまま高橋のあとを追うことにした。
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