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世界が回り出したにしおりをはさみました!
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世界が回り出した
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雨がシトシトと降り注ぐその日。何時ものように仕事場へ向かう途中でかかってきた電話の意味を理解するよりはやく俺の身体は走り出していた。
『デニス‼︎』
泣きかけていたその声が耳元でこだまする。つい数十日前に神と混同までした彼の声に、間違いがなかった。なにより俺のことをデニスと呼ぶのは彼しか。ホーレットしかいない。
『…助けてくれ‼︎町外れの、教会だ…そこにっ』
酷く、混乱していた。なぜ、彼が俺に電話をしているのかわからなくて。町外れの教会になにがあるのかわからなくて。
『…奥村が‼︎』
なんでそこに、奥村の名前がでてくるのかすら、わからなくて。走りながら街中の公衆電話で如月に連絡をとる。慌てたようなニュアンスで、でも落ち着いたトーンで。すぐに向かうと言われた。
雨が身体の体温を奪う。息切れしても立ち止まらなかった。捨てられたというのに、未だにホーレットのことを好いている自分を心の中で揶揄する。なんてバカなんだろうか。
そういえば、羊飼いはどうしたというのだろう。
家をでて五分くらい。ぼろぼろな教会の扉を開けた。鉄の香りが鼻をかすめる。静かな空間に、人影が三つ。その中にホーレットは居なかった。横たえる奥村の腹部からは血が流れていた。たらりたらり、床が赤く染まる。
「…なんだ、これ」
口にした言葉は、静かな教会の中に響いた。血を流して目を閉じてる奥村、その少し横の方で抑え込まれてる細目の男とそれを抑え込む黒髪のオールバックの男。俺が立ちすくんで居ると、開きっぱなしだった扉から入ってきた如月が奥村にかけよる。冷静に首筋の脈を確認して、瞼を開かせて、声をかけて。最後に、涙を流していた。
その後ろにある大きなステンドグラスに描かれた大天使が、雲からようやく顔を出した太陽によってきらきらと輝いた。
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