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未知 9話にしおりをはさみました!
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未知 9話
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「おつかれ」
ウェットティッシュで玩具を吹きながら、零次は俺の頭を撫でた。
「じゃ、駅に向かうか。海里、歩ける?」
「うん、平気。歩く」
☆☆
「え、う、嘘! ……零次?」
玩具を水できちんと洗ってからバックの中に入れて電車を乗り継いで居酒屋に行ったら、店の前でそう声をかけられた。
「え、み、美和ちゃん……なんでわかって」
口を抑えている美和を見て、零次があからさまに狼狽える。
美和の隣には奈緒がいて、奈緒も信じられないと言った顔で零次を見ていた。
「それ」
美和が恋人繋ぎをしている俺達の手をゆびさす。
「海里とそんなのしたがるのも、海里がそれをされて嫌がらないのも零次しかいない。 違う?」
「……ああ、合ってる」
そう言って、零次は手を離した。零次は顔だけじゃなくて、耳まで真っ赤になっていた。
「ばっ、ばかあああ!! すごく心配したんだから!」
美和が泣きながら零次に抱きついた。
「み、美和ちゃん……そうだよな、ガキでごめん。でも、巻き込んだ方が後悔するかと思って」
「……あんたも海里も人に頼ることを知らなすぎなのよ。今からはなんでも言いなさいよ。でないと二度と連絡なんて取らないんだから」
手を離して、美和は零次から目を背けた。
「はは、了解。肝に銘じておく。……奈緒ちゃんも、今までごめんな?」
「ごめんじゃないよ! もう!」
「はぁ。……そのチャラい喋り方、もう一周回って愛しくなってきたわ。零次、仕方がないから赦してあげる。でも」
奈緒の涙をハンカチで拭いながら、呆れた様子で美和は言う。
「ああ、タピオカ奢る? それともクレープか?」
「どっちもよ」
「うわっ、マジか。海里ぃ」
零次が涙目で俺を見る。
「うん、俺も半分払う」
「よっしゃ! やっぱ持つべきものは親友だな」
俺の肩に腕を乗っけて、零次は笑った。
「全く。相変わらず調子が良いんだから。……早く入るわよ」
「行こ、海里くん、零次くん」
「うん。この前はごめんな奈緒、美和」
「ううん。私も少し言いすぎた。ごめん」
「もういいわよ。奢りでチャラにしてあげる。でも、次はないから」
居酒屋のドアをくぐって美和は言う。
零次が美和の後ろにいるので、俺と奈緒は二列になって歩いて、二人の後を追った。
「はは、美和ちゃん相変わらず怖ー」
「誰が怖いですって?」
ま後ろにいる零次を見てから、美和は待合席に腰を下ろした。
「な、なんでもない! 海里、俺のこと守って」
零次が慌てて、奈緒と一緒に歩いている俺の後ろに隠れる。
「ふ。いつでも守るよ」
「嘘。お前いつからそんなイケメンになった?」
俺の隣に座って、零次は首を傾げる。
「だって俺、零次いないと生きていけないし」
「ちょっと、遊園地の時よりカップルみがあるじゃない。仲が良いのは結構だけど、もう手を繋ぐのはよしてよね。ここは居酒屋なんだから」
零次を見て、しっかりと美和は指摘した。
「はいはい。本当に美和ちゃんは変わんねぇな。あの時と比べたら、ますます綺麗になった気がするけど」
赤みがかったアイシャドウのついた瞼に、真っ赤な口紅。身体のラインがしっかり分かる短いブラウスに、ぴっちりとしたスキニー。モデル体型の美和じゃないと、着こなせないし綺麗に見えない服装だ。零次もそう思って、美和を褒めたのだと思う。
奈緒は美和とは打って変わって、花柄のオフショルダーワンピースを着ている。背が小さくて、ピンク色のアイシャドウやハート柄の服などのガーリーな雰囲気が似合う奈緒には、それがよく似合っている。
「ばっ、馬鹿! チャラいこと言ってんじゃないわよ!」
頬を赤くして美和は抗議する。
「えー、本心を言っただけなんだけど」
「はぁ。仕方ないからそういうことにしておいてあげる」
呆れている美和を見て、零次は楽しそうに歯を出して笑った。
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