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=Ring1= 011.にしおりをはさみました!
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=Ring1= 011.
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「ありがとうございました〜!」
僕らはやっと地下から解放された。背後で再びステージに上って手をブンブン振るオーナーを完全に無視し、僕は藍の手を取る。
突然手首をつかまれて、藍は目をパチクリ。(かわいい)
そのまま藍を引きずるようにして、ここに着いた時からずっと正門横に待たせている車に向かう。
「ちょっと〜手くらいふりかえしてよ〜?」
むくれたような声が遠くから聞こえてくる。どうやらオーナーは、別れの挨拶代わりに僕らに手を振っていたらしい。
そんなものは見てないから知らない。
とにかくこの臭いところから出たい。
何日も体を洗ってない奴隷たちからは軽い腐臭がしてきて、それが何人もいるものだから何倍にもなって臭かった。
地下もかなりにおったし、もうこんな所に藍を起きたくない。うつる。
手を振るオーナーを、藍が困ったようにチラチラ振り返るのも気に食わない。
藍の気を引こうとするな、クソ野郎。
オーナーの声よりさらに不機嫌な顔になる。
「薔ったら…怒らないでよ…」
藍は困った顔をして、ニヘラと薄い笑顔を浮かべて僕のご機嫌をとろうとしてきた。
そんなところも可愛いから、できるだけ長いことそうしていてもらうために僕はあえて藍を無視する。
硬い土を踏みしめて、早足で歩く。
蜜田(ミツダ)は僕ら専属の運転手。
学校の行き帰りから仕事の送迎まで、車の移動に関してはほぼ全部の仕事を蜜田が一人でこなしてくれている。
おかげで二人も三人も運転手を雇わなくていいので助かっている。
「蜜田、もうこの後は用事はないから真っ直ぐ帰って」
藍を押し込んでから一緒に後部座席に乗り込み、バンと音を立てて車のドアを閉める。
「はいよ〜」
蜜田の軽快な返事とともに、ブオンと床が鳴って車が走り出す。
バックミラー越しに蜜田が話しかけてきた。
「どうでした?奴隷市場は。……また何人も『入荷』されてたんでしょう?」
「入荷」という言葉に自嘲気味に笑みをこぼして、蜜田は言葉を繋ぐ。
その言葉に「ハハ…」と困ったような声を漏らした藍。
そちらをちらりと見ると、藍も僕を見ていたようだった。「なんて言おうか」みたいな目で見つめてくる。
可愛い。
あぁまぁ藍が可愛いのは当然だけど、奴隷について蜜田と喋る時には僕らもある程度気を使っている。
勿論それには理由がある。
それは蜜田が「元奴隷」だからだ。
藍があんなふうに次から次へと奴隷たちを屋敷に招くものだから、屋敷が建った当時は使用人二人を含めて四人暮らしだったのが、いつの間にか二、三十人の大所帯で共同生活を送るようになっていた。
つまり使用人たちの大半は元奴隷。
藍に絶対的な忠誠を誓う奴隷たちばかりなのだ。
そして蜜田もその一人であり、かつて奴隷であったという事実が消え切らない彼に、奴隷の話をして不快にさせるのは良くないという配慮をしているのだが。
僕らがチラチラと目を見合わせているのが気になったのか、蜜田は安心させるようにフッと笑った。
さっきとは違う笑み方に僕らがきょとんとすると、蜜田が再び口を開いた。
「お二人とも、別に俺の過去とか…気にしなくて良いんですからね? もう今更どうだっていいし…それよりお仕事の話聞かせてくださいよ。またオーナーって人がうるさかったんでしょ?」
オーナー、と言いながら小さく笑った蜜田を見て、藍も少し安心したようだった。彼の話に乗っかる藍。
「そうなんだよ、今日も地下の収容所を見せられて…おかげで精神的にもうくたくただよ」
「藍すごく悲しそうな顔してたもんね」
「藍坊ちゃんは奴隷に優しいですからね〜。それより新しく入った子に可愛い子いました?」
「ショタコン乙」
「薔坊ちゃん、お口にチャック」
「蜜田の口を縫い付けてやるよ」
「やだそんな怖い」
「痛そう…」
「ショタコンの方がもっと痛いじゃん」
「坊ちゃん、お口にチャックね…」
「あっそうだ、蜜田、僕が今日連れてきた彩ちゃん、覚えてる?」
「覚えてますよ〜、すっごく可愛い顔してましたからね。髪の毛完全に脱色して茶色くなってる子でしょ?」
「へえ、あれ脱色してたんだね」
「薔坊ちゃん気がつかなかったんだ、珍しい」
「蜜田、お口にチャック♡」
「………ぶはっ……運転中に刺激が強いですよ、坊ちゃん…」
「やめてよ気持ち悪い、それより藍の話の途中なんだけど」
「あっ…すみません、藍坊ちゃん」
「あれ?ふふっ、そんなのいいのに。二人も面白いよ?……で、その彩ちゃんとね、今日見せられた奴隷の子が似てたの。なんか雰囲気が似てるっていうのかな……髪の色も同じだったし」
「そういえば同じだったねぇ、肌が真っ白なところも」
「細いところも」
「それは全奴隷共通ってやつでしょ」
「………へえ〜…もしかしてその二人、兄弟なんじゃないですかね〜?」
「えっ!?そうだったの!?………ちょっと、蜜田戻って、車戻して!あの子買い取ってくる」
「は?!ちょ、待ちなよ藍、落ち着いて」
「ええ!?いやわかんないっすよ兄弟かどうかなんて!?」
「そもそも茶髪とかザラにある色じゃん…それだけで兄弟だとかは決まらないよ。似てたってだけ」
「まぁ奴隷なんてみんな金のために売られてきますからねー、親に売り飛ばされて兄弟と離れ離れに、なんてよくある話ですけどね」
「じゃあやっぱあの二人兄弟?」
「いやそうとは限らないっすけど」
家に着くまでのしばらくの間、蜜田と三人でそんな話を楽しんでいた。
蜜田と藍と僕の組み合わせは話が弾む。オーナーや奴隷市場を忘れるのにはちょうどよかった。
そしてできればあんな施設は潰したい。
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