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=Ring2= 001.にしおりをはさみました!
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=Ring2= 001.
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『お前は頑張り屋さんだな』
『父さん、俺、こいつがいい』
『友達になろうよ!』
ご主人さまの声と、あたたかい記憶。
緑色の芝生にご主人さまと二人で寝転がって、朝日を浴びる。
ご主人さまの笑った顔が、消えない、消せない。
『奴隷は奴隷よ』
『汚い奴ねぇ』
『死んじゃえばいいのに〜…』
女の人が言った。
ご主人さまは変わる。
冷たくなって、まるで人でないものを見るような目になった。
女の人は笑う。
ご主人さまはさけずむ。
『気安く時雨に近付かないでよぉ』
『お前なんて買わなきゃよかったな』
『………っごめんなさい…』
生きていてごめんなさい、買われてしまってごめんなさい。
なんて、今まで一度も言わされたことのなかった言葉。
他の奴隷が言わされているのを見ていた。
自分が言わされるなんて思ってもみなかった。
『申し訳、ありません…』
いつからか他人行儀になった謝罪。
必死にあやまるだけでは許してもらえなくなって、だんだん手が出るようになった。
何もしていないのに蹴飛ばされる。
『ごめんなさい、ごめんなさい』
泣いて謝ったらもっと酷くされた。
ご主人さまの変わりように、使用人達もついていけないようだった。
『若様!? 一体何を…!』
『うるさいなぁ…お前は元娼婦だろ?そういうことは慣れてるんだろうが』
『若様、その人を放してください!』
『奴隷の分際で』
他の使用人が止めに入っても、その人も一緒に殴られるだけだった。
物陰に隠れてそんな様子を何度も見ていた。
見つかったら、僕の番。
ご主人さまの奴隷達の目から、光は消えた。
瑠璃家の奴隷達の唯一の逃げ道は、突然現れた女の人によって塞がれてしまった。
『どうして……若様……』
『あんなに優しかったのに……』
『……あの、よそ者のせいで』
その頃よく瑠璃家の屋敷に来るようになっていた女の人は、ご主人さまの婚約者だったらしい。
他の使用人達はみんなその女の人を嫌った。
ご主人さまが変わってしまったのはその人のせいだと、僕もわかっていた。
『あははは…、時雨ったら、強く蹴りすぎたんじゃなぁい?…動かないわよ、その子』
『別にいいだろう…また買えば』
『やっだぁ、使い捨て〜』
痛みで意識が遠のくなんてこと、今まであっただろうか。
ずっと昔の古い記憶にしかない。
『やめて……許して、ご主人さま……』
『気安く時雨を呼ばないでよぉ!……奴隷のくせに』
『………っ』
ケタケタと笑う女の人の後ろで、一瞬だけ変わったご主人さまの顔。
少し辛そうな顔。
でもそれは長くは続かなくて。
『……本当…鬱陶しい奴…』
また、蹴られるんだ。
お腹が痛くて吐いて、また新しく痣ができる。
僕が蹴られている間は自分たちは無事でいられるからと、使用人達はできるかぎり僕をご主人さまの近くにおこうとした。
『学園に連れて行くのは、その奴隷でいいな』
『……はい、お父様』
当主さまの書斎で、交わされた会話。
僕?
僕が、ご主人さまと?
………学園へ。
『………行くぞ』
名前を………呼んでください。
十二年間一度も呼んでくれなかった、僕の名前を。
『…………彩』
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