アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
4にしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
4
-
御姫様抱っこのまま連れてきた指定の部屋。
内装を視線で確認しつつ示された部屋へ一直線に向かってきたが、明らかに一人用とは思えない。
事実、この部屋を開けてみたら、あるのはベッドのみだ。あまりに簡素な状況に、ひとつ首を傾げたのは極自然の行動だと思う。
その存在感溢れるベッドへ腕の中の小さく丸まるこいつをおろせば。
___蜜の細い髪がベッドのシーツに流れる。
ゆっくりとその上に被さると、甘い香りがした。天然で誘惑されるのなんて初めてかもしれない。
「……部屋に何にも置かないタイプ?それとも生活あんまりしてない家?」
単純に口にした質問は、目から鱗だったのだろうか。大きな目を四方に動かしてとんでもなく殺風景な部屋を見渡している。
……それはまるで、初めて気付きました。と言わんばかりの表情で。俺はこの様子に妙な違和感を覚えた。
そして、やがて返ってくる返事がその違和感を僅かな不快感へと色染めた。
「ここだけ……、他の部屋は家具とか普通にある。兼成さんが買ってくれたから」
「かねなり?お前、そいつに飼われてるのか」
腕の中で相変わらず四方を見渡す蜜の姿はまるで他人事のようで、そこに生きることへの執着心など感じ取れるはずもなかった。
___かねなり。蜜の口から出た名前にほんの小さな黒い点が腹の底についた気がした。
「もうひとつ質問いいか、どうして〝この部屋〝だけ物がないんだ」
「……兼成さんがこの家に来る理由は、わかるでしょう?ここに物を置く必要なんてないよ」
飼われている、イコール。その代償は身体。
言わなくてもその位は自分で察して欲しいと一瞬此方へ向けられた視線からは蜜の感情は読み取れなかった。
「……ふーん。そいつと毎晩ここでやってるわけ?」
「毎日は来ないんだ、兼成さんお仕事あるから」
健気に甲斐甲斐しく待っている、そう聞こえた言葉。
眉を下げて笑うその憂いた表情。
……ああ、興味が失せた。
腹の中に落ちた点がじわりじわりと大きくなっていくのを感じると同時に、笑えるくらいに冷めた興奮と性欲が萎えた心を浸食していた。
「……水ある?冷蔵庫勝手に開けるよ」
ベッドから降りその場をすっと離れて向かう先は、リビング。
馬鹿らしくなってきた。水でも飲んでさっさと帰ろう。今からならまだ今日の相手は見つかるはずだ。
「え?あるけど…紺っ?」
部屋を出る際に投げかけられた背後の声は、動揺からか震えて聞こえた。
……もう、どうでもいいよ。
俺は、ひとつのモノの傍になんていられない。
永遠を願ったって、相手は移り変わっていくから、俺の願いなんて到底叶うこともないから。
ましてや人のものなんて甚だ興味ない。
固執して傍にいられる絶対的な状況や気持ちがあるのなら、どうしてそれを大切にしないんだ。
だから……誰だっていい。叶わないものなど最初から欲しいと強請らなければいい。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
5 / 7