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小池視点③にしおりをはさみました!
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小池視点③
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「いらっしゃいませー。」
時計を確認すると0時過ぎ。
今日は珍らしくあの人は来ない。
いつも決まって来る常連さんが1日来ないと少し心配になるというか……。
複雑な気持ちになりながらいい頃合の唐揚げを油から取り出す。
1時を過ぎた頃に、すっかり耳に残ったコンビニの音楽が鳴ってお客さんが入ってきた。
このコンビニってけっこう中の方にあるから見つけにくくて、1時ぐらいになるとほとんど人なんて来ないから珍しい。
ぼけーっと考えていたらレジの方で声がした。
「11番3箱」
慌てて向かうと彼がレジの前に立っていた。
「は、はいっ!こちらでお間違えないですか?」
「ああ」
いつもは缶コーヒーとミルクティーなのに今日は缶コーヒーが1つだけなのに気づいた。不思議な感じがしてつい手を止めてしまう。
「おい、会計」
「っ!申し訳ありません。1960円です。」
慌ててお会計をしてお釣りを返すと、一瞬俺のことを彼が見て、それに少しだけ脈が早くなったように感じた。
いつもみたいに何も言わずに彼はコンビニを出ていく。
彼の残り香に酷くあてられそうになって俺はその場にしゃがみこんだ。
「目があった……」
初めて彼を見た時のことを思い出す。
新入りの俺はコンビニ経験者とはいえまだ全然商品の場所も把握してなくて、それを目敏く察知したクレーマーで有名なおじさんに絡まれていたことがあった。
そこに彼が来たんだ。
夜の0時過ぎ。
もう1人のパートさんは緊急で外に出ていて1人だった。
「おい、邪魔だ」
クレーマーのおじさんに、彼がたった一言声をかけたんだ。
見た瞬間αだとすぐに分かった。
何者にも従わない絶対的なカースト上位に位置する特別な存在。
その一言でクレーマーは震え上がってコンビニから飛び出していった。
ぽかんとして状況の飲み込めない俺。
「11番3箱」
そんな俺を気にも止めてない様子で彼は手に持っていたブラックの缶コーヒーとミルクティーのペットボトルを置いて一言そう言った。
慌てて会計をして、ありがとうございましたーと決まった言葉を言いながらお辞儀する。
顔を上げるとまだ彼はそこにいた。
バチッと目が合って彼は少し意地悪げに目を細めたんだ。
「新人君も大変だな」
思考が停止してしまって、なにも返事を返せなかった。そんな俺の顔を数秒見つめてから、彼はコンビニを出ていってしまった。
目が会った瞬間に何かが俺の中で弾けた気がしたんだ。
それから自然といつも決まって0時に来る彼を待ち遠しく感じるようになった。
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