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✽溜色と満月✽ 7にしおりをはさみました!
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✽溜色と満月✽ 7
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「武雄はどうだ?」
「俺は人付き合いが苦手なので、一人の方が気楽です」
「そうか」と返事をするも、そう言うであろうなと近衛は思うていた。というのも、別の屋敷で仕事をしている武雄を見かけた折り、叱られている所を良う見かけたからだ。聞けば一本の木に時間を掛け過ぎるらしい。なれど良う見れば別の庭師より丁寧で腕が素晴らしかった。それだけ真面目で、庭師の仕事に誇りを持っているのだろうと、その屋敷に度々足を運び、頼み込んで此方に移ってもらったからだ。
近衛がグラスにワインを注ぐのを皆食い入る様に見つめた。赤とも紅とも言えぬ色のポートワインは皆初めて見るものだ。
酒精強化ワインの部類に入るポートワイン。ポートワインの特長は、アルコール度数が20度前後と高いこと、それから独特の甘みとコクがあることだ。
「...真に旦那様は変わって居られますねぇ。私はもう何軒もの御屋敷で下女を勤めて参りましたが、旦那様からお酒を頂くのは初めてですよ。週に一度のお休みも頂いて居りますし。ここへ来て温々させて頂いてるお陰で、もう他所の御屋敷では務まりません。ですから、旦那様が責任持って最後まで面倒を見て下さいまし!」
「はははっ、相分かった!皆もトシを見倣うて、思う事があれば遠慮なく言うてくれ!では、乾杯!」
グラスを掲げて其々がワインを口にした。
那由多は一口含み、グラスの中のワインを見つめる。
甘いとも渋いとも酸っぱいともいえる独特の味。なれど香りは良い。清酒の様な喉から胸がカッと熱くなるような感じも受けない。
武雄は物珍しいといえど清酒の方が美味いなと思いながら飲み進め、トシは一口飲む毎にこれに合う料理は何であろうと考えているが、みきだけは物凄く渋い顔をしていた。
「みき、口に合わないか?」
「いえ、...お酒を飲んだのが初めてなので、美味しいのかどうかも分かりません...。すみません...」
その言葉にああそんな時が自分にもあったなと那由多はくすくす笑い、みきに忠告した。
「ふふふ、少しずつ、ゆるりと飲まれた方が良いですよ。でないと後でえらい思いをします故、」
「はは、覚えがあるのか?」
笑うて近衛は那由多の首を揉む。那由多と初めて飲んだのは二度目に逢うた時だったなと昔を懐かしむと同時に、あの時初めて那由多と口付けをしたなと唇を見つめ、キャンディーも買うてくれば良かったなと思う。
「...ええ、良う分からぬまま飲み、明くる日まで吐きました。...もう懲り懲りと思うたものですが、誰と飲むかで味が変わるものと今では知っておりまする」
近衛と飲む酒は何時だって美味だ。このワインとて、好む味かと聞かれればそうではないが、この楽しい雰囲気故なのだろう、自然と口にしていた。
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