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入学して一ヶ月。
授業は晴人にとって難しいものだった。
余り頭の出来が宜しくない彼にとって、苦痛としか言いようがない。実際サボりたくなって、遅刻も既に数回やってしまっている。
それでも欠席だけはしていないのだ。
毎日来れば彼に会える、顔を見ていられる…。まったくもって単純な考えだが、それが学校に行く意欲になるのだから恋の力は素晴らしいと言えるだろう。
「はるちゃん、一緒に帰ろーぜ!」
1日の終わりを告げるチャイムが鳴り響く。直ぐ様、帰り支度を済ませた和成が前の席にいる晴人を誘う。
「うん、いーよ。ちょっと待ってて、用意するから」
あせる様子もなく筆箱を鞄に詰め込み、ふと、滝澤を盗み見る。
彼もどうやら帰宅するようで、勉強道具一式を手に持ち鞄に入れているようだった。
どのような仕草でも、目についてしまう。
「お前さー、あいつの事見るの好きだよな」
「…え?そう、かな」
知らず知らずのうちに頻繁的に見惚れていたのかもしれない。和成は笑ってこそ要るが呆れているかもと不安が頭をよぎる。
悟られないよう、戸惑い隠せないままはぐらかすように惚けてみる晴人。
言い訳を言えば、彼を見るなと言われる方が無理なのかも知れない。黒い艶やかな髪に形の良い鼻、そして見るものを決して離さないであろうノンフレームから覗く、切れ長の鋭い眼差し。
どこか妖艶で清潔感溢れる彼は、見ていて飽きない。
「へー…興味有りますって顔してんのにな。俺たちの間には隠し事無しだろ?」
何時からそんな約束をしたんだ。
突っ込みたい衝動に駆られたが、言葉を飲み込んだ。
「そこまで言うなら…でもナイショだよ?」
「俺さ、結構口固いから任せろよ」
自分で言う辺り怪しさを感じるが、一ヶ月間一緒につるんでいる晴人からすれば、和成は信用に得るものがあった。
「危ない所を助けてもらったんだ、それでさ…ほら」
「ははーん。なるほどね、惚れちゃった訳だ?」
自分で言っておきながら、頬が紅く燃え上がるように火照る。
男が男に惚れたなど、和成からすれば良い話でも無いだろうが。それでも鋭く悟り見抜く。
「…気持ちわるいって思う?」
「いや、そんなことは思わない。親友だろ?それに、この学校じゃ珍しい話でも無いしなー」
恐る恐る聞く晴人に、悩んで居たことなど馬鹿らしくなるような気さくな態度で返答を返す和成。
持つべきものは友、心が暖かくなり微笑む。
「つか、あの滝澤が人助け?伝説だろ、もはや」
あの滝澤がまさかと、驚いた顔で帰り支度をしている滝澤を見る和成。しかし、いくら助けてもらった事のある自分とて、そこまで大袈裟に…とは言い切れなかった。
入学してから滝澤をストーカーの如く盗み見をしてきた晴人は、彼がどのような性格なのか少し分かったような気がしたのだ。
真面目そうな風貌からか、迷いも無く担任から即決でクラスの委員長に任命され、反対する素振りも見せず、当然のように引き受けていた。
しかし、かと言って委員長だからと人に世話を焼くわけでも無く、暇が有れば読書をしており、誰かと話している素振りすらない。
社交性がある訳でもない所を見ると、和成が言っていた一匹狼だと言う話は本当なのだろう。
「和成の言ってること、オレにも分かるよ…」
「おいおい、急に落ち込むなよ」
「…だってさぁ、同じクラスなのにまだ一度も話したこと無くて」
一言でも良い、彼と話をしてみたい。
始めこそ見ているだけで幸せだった。だが、一ヶ月も経てば欲が出ると言うもの。話し掛けようと何度も顧みたが、彼の纏っている雰囲気は近寄るなと言っているようで、近付く事すら出来ない。
せめてあの時は有り難うと言えたら。
贅沢を言うなら、自分を覚えて居てくれたら…。
耳が垂れた犬のように落ち込みを見せる晴人。
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