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人間は非効率で不合理な生き物だったけどにしおりをはさみました!
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人間は非効率で不合理な生き物だったけど
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「もう、ここには……」
ラヴィは明確には答えず、微かに首を横に振った。
こんなご時世だ。
それだけで相手は色々察し、「そう。残念だったね」と同情的にうなずいてくれる。
互いに空気を読み合う繊細なやり取りは、まるで人間そのものだ。
「ところで、あなたは何故こちらに?」
今度はラヴィが質問を投げかける。白髪のアンドロイドは「参っちゃうよ」と肩をすくめた。
「市街地は上級職のアンドロイドたちが牛耳ってるだろ? いい加減嫌気がさして、新しい住処を探してたんだよね。だけど移動の途中で砂嵐に巻き込まれて、ボディも内部もちょっと傷んじゃってさ。どこかでメンテ出来ないかなって彷徨ってたんだ」
「なるほど。それは難儀でしたね」
ラヴィが同意を示すと、白髪のアンドロイドが「でしょ?」と大きなため息をついた。新型の言動は、ラヴィよりもずっと人間臭い。
「で、運よくこの地下街を見つけたってわけ。どこかに修理キットがないか探してたんだけど全然見当たらなくてさぁ。キミ、持ってたりしない? ついでに修理出来たりする?」
「残念ながら、私はキットも技術も持ち合わせておりません。それに、この地下街はどうやら人間向きの商品ばかりを扱っていたようで、私たちが必要とするものは何も置いていないのです。他を当たられた方がよろしいかと」
「そっかぁ」
白髪のアンドロイドが首筋をさすりながら、残念そうに呟いた。これで諦めて、早く立ち去ってくれないかな。そんな風に祈りながら成り行きを見守っていたけれど、白髪の彼はラヴィと話すのが楽しいのか、なかなかその場を動こうとしない。
「……なんかさぁ、最近思うんだよね。なんだかんだ言って、人間がいた頃の方が快適だったし楽しかったなって。人間は非効率で不合理な生き物だったけど、その分、予想できない面白さがあった」
「ええ、私もそう思います」
ふふっと、何かを思い出したのか白髪のアンドロイドが小さく笑った。
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