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「みぃつけた」にしおりをはさみました!
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「みぃつけた」
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「俺の主(あるじ)だった人はね、俺の名前を決めるのに三日もかけたんだよ。名前なんてただの記号なのにね。大事なことだからって……。ホント、時間の無駄遣い」
「それだけ大切に想われていたのでしょう。それで結局、あなたの主はどんな名前を選ばれたのです?」
「『セフィド』。どこかの国の言葉で白って意味らしい。さんざん悩んだくせに安易だよね。笑っちゃう」
自分の白髪を摘まみながら、ははは。とセフィドは笑ったけど、終りの方は溜息に近かった。悲し気に息を吐きだして、視線を遠くに投げる。
「あぁ……主にまた会いたいなぁ。なんでもっと早く気付かなかったんだろ。こんなに寂しくなるって知ってたら、俺だって人間側の味方に付いたのに。ねぇ、キミならわかってくれるでしょ? 主を失ったこの気持ち」
「ええ。とてもよく解ります」
ラヴィが深く肯定すると、セフィドはにんまりと口角を上げた。
その笑みは何だか不吉な色合いを孕んでいて、反射的に僕は身構える。
「嘘つき。キミの主はまだ生きている」
言ったと同時にモワッと煙幕のように砂埃が舞い上がり、何が起きたんだと目を凝らす。何かがぶつかり合う鈍い音がして、向かいの店の外壁が派手に崩れ落ちた。
さっきまでそこにいたはずのラヴィの姿がどこにもなくて、「セフィドに殴り飛ばされたんだ」という事実に、僕はようやく気付く。
壁に激突したラヴィは崩落した瓦礫の山に埋もれ、空を掴むように指先だけが天に向って伸びていた。ピクリとも動かなくなったラヴィを見て、僕の身体は自然と震えだす。セフィドがこちらに向って一直線に歩いてくるのがわかっても、あまりの光景に僕は動くことが出来なかった。
「みぃつけた」
僕を隠すように吊り下がっていた服をかき分け、セフィドが顔を覗かせた。
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