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涙を流したその後は。にしおりをはさみました!
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涙を流したその後は。
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しばらくして、やっと涙は止まってくれた。
涙を流したからか、嫌な気持ちはどこかへ行っていた。
「マコト」
「何だよ」
「ありがと・・・」
「どーいたしまして」
やっと落ち着いて昼飯を再開する。
ちゃんと箸を拭くことは忘れない。
だって地面落ちたもん。
汚いもん。
もうあんまり時間がないだろうと目一杯口に詰め込んでいれば、案の定予鈴が鳴った。
急がないと、と必死に弁当を掻き込んでる俺とは対照的に先に弁当を食べ終えたマコトは何故かまったりモード。
更には、一つ伸びをしてコンクリの地面に寝転んでしまった。
「え、ちょっと、何してんだよ」
口に詰め込んだものをちゃんと飲み下してから、信じられないとばかりに口を開く。
予鈴鳴ったのに何この人。
「昼寝」
「・・・・・」
「たまにはいいって」
そう言ったマコトはほんとに戻る気がないようで、全く動こうとしなかった。
そんなマコトを見て溜め息をひとつ。
本鈴の鳴り響く音が聞こえる。
今から戻っても授業は始まってしまったし、5限目は諦めることにしよう。
弁当をもとの包みに戻して、校舎の壁に背中を預ける。
梅雨時期だというのにそんなの微塵も感じさせないくらい空は綺麗に晴れていた。
しばらく空を眺めてからマコトに視線を移す。
長い睫毛は伏せられていて、やっぱり黙ってると美人だよな、なんて思ったりしてみた。
「マコト」
「何だよ」
返ってきた返事にちょっと驚いた。
まだ起きてたんだ。
「あのさ、さっきイチヤさんのこと好きなのかって聞いたじゃん?」
「うん」
「俺さ、たぶんあの人のこと、好きなんだと思う」
「・・・・」
「会ってまだ一週間も経ってないのにね」
知らぬ間に口元が綻んでた。
自分でもちょっと不思議なんだ。
会って間も無いイチヤさんのことを俺は特別に思ってる。
今まで知らなかった感情が次から次へと溢れてきて、どんどん俺の中はイチヤさんでいっぱいになっていく。
イチヤさんのことを考えるだけで、すごくすごく幸せな気持ちになるんだ。
「なぁ、」
「なに?」
「そのイチヤって、どんなヤツ?」
それ蓮にも聞かれたなって思ってたら、マコトは体を起こして俺と同じように壁に背中をつけて座った。
視線は俺に向けられて答えを促される。
「見た目は不良っぽいかな」
「何だそれ」
大まかすぎるってマコトが笑った。
でもそうなんだもん。
月明かりに揺れる金色を思い出す。
「綺麗な金髪で、イケメンで、身長高くて、すごく優しいよ」
そう言って笑ったら、何でかマコトは変な顔をした。
いや、顔はキレイなんだけど表情がね。
「・・・稜太」
「なに?」
「悪い。俺ソイツ心当たりあるわ」
・・・・ん?
「えええええええ!?」
「稜太うっさい」
「え、ちょ、どういうこと!?」
驚いた。
ほんとにほんとに驚いた。
なに?
知り合いってこと?!
想定外すぎるマコトの発言に、一瞬のうちに俺の脳内は興奮状態。
無意識に鼻先が触れそうなほどマコトに詰め寄っていた。
「落ち着けッ!!」
「痛ッ」
デコに本日二度目の衝撃。
今度はデコピンではなく手刀だった。
デコを抑えて思わず蹲る。
俺の脳細胞が・・・!!!
手加減というものを知らないマコトに涙目で睨んで抗議をするけれども、お前が悪いんだろうがって呆れ顔。
ズキズキと痛むデコをさすっていると、マコトは制服のポケットからケータイを取り出した。
どうしたのかと少しばかり距離をとって見ていれば、マコトは誰かに電話をかけ始める。
その様子を見ながら心臓の脈動が速まるのを感じた。
「あ、もしもしトーゴ?」
思いのほか早く繋がる電話に思わず肩が揺れた。
聞きなれない名前に相手は俺の知らない人だとわかる。
その人にイチヤさんのこと聞いてくれるのかな、なんて思っていた。
「今どこにいんの?」
『ーーー』
「わかった。今からそっち行くわ」
聞き耳を立てたけど、相手の声は拾えなかった。
短い会話を終えたマコトが立ち上がる。
そしていつぞやのように俺の腕を掴んで立ち上がらせた。
見た目に反してマコトは力が強い。
ほんとにギャップあり過ぎ。
「ちょ、マコト、なに、」
思い掛けないマコトの行動に思考がついていけない。
困惑する俺をよそにまたマコトは俺の腕を引いて歩き出す。
「ほら、さっさと行くぞ」
「え、どこに」
「イチヤってヤツのとこ」
「は、はあ!?」
意味がわからない。
いや意味はわかるけど一体どういうことだ。
もう頭の中はパンク寸前だった。
でもそんな俺にお構いなしのマコトは、半ば俺を引きずるようにしてズンズン進んで行く。
「たぶん、お前の言ってるイチヤだと思う」
「・・・・・」
「まぁ、違ったら悪りいな」
からりと笑うマコトに何も言う気が起きない。
というか、何も言えない。
だってそれどころじゃないから。
考え過ぎて逆に頭の中は真っ白だ。
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