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不良のテリトリー。にしおりをはさみました!
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不良のテリトリー。
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何となく上機嫌に見えるマコトの後ろを大人しくついていく。
マコトの背中を見つめたまま、そこから片時も目が離せない。
何故なら、
周りが見れないからです。
今俺たちが歩いているのは、あの機械科のある恐ろしい北校舎なのだ。
いまだかつて踏み入れたことのない異境の地に魂は抜け出る寸前だ。
色んなところから視線を感じるこの異様な状況。
目の端にガン飛ばしてくる不良に分類されるであろう方たちが見えて、もう本当に泣きそうだった。
ほんとにこいつ何なの、バカなの。
飛んでくる視線も全く気にする様子のないマコトが違う生き物に見えてきた。
こんなにも恐怖を感じながらもマコトについて来たのは、イチヤさんに会いたいって思う気持ちのほうが強かったからだ。
マコトがどこに行くのかも、本当にその行く先にイチヤさんがいるのかもわからないけど。
それでも会いたいって思った。
グイグイと俺を引っ張っていくマコトの足が、階段を登りきった先でピタリと止まった。
背中から前をのぞけば、少し錆び付いた扉がある。
ここがどこなのか理解した途端に背中に冷たいものが走る。
「ここって、」
「屋上」
ですよね。
なんでもないように肯定するマコトに泣きたくなった。
だってこの屋上は、不良のテリトリーだからだ。
こんな一般生徒が入って行こうものならきっと速攻でフルボッコにされるに違いない。
しかも、この学校のボス軍団しか立ち入れない場所であって、それは暗黙の了解となっているのだ。
それなのに、何でマコトは扉を開けようとしてるんだ。
生命の危機を感じた俺は、ドアノブを回そうとするマコトの手を無意識に掴んでいた。
「何だよ稜太」
「だだだだだだって、こっここ屋上だよッ」
「だから?」
だから何だと言いたげな表情。
いやいや。扉を開けたが最後、俺たちたぶん無傷じゃ帰れないよ。
むしろ帰れるかさえもわからないよ!
怖いからもう帰ろうよ!!
必死に目で訴えてみるも、マコトには全く伝わっていないようで、あろうことか邪魔だと言わんばかりに俺の手を払いのける。
無情にも、死への扉は開かれた。
陽の光に目が眩んで反射的に目を細める。
少しずつその明るさに慣れてきた目に飛び込んできたのは、キレイに晴れ渡った空。
それから、
マコトの背中越しに見えるヤンキーの軍団、、、
死の淵に足を突っ込んでしまった。
魂がこんにちは!って顔を出した気がする。
だがしかし。
マコトはやっぱり俺とは違う生き物だったようだ。
魂が辛うじて引っかかっている状態の俺の腕を引いて、飛んでくる視線なんて何のそのとズンズン奥へと向かっていく。
もうほんとに生きてる心地がしない。
もういっそのこと気を失ってしまいたい。
でもしかし。
あることに気付く。
何で誰も止めないんだ。
おかしくない?
自分たちのテリトリーに入られたのにただ見てるだけなんて。
さっきとは違う意味で、マコトの背中から目が離せない。
でも、俺の思考は止まる。
引きずられてきた屋上の一番奥。
そこだけ何か違くて。
その場所にいるのは4人だけ。
「トーゴ」
マコトが声をかけるとその中の一人が振り向いたのがわかる。
茶色の髪がふわりと動いたのが目に入った。
「サボりとか珍しいな」
そう言ってその男が立ち上がって近付いてくると、その男の顔が目に映る。
見たことのあるその王子顔に俺は思わず目を見開いた。
見間違えるはずがない。こんな甘いマスクのイケメンそうそうどこにでもいるわけがない。
「え、フジさん・・・?」
「え、お前・・・」
「何、お前ら知り合い?」
マコトは心底不思議そうに俺とフジさんを交互に見てる。
でも、混乱し始める頭じゃマコトに答える余裕がない。
「あ、リョウタじゃん」
突然名前を呼ばれてビクリと肩が揺れる。
声がした方を見れば、ようって片手を挙げているインパクト大な金髪坊主なまこっちゃんのお兄さんがいた。
何でこんなに知った顔があるんだと、唖然とする俺の耳に
不意に低くて、でも優しい声が届く。
「稜太?」
「イチヤ、さん」
視線の奥。
驚いた表情のイチヤさんがいた。
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