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沈黙と涙と手のひら。にしおりをはさみました!
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沈黙と涙と手のひら。
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さっきからイチヤさんと二人で、なんでこんなところにあるんだって思うようなわりと上質なソファに腰を沈めていた。
本当にいるなんて思ってなかったイチヤさんがいて、ましてや同じ学校だったなんて、この嬉しさと言ったら小躍りしてしまいそうなくらいだった。
が、しかし。
「・・・・・」
「・・・・・」
かれこれもう10分は経っているだろう。
無言。
ひたすら続く無言状態にもはや泣きそうだ。
これまでにない気まずさを感じて、俺の心臓は押し潰されてしまいそうだった。
少し離れた場所では、何故かマコトと他三人がトランプをやっていて盛り上がっている。
無論、他三人とはフジさんとまこっちゃん兄と、もう一人の髪を真ん中から半分をピンク色に染めてピアスがこれでもかって付いてる奇抜な方。
なんでマコトはあんなに馴染んでるんだろ。
実に異様な光景に心の中で溜め息をつきつつ、チラリと横に座る人物を盗み見る。
相変わらずその人は眉間に皺を寄せたまま、何だか難しい顔をしている。
勢いで来てしまったことを、少し後悔した。
迷惑だったのかもしれない。
「はあ、」
初めて聞くイチヤさんの溜め息に視界がぼんやりと滲んだ。
「あの、」
蚊の鳴くような声だった。
顔を上げることが出来ない。
「・・・怒ってますか?」
言って唇を噛み締める。
涙が溢れてしまわないように堪えるのに必死だった。
「・・・・・」
「・・・・・」
イチヤさんは何にも言ってくれない。
やっぱり迷惑だったんだ。
逃げ出してしまいたい。
そう思ったら、不意に頭に大きな手の感触。
おずおずと視線を上げれば、困ったようにイチヤさんは笑っていた。
「怒ってねぇよ」
「・・・・・」
優しく髪を乱されて、その感触に言いようのない安堵感を覚えた。
その手が離れて頬に移動する。
頬に触れられるなんて初めてで、心臓が破裂しそうなほどバクバクしてて。
手のひらは頬に触れたまま、目元を親指で優しく撫でられた。
「泣くなよ」
「え、」
そうイチヤさんに言われて、泣いてることに初めて気づいた。
さっきのは涙を拭ってくれたんだ。
やっぱりイチヤさんは優しい。
そう思ったらまた一筋雫が零れた。
「・・・・・・」
これって一体どういう状況なんでしょうか。
心臓が痛い。
尚且つ、頭がゆだってしまいそうだ。
「あ、あの、イチヤさん・・・」
「ん?」
何がおもしろいのか、さっきからイチヤさんは俺の頬をふにふにしたり、すりすりと手のひらで撫でたりしている。
涙はひいたけど、こんな状況じゃ全くもって落ち着けない。
もうそろそろ限界だと思っていたら、その手が離れていった。
少し名残り惜しいと思ってしまったのは内緒。
「耳まで赤いな」
ふっと笑ったイチヤさんの目が何だか艶っぽく見えて、思わず顔を両手で覆う。
だだだだだ誰のせいだと・・・・っ!!!
手は離れたけど脈打つ心臓は速くて、もうどうにかなってしまいそうだ。
「拗ねんなよ」
・・・拗ねてません。
顔を隠してた手をイチヤさんに優しく掴まれて、そのまま俺の両手は降ろされてしまった。
晒された熱い頬をイチヤさんの手が一瞬だけ撫でてそのまま離れていく。
一体この人は俺をどうしたいというのだろう。
ほんとうにゆでダコになりかねない。
恥ずかしくてイチヤさんの方を見れないでいると、授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。
話したいことはいっぱいあったのに、何も話せなかった。
どうしようかと思っていたら、イチヤさんの手が俺の頭に乗った。
「稜太、放課後時間あるか?」
「え、はい」
「じゃあ放課後迎えに行く」
ちゃんと待ってろよって言ってイチヤさんは俺の髪を撫でた。
返事はもちろんイエスだ。
イチヤさんとそう約束した後、次もサボると駄々をこねるマコトを宥めて屋上を後にした。
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