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18歳以上ですか?
近いです。にしおりをはさみました!
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近いです。
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大人っぽくて、落ち着いていて、優しくて。
タバコを吸う姿も様になっていて。
バイクだってカッコよく乗っている。
そんな人が一つしか年が違わないなんて思うわけないじゃん。
壱也さんの腕から脱出した俺は膝を抱えつつソファの端っこを陣取っている。
壱也さんはクツクツと笑っていて、さらには目にうっすらと涙まで浮かべてて。
変なこと言ったつもりなんかなかったのに、俺の『壱也さんは大学生』発言がおもしろかったらしい。
壱也さんがそうやって笑うから段々恥ずかしくなってきて、今に至ります。
ほんとそろそろ拗ねてしまいそうだ。
自分のことをちゃんと教えてくれなかった壱也さんが悪いんじゃん。なんて、責任転嫁もいいところ。
むーっとむくれていたら、やっと落ち着いた壱也さんが笑うのをやめてくれた。
でも口元に笑みを浮かべたままなのが、視界の端に映った。
「稜太」
壱也さんが距離を詰めてくるのがわかって思わず反対側に視線を泳がせてしまう。
ぐっとソファが沈む感覚にドキリと心臓が跳ねた。
そろりと横を向けば、思ってたよりも近いところに壱也さんの顔があって、動きが固まった。
壱也さんの手が頬に添えられたかと思ったら、ふっと空気が揺れて壱也さんが笑ったのがわかる。
「いじけてんなよ」
「い、いじけてません、」
鼻先が触れてしまいそうな、近すぎる距離に心臓が飛び出しそうだ。
壱也さんの目が優しく細められて、慈しむみたいな視線に眩暈さえ覚える。
「稜太」
「は、はい、」
「他に何か聞きたいことあるか」
「え、えっと・・・」
急にそんなこと言われてもこんな状況じゃ頭がうまく働かない。
ドキドキと暴れ回る心臓を宥めるのにいっぱいいっぱいで、聞きたいことはたくさんあったはずなのに全然出てこない。
揺れる金髪の奥にある瞳が、愉しげに俺を見つめていた。
「・・・っ」
いよいよ頭が茹で上がりそうになって、もうだめだと言わんばかりに目を閉じればまたふっと空気が揺れる。
頬から壱也さんの手が離れると頭に乗せられて、頭に馴染んだ感触にそっと目を開けば、その端正な顔は離れていた。
ちょっと残念に思ってしまわなくもないけど、離れたその距離に無意識にホッと息を吐いた。
「あ、あの、」
「悪い。いじめすぎた」
そう言った壱也さんは優しく笑みを浮かべて俺の髪を撫でる。
髪を梳くようなその手と俺を見る壱也さんの目が優しくて、知らぬ間にうっとりとした目で見つめている自分がいて、
「いちやさん、」
自分の発した声にハッと我に返った。
途端に襲ってくる羞恥心に自分がどんな顔をしていたのか、何とも言いようがない恥ずかしさに穴があったら一生そこで暮らしたい気持ちになった。
カーッと一気に熱が集まった顔を両手で隠せば、頭のてっぺんに何かがやんわりと押し付けられた。
それはすぐに離れていって、何かはわからなかったけど、指の隙間からおずおずとのぞき見た壱也さんの表情があんまりにも柔らかくて、全身が真っ赤になった気がした。
「お前ほんとにかわいいな」
「〜〜ッ」
もう声にもならなかった。
なんなんだろうこの羞恥プレイはッ!!
ぴっちりと隙間もない程、指を閉じたのは言うまでもない。
自分がどうにかなってしまいそうで、壱也さんの顔なんて到底見れるわけがなかった。
もう本当にどうしたらいいんだろうと必死に心臓を宥めていると、不意にズボンのポケットのケータイが震え出す。
いまだに熱い顔を晒したくなくて、出ようかどうしようか悩んでいると壱也さんの手が離れた。
「出ないのか?」
「・・・出ます」
言われてしまったら、出るしかないだろう。
渋々顔を隠していた手を下ろしてケータイをポケットから出せば、振動が止まった。
見れば母からで。
どうしたのかと思ってたら手の中のケータイが震えた。
開くと想像通り母からのメールで、夕飯はどうするのかという内容だった。
そう言えば連絡してなかった。
時間を見れば夕飯の時間はとうに過ぎている。
「どうした?」
「あ、えっと、母から夕飯どうするのかって連絡が」
言えば壱也さんも時間を確認して、けっこう時間経ってたんだなってちょっと驚いてる。
「どうする?飯食ってってもいいし」
「え、いやいや、それは申し訳ないです」
「じゃあ、送って行く」
「え、ま、まだ電車もあるから帰れますよ」
やっぱり優しい壱也さんに申し訳ない。
ほんとに迷惑かけてばっかりだ。
「いいって。な?」
「ぅ、・・・よろしくお願いします」
やんわりと目を細める壱也さん。
申し訳ないと思いつつも、優しく笑う壱也さんにはやっぱり負けてしまった。
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