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幼馴染。にしおりをはさみました!
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幼馴染。
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「稜太!遅くなるならちゃんと連絡しなさい!」
帰るなり飛んでくる母さんの怒声に、ああやっぱりとがっくりと肩を落とした。
角を生やした母の姿に、さっきまでの時間がまるで夢のようだ。
「・・・すいません、以後気をつけます」
「ならよし!」
玄関先で小言を食らい素直に謝れば、母さんはコロっと表情を変えてリビングに入ってった。
ネチネチしてない母の性格は非常にありがたい。
準備してくれてるんだろう食器の音を聞きつつ、着替えに自室へと戻るとポケットの中のケータイが震えた。
見るとさっき別れたばかりの壱也さんからのメールだった。
ちなみに今日もバイクで送ってもらった。
何だろうとメールを開いてみると、遅くまで付き合わせて悪かったっていうメールで、やっぱり律儀な人だなって口元が緩んだ。
それにすぐさま返信して、俺を呼ぶ母の声にさっさと着替えて階段を駆け下りた。
「そう言えば夕方、蓮ちゃんと会ったわよ」
遅めの夕飯を頬張る俺に母さんが思い出したように話しかけてくる。
その人物の名前に、ドキリ、と心臓が跳ねた。
「そ、そうなんだ」
「今日バイトないって言ってたからてっきり一緒だと思ってたけど、珍しいわね」
「ま、まぁたまにはね」
母さんがテレビを見ながら何でもないように言ってくるけど、俺にはちょっと気の重い話だ。
今朝のこともあるし、何より壱也さんへの気持ちを確信してしまった。
どう説明しようか。
そう思いながら、思い浮かぶのは心配そうな顔をした蓮だった。
ちゃんとわかってくれるといいな。
「おはよ」
「お、おはよ」
いつも通りの朝。
どちらかに用事がない限り一緒に登校している蓮と俺。
玄関を開けると蓮はもう家の前で待っていた。
「ほら、稜太早く乗れよ」
「う、うん」
お邪魔しますと蓮の後ろに乗るとすぐさま動き出す自転車。
最近の日課になっている2ケツも今日はなんだか、気まずい。
早く新しい自転車を買わなければ。
頬にあたる風は気持ちいいけれど。
話そうかどうしようか、人知れず葛藤する俺。
でも、たぶん今を逃すと話す機会がない気がする。
意を決して口を開いた。
「蓮!あのさ、」
「なにー」
「昨日のことなんだけど、」
「あー、なに」
何のことかわかったようで、蓮の声が若干不機嫌になる。
でもめげない。
「俺、やっぱり関わらないとか無理」
「・・・・」
「蓮が心配してくれてるのわかってるけど、でも、俺はあの人の近くにいたいんだ」
正直、蓮がこっち見てる状態だったら言えなかった。
ちょっとずるい気もしないでもないけど、ちゃんと言いたいことは言った。
「はあ」
暫く黙ったままだった蓮が盛大に溜め息をついた。
自転車乗ってるのに聞こえるくらい。
こんなあからさまな溜め息とか初めてだ!
ショックを受けてみるも、次に続く蓮の言葉にちょっと驚いた。
「わかったよ」
「えっ?」
「っていうか、わかってた」
ちょっと意外な言葉に思わず蓮の背中をじっと見つめた。
「だいたいお前言い出したら聞かねえもん」
「・・・・」
「変なとこで頑固だもんな」
はあ、とまた盛大な溜め息をついた蓮。
否定できないので黙って聞くしかないのだけども。
「でも、やっぱり危ないって思ったら、俺、何してでもお前のこと止めるから」
チラッと後ろを見た蓮は、いつもみたいにヘラっとした笑みを浮かべてて。
「あ、ありがとう!」
「はいはい」
なんだかんだやっぱり優しい蓮に、蓮が幼馴染で良かったって心から思った。
ひとまず一番の心配事が解決したことに俺はほっと胸を撫で下ろした。
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