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18歳以上ですか?
彼女?にしおりをはさみました!
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彼女?
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昨日同様注がれる視線に、いっそ覆面マスクでもしようかと思うほどのこの状況。
何でこんなに見られるんだろうとか愚問ですよね、わかってます。
無論、視線を集めてるのは壱也さんとフジさんとマコト。
美形が揃うと怖いと思ったのは言うまでもありません。
だって俺だけ浮いてますもん。
どうしたらいいのこれ。
今日も4人揃って来るもんだと思ってたけど教室に来たのは、意外にも壱也さんとフジさんだけだった。
銀司さんはバイトで雅宗さんは昼過ぎに帰ったそうです。
それでどうしようかってなって、マコトがカラオケに行きたいっていうから今向かってるところなんだけど。
大通りに出た途端、至るところから視線が注がれる今の状況になったわけだ。
で、美形に注がれる視線の中にはやっぱり昨日みたいに哀れむような視線も混じって俺に飛んでくるわけで。
段々悲しくなってきて歩くスピードをちょっと緩めることにした俺です。
ちょっと離れて見るけど、やっぱり目立つなってしみじみ思う。
視線は主に女性からで、中には振り向いて見る人までいるとかどんだけなんだろう。
何かもう、別世界の人たちみたいで、無意識に溜め息が出た。
「ッわ」
「大丈夫か?」
ぼすん、と何かにぶつかってしまった。
と、思ったら壱也さんだった。
俯きがちに歩いてたせいで壱也さんが俺を待ってたことに全くもって気づかなかった。
わわわっ!てなってると、ふっと影が落ちてきてデコがあったかいもので包まれる。
「熱はねぇよな」
一瞬何かわからなかったけど、それが離れていって壱也さんの手だってわかったらカーッと体温が一気に上昇した。
「顔赤いな」
「だッ、だいじょぶです、、、」
手のひらで熱を計られるという不意打ちに妙な恥ずかしさを覚えて、触れられたデコを押さえる。
恥ずかしいけど、でもやっぱ嬉しい。
知らぬ間に口元が緩んでしまっている俺はある意味熱に浮かされてるんじゃないかと思った。
「あー!壱也だぁ!」
先を歩く二人を追いかけていると不意に聞こえた高い声に振り返る。
ちょっと離れたところにドキっとするほどかわいい女の子がいた。
大きな目に、モデルさんみたいに整った顔立ち、くるくると巻いた髪が女の子らしく、さらには華奢な身体つきで。
男ならば絶対に振り返ってでも見てしまうような女の子だ。
でも、その視線は壱也さんに向けられていて、何だか嫌な感じがした。
それはすぐに現実になる。
「ほんと久しぶりぃ。元気してたぁ?」
その子は俺のことは見えてないみたいで、壱也さんにかけ寄ってするりと壱也さんの腕に手を絡めた。
思ってもなかったその子の行動に身体が固まる。
声も出ないし、その光景に目が離せない。
何これ。
すごく胸がザワザワする。
心が真っ黒い何かに侵食されていくみたいだ。
「全然連絡くれないからエリさみしかったんだよぉ。遊ぼうよ~」
わざとらしく身体を擦り寄せて、上目遣いで壱也さんを見上げるその仕草にどうしようもないくらい嫌な気持ちが膨らんだ。
やめて。壱也さんに触らないで。
そんな言葉が出かかってくるけど、飲み込んだ。
だって俺、そんなこと言える立場じゃない。
それに、もしかしたら、この子は壱也さんの彼女かもしれない。
だってこんなにも自然で、二人はすごくすごくお似合いのカップルなんだもん。
そう思ったら、目を背けることしかできなかった。
「エリ、」
壱也さんがその子の名前を呼んだ。
なんか一気に絶望感が襲ってくる。
視界が涙で滲む。
だめだ。ここで泣いたらおかしい。
「なに~」
「悪りいけど、お前と遊ぶ気ねえから」
意外な言葉に思わず壱也さんを見た。
エリと呼ばれたその女の子も同じように目を丸くして壱也さんを見上げていた。
困惑する女の子に気にせず、壱也さんは迷惑そうに細い腕をほどいている。
「は?ぇ、どういう意味?」
「そのまんまだよ。お前とはもう遊ばねえ」
「ちょ、意味わかんない…」
大きく溜め息をついた壱也さんはその子から離れると、動けなくなってる俺へと視線を移した。
「行くぞ稜太」
「えっ・・・」
「ちょっと!壱也っ!」
引き止めるその子を無視して、俺の腕を掴んで壱也さんは歩き出した。
どうしていいのかわからないけど、壱也さんに引かれるままに足を進めるしかなくて。
壱也さんの背中を見つめながら安心してる自分がいる。
あの子じゃなくて、俺の腕を引いてくれたことを嬉しいと思った。
でも、そんなこと思ってる自分が汚い人間みたいで、すごく嫌だった。
それに、腕を引かれたあの瞬間。
あの子の目に薄っすらだけど涙が見えた気がして、腕を引かれながらもそれが頭から離れなかった。
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